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公開日: 2026/05/26

スポーツを囲む熱狂をもっと。スポーツを“する”のに“みない”人の正体

加藤伶衣

加藤伶衣

株式会社電通

電通デザイアデザイン(DDD)は消費と欲望の関係から、さまざまなソリューション開発や情報発信を行う組織です。

本記事では、DDDが2025年11月に実施した第11回「心が動く消費調査」の分析結果(調査概要はこちら)から得られたインサイトやファインディングスをお伝えしていきます。

今回は、「スポーツ」への関わり方と“欲望”との関係性について、DDDの加藤伶衣が考察します。

今、スポーツを囲む熱狂が薄れつつあるのではないか

スポーツはいつの時代も人々の熱狂を生みやすく、大きな話題を集めやすいコンテンツです。私も、ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックやFIFAワールドカップを観戦し、家族や友人と盛り上がっていたうちの一人です。

一方で、スポーツのテレビ中継を家族や友人で囲んで観たり、現地に足を運んでみんなで盛り上がる……。そんなシーンは、昔に比べると少し減ってきているのではないでしょうか。

実際、私の周りにはスポーツをしているのにスポーツを観ない人も一定数います。

私は、学生時代から10年以上のバスケットボール競技経験があり、今でも社会人チームでプレーしています。しかし、そのバスケ仲間の中には、他競技はおろかプロバスケリーグの試合ですら観ていない人もいたりします。

実際、笹川スポーツ財団の調査によると、「テレビによるスポーツ観戦率」は、2004年時点では全体で92.8%(男性97.0%、女性88.7%)だったところ、2024年には79.0%(男性82.5%、女性75.6%)となっています。また、「スタジアムなどに足を運ぶスポーツ観戦率」は2004年に37.1%だったところ、2024年は26.2%。途中、コロナ禍の影響で大きく落ち込んだものの、回復しきっていないのが現状です。

参照元:【スポーツ観戦率】スタジアムや体育館などでの直接スポーツ観戦率は26.2%  1位はプロ野球12.1%。Jリーグ、高校野球、Bリーグと続く - 調査・研究 - 笹川スポーツ財団

 

テレビを囲んだり、現地に足を運んでみんなで盛り上がる……そんな人が減ったことの背景には何があるのでしょうか。一つ考えられるのは“デジタルコンテンツ”の浸透です。

個別最適化された視聴スタイルが浸透し、私たちは今、いつでもどこでも手元の端末でコンテンツを楽しめるようになりました。各種メディアやSNSを通じて短尺動画が共有・拡散されていく光景も、今や日常の一部となっています。そのうちの一つとして、スポーツの楽しみ方にもタイパ・コスパが意識されるようになってきているのかもしれません。

そして、その反面、誰かと一緒に観るからこそ生まれる“熱狂”は、薄れつつあるのではないでしょうか。

そこから浮かび上がってきたのが、この“デジタルコンテンツ化”の時代に、スポーツをみていない人たちの背中を押す“手がかり”はどこにあるかという問いです。今回は、この問いに対して、人間誰しもが持つ欲望や価値観といった角度から分析していきます。

まず、「スポーツ習慣があるのに、スポーツを観ていない人がいる」という気づきを出発点として、調査結果を捉えていきたいと思います。今回はスポーツ習慣のある層に重点を置き、以下の調査項目をベースとして分析しました。

【質問項目】
● 週に一回以上、運動やスポーツなど体を動かす習慣がある
● 週に一回以上、スポーツを観戦する習慣がある(テレビやネット配信なども含む)

この2項目の回答を掛け合わせることで、回答者を大きく4層に分け、スポーツとの接点をそれぞれ捉えます。

以下、「週に一回以上、運動やスポーツなど体を動かす習慣がある人」を「スポーツ習慣者(する人)」、「週に一回以上、スポーツを観戦する習慣がある人」を「スポーツ観戦習慣者(みる人)」と見なして考察を進めます。

スポーツを“する”人の中にも、意外とスポーツを“みない”人がいる

 

まず、先ほどの2つの質問に対する回答を見ていくと、スポーツ習慣者は全体の41.8%、非スポーツ習慣者は58.2%という結果でした。

さらにスポーツ習慣者かつ観戦習慣者(図中:①する・みる)は全体のうち19.3%、スポーツ習慣者かつ非観戦習慣者(図中:②する・みない)は22.5%となりました。つまり、日常的にスポーツをする人の中でさえ、スポーツコンテンツを観る人と観ない人とがほぼ同程度存在していることが分かります。

次に、性別ごとの分布を見てみます。下図で示される男女のパーセンテージは、図1の4層それぞれの割合を示しています。

 

「①する・みる」内の割合は男性が突出しており、「③しない・みる」でも同じ傾向が見られることから、男性のスポーツ観戦者は、女性と比較して多いという傾向が分かります。一方で、女性は「④しない・みない」層の中の割合が多いことが分かりました。

次に、年代別に分けたとき、この4層がどのような構成となるかを見ていきます。

※構成比(%)は小数点以下第2位で四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%にならない場合や、テキストの記載と差が発生することがあります(以降同様です)。

 

年代による特徴では、10代が唯一、スポーツ習慣者が非習慣者よりも3倍程度多くなっています。体育の授業や部活動などを通じて、他の世代よりもスポーツとの接点を持ちやすいことがその背景にありそうです。

スポーツを観る人と観ない人は何が違うのか

次に、4層のうち、「スポーツ観戦習慣」の有無によって、抱えている欲望に特徴や差異があるのかを確認しました。今回はスポーツ習慣者(する層)に着目し、「みる」と「みない」それぞれの回答者を比較してみます。

ここでは、調査項目の中からDDDが提唱する「11の欲望」に関わる欲望因子の有無について尋ねた結果を基に、レーダーチャートを作成しました(図4)。

■「11の欲望」について詳しくは、こちらをご覧ください。
「新しい欲望に、名前をつけてやる。」(ウェブ電通報)
DENTSU DESIRE DESIGN、人間の消費行動に影響を与える「11の欲望」2024年版を発表

 

図4を見ると、「スポーツ習慣者×観戦習慣者(する・みる)」のスコアの方がおしなべて高いことが分かります。
 
中でも、「人と出会いたい・仲間と共感したい」「興奮したい・刺激を受けたい」の項目において、両者の差が大きくなっています。

図4で示した11の欲望因子を元にDDDが整理した「11の欲望」が下図のものです。

 

先ほどの欲望因子を各欲望にあてはめると、次の通りになります。

「人と出会いたい・仲間と共感したい」⇒「04 繋がり&共感」
「興奮したい・刺激を受けたい」⇒「06 興奮&享楽」

つまりスポーツ習慣者×観戦習慣者(①する・みる)の平均値をとると、この2つの欲望が強く、スポーツを皆で囲んで観て熱狂する……といったアクションへの受容性が高いことが伺えます。一方、スポーツ習慣者×非観戦習慣者(②する・みない)はそこまで強くないということが分かりました。

とはいえ、これはあくまでスコア差の話です。スポーツ習慣者×非観戦習慣者(②する・みない)の中にも、この2つの欲望を持つ人は、確実に存在するのです。

「デジタル反動×欲望」でスポーツを“みない”人の背中を押す

ではスポーツ非観戦者をスポーツ観戦者へと動かす”手がかり”はどこにあるのでしょうか?

その答えをひも解くべく、スポーツ以外の価値観に関する質問への回答に着目しました。
以下は、それぞれの質問に対して「そう思う」と「ややそう思う」と回答した人の合計の割合です。

 

全体の傾向として、「スポーツ習慣者×観戦習慣者(①する・みる)」においてスコアが高い傾向にある項目の内、「スポーツ習慣者×非観戦習慣者(②する・みない)」でもスコアが高く出た項目があります。

特に両者のスコアが高く出ているのが、「デジタル機器から離れた時間(デジタルデトックス)を持ちたい」、「自分自身と向き合うためにSNSから離れる時間をもちたい」、「アナログや手作りのものに、デジタルにはない魅力を感じる」でした。ここから、スポーツ観戦者層も非観戦者層も、デジタルから離れたいという価値観を有していることが分かります。

一つ前のトピックスでは、スポーツを観る人と観ない人の違いを各層が持つ欲望の種類という観点から読み解きました。一方で、ここで浮き彫りになったのは「デジタルデトックス」という両者の共通点です。

スポーツを観ない人全員を観る人へと変えることは当然難しいでしょう。
しかし、スポーツを観ない人の中でも「デジタルデトックス」を求めている人は、スポーツを観るというアクションへと動く可能性を秘めているかもしれません。

思えば、スポーツとデジタルデトックスは似たような価値を持っています。

例えば、学生時代に野球の選手名鑑を友人と持ち寄って盛り上がったり、スタジアムやアリーナを訪れて生で試合を観戦したり、実際に公園や校庭で試合をしてみたり……。このようなスポーツの楽しみ方をしていたとき、その最中のデジタルツールの存在は小さいものだったはずです。そしてこうしたアクションは、デジタルの存在が生活の中に多く見られなかった昭和の頃は、今よりもっと日常的な行為としてありました。

このような身体感覚を伴うスポーツの楽しみ方をもう一度広げていくことで、現在はスポーツを観ていない層の中でも、観戦への興味が湧き、動き出す人がいるかもしれません。

その動きは、「04 繋がり&共感」や「06 興奮&享楽」といった欲望を盛り上げることにもつながるのではないでしょうか。

スポーツを囲む熱狂を、もっと

現地で試合を観戦すると、心身でその場の熱気を感じることができます。また、テレビを囲んで他の人と一緒に試合をみていると、誰かの喜怒哀楽や会話が生まれます。こういった身体感覚を伴う共体験が、スポーツの生み出す普遍的な価値だと思います。

スポーツを観ることの価値は普遍でも、それによって得られる感情や体験については、テクノロジーの進歩を踏まえるとまだまだ広げていける可能性があるはずです。

一人の「スポーツ好き」の人間として、スポーツが今以上に「みんなで夢中になれる」コンテンツになっていくことを願います。

【調査概要】
〈第11回「心が動く消費調査」概要〉
・対象エリア:日本全国
・対象者条件:15~74歳男女
・サンプル数:計3000サンプル(15~19歳、20代~60代、70~74歳の7区分、男女2区分の人口構成比に応じて割り付け)
・調 査 手 法:インターネット調査
・調 査 時 期:2025年11月7日(金)~ 11月12日(水)
・調 査 主 体:電通 DENTSU DESIRE DESIGN
・調 査 機 関:電通マクロミルインサイト

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著者

加藤伶衣

加藤伶衣

株式会社電通

アソシエイト・プランナー

学生時代、酒類インポーターでの卸営業に携わり、商流や小売の現場への理解を深める。電通入社後はメディアプランニング領域を経て、未来事業創研/消費者研究プロジェクトDENTSU DESIRE DESIGNに所属し、未来の暮らしを起点とした事業開発や消費者研究に従事。クライアントとのワークショップや伴走業務を通じて、消費者インサイトの開発に注力する。

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