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電通デザイアデザイン(DDD)は消費と欲望の関係から、さまざまなソリューション開発や情報発信を行う組織です。

本連載では、DDDが定期的に実施している「心が動く消費調査」を分析。調査結果から得られたインサイトやファインディングスをお伝えしています。

今回は、“子どもの心”を忘れない大人「キダルト(キッズ×アダルト)」と「平成女児ブーム」の関係性がテーマ。DDDの金沢佑希人が、2025年11月に実施した第11回の調査結果(調査概要はこちら)と合わせて、玩具市場における消費行動の特徴をひもときます。

「キダルト」が社会現象に染み出した!?
「平成女児ブーム」は、ノスタルジー消費だけでは語れない。

第26回の記事では、「キダルト」というキーワードを通じて、大人がホビーやゲームを楽しむ消費について考察しました。

筆者の感覚として、当時キダルトが社会に“染み出している”感じは、ゲームやプラモデル、トレーディングカードなど、比較的“男性ホビー”的な文脈で語られることが多く、当該記事の読後感としても「大人になっても少年性を持ち続ける男性たち」という印象が強かったのではないでしょうか。

もちろん、2026年現在もその潮流は続いていると感じています。しかし、前回触れなかった、もう一つ忘れてはならない動きがあります。それが、「平成女児ブーム」です。

昔懐かしい、携帯型育成ゲームで遊ぶ。ぷくぷくシールを集める、交換する。かわいい人形やキャラクター雑貨をチャームにして持ち歩く。

平成期の小学生時代に好きだった世界観を、20代〜30代になった今、改めて自分の価値観で楽しむ、楽しみ直している女性たちが増えてきていると感じます。

このブームは「改めて楽しんでいる」ところがポイントです。単なるノスタルジー消費ではなく、「キダルト」という欲望が主に女性のカルチャーの中で可視化された現象だと考えると、新しい価値観として見えてくるかもしれません。

「子どものころ好きだったものを、好きなままでいる」
「平成女児ブーム」は、過去ではなく、現在進行形の価値観の表れ

興味深いことに、DDDの調査結果にも「平成女児ブーム」の兆候は表れています。「自分が子どものころに好きだったことは、大人になっても変わらず好きなままだと思う」という設問に対する、「そう思う・計」(「そう思う」「ややそう思う」の合計)は全体で67.8%に達しました。男女別でも女性67.5%、男性68.1%と、ほぼ同水準です。

※構成比(%)は小数点以下第2位で四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%にならない場合や、テキストの記載と差が発生することがあります(以降同様です)。

 

また、「子どものころに買えなかったホビーやゲームを、大人になって買うのは恥ずかしいことだとは思わない」という設問では、女性の「そう思う・計」は76.8%となり、男性の72.1%を上回っています。

 

第26回記事で、筆者は“子どもの心を持って楽しむこと”=「キダルト」という文脈で定義していましたが、そこから進化して、現在では“今も昔もこれからも、自分の好きに正直であり続けること” =「キダルト」として受け入れられつつあるのではないでしょうか?

その理由として、SNS時代特有の「魅せる文化」や「推し活文化」などにおける、自己表現の仕方が大きく関わっていると考えています。

「平成女児ブーム」の消費のされ方として特徴的なのは、「当時のモチーフをそのまま復刻する」「当時の遊び方をそのまま踏襲する」といったものではなく、新しい文化と結びついて、再編集されていることです。

たとえば、

・ぷくぷくシールを、収集や交換遊びだけでなく「スマホケースデコ」「手帳デコ」「トレカケース装飾」に使う
・当時の携帯型育成ゲームをゲームとして遊ぶだけでなく「バッグにつけるファッション小物」として持ち歩く
・Y2Kファッションを、当時の再現だけではなく韓国トレンドやバレエコアとミックスして着こなす
・当時の少女玩具が、「推しカラー」「メンバーカラー」と接続され、推し活グッズ化する

などその例は枚挙にいとまがありません。

そして、こうした新たな遊び方は当時を知る世代に加え、リアルタイムでは体験していない若年層にも広がっています。

つまり、「平成女児ブーム」はノスタルジー消費だけにとどまらない、“現在進行形の消費スタイル”として進化した形とも言えるわけです。

「平成女児ブーム」は、コスパ・タイパの反動!?
非合理性の中にある、癒やしの時間に

それでは、なぜ今「キダルト」の一部が「平成女児ブーム」という形で現象化したのでしょうか?

これは仮説ではありますが、その背景には、効率化され続け、決断ばかり求められる日常への反動があるように思います。情報量が膨大に増え、商品やサービスの選択が便利になると思いきや、逆に膨大な情報を処理しきれずに選択が難しいと感じる人、つまり「決断疲れ」の人が増えてきています。

 

特に女性はそれが顕著に出ている印象です。

そんな中で、ぷくぷくしたシールを触る。キャラクター小物を並べる。ただ「かわいい」と思えるものを集める。自分の中にある“オリジン”に従って、没頭して楽しむ。こうした行為は、タイパ・コスパと騒がれている現代では一見すると非合理に見えるかもしれません。しかし実際には、「自分の中の大切なものを見つめ直すための時間」として機能しているのではないでしょうか。

実用性はさておき、好きという感情が優先されるものがあってもいいじゃない。大人になった今、改めてそのようなものたちを手に取ることで、「ちゃんと好きと言える感覚」を回復しているのかもしれません。

目まぐるしく移り変わる「キダルト」は、さまざまな価値観に広がっていく

これまで「キダルト」という言葉から想起されやすかったのは、ゲームやフィギュア、ロボット、コレクションといった男性文脈のホビーが中心でした。しかし今、女性のホビーにも同様の傾向がみられています。これはキダルトという欲望の、価値観の拡張が起こっている状況といえるでしょう。

つまり性別を問わず、“今も昔もこれからも、自分の好きに正直であり続けること”を忘れずに、今の価値観に合わせた再編集をし始めているのです。この再編集によるアウトプットは、玩具を超えて、ファッション、雑貨、エンタメ、空間演出、SNSコミュニケーションなど、さまざまな領域へ広がっています。

かつては、おもちゃは子どものもの、大人になることは、子ども時代を卒業することと捉えられていました。しかし今は、好きだったものを持ち続けながら、大人になっていく。むしろその方が、自分らしくいられる。キダルト欲望、そして平成女児ブームの広がりは、そんな新しい成熟観を象徴しているのかもしれません。

【調査概要】
〈第11回「心が動く消費調査」概要〉
・対象エリア:日本全国
・対象者条件:15~74歳男女
・サンプル数:計3000サンプル(15~19歳、20代~60代、70~74歳の7区分、男女2区分の人口構成比に応じて割り付け)
・調 査 手 法:インターネット調査
・調 査 時 期:2025年11月7日(金)~ 11月12日(水)
・調 査 主 体:電通 DENTSU DESIRE DESIGN
・調 査 機 関:電通マクロミルインサイト

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著者

金沢 佑希人

金沢 佑希人

株式会社 電通

プランナー

戦略から企画まで一貫したコミュニケーションプランニングを実践。 アニメやゲーム、ホビーなどのエンタメ領域のプランニングを得意としている。

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