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「行列をいとわない」のはどんな人? 日本の消費者の「予定」と「予約」を考える

電通デザイアデザイン(DDD)は消費と欲望の関係から、さまざまなソリューション開発や情報発信を行う組織です。本連載では、DDDが実施している「心が動く消費調査」の調査結果から得られたインサイトやファインディングスをお伝えしています。

今回は、2025年11月に実施した第11回の調査結果(調査概要はこちら)に基づいて、DDDの松本泰明が日本人の「予定」と「予約」にまつわるインサイトを読み解きます。

現代人を取り巻く「予定」と「予約」

今年のゴールデンウイークは暦上、比較的長期間休むことができました。普段は取りづらい長期休みの機会に、旅行や外出を楽しんだ人も多かったのではないでしょうか。

さて、今の時代は旅行や外出において、交通機関や施設などを予約することが“当たり前”になってきました。交通機関の座席予約は昔からありますが、それ以外でも予約を取る機会は広がっています。

テーマパークや話題のスポットには、当日、フラっと入るのではなく時間指定をして入ることも多くなりました。映画も事前に見たい回の座席を予約することが増えてきています。飲食店では事前の予約が不要でも、店頭に行くと順番待ち予約の機械があることが増えました。銀行や携帯電話ショップなどの手続きでも、最近は予約が必要な場合があります。

こうした予約システムが昔よりも増えた理由としては、スマートフォンの普及によって、アプリやネットのウェブサイトからの予約が中心になってきたことが大きいでしょう。さらに社会的な背景として、コロナ禍で人流の把握が必要になったことも挙げられます。

また、飲食店や施設の場合、混み過ぎると十分なサービスが提供できなくなるので、顧客の体験価値を高めるために予約システムを導入している場合もあります。消費者側のメリットは自分が利用したい時間にきっちりと利用できることです。この仕組みは、現代人のタイパ志向にも合っています。

一方で現代の日本では、街中で魅力的なイベントや施設を見かけても「フラッと立ち寄る」ことがしにくくなってきています。事前に予約をしていなかったために休日のランチなどで長時間待つ羽目になったり、お目当ての店に入れなくて残念な思いをしたりした経験のある人も少なくないでしょう。

また予約をしたいと思っても、スマホのアプリからしなくてはならない場合、操作が煩雑であきらめしまい、当日の長蛇の列に並んだり、別の店にしたりといったことも増えているのではないでしょうか。

予約をするということは、当たり前ですが「予定を立てること」にもつながります。
こうした予約にまつわる状況を踏まえ、現代の生活者が「予定を立てること」や「予約をすること」について、どのような意識を持っているのか、第11回「心が動く消費調査」の結果からひも解いていきましょう。

若年層には、やや「予定」嫌いの傾向

まずは予定を立てること自体への意識について、【A】【B】のどちらが多いかを見てみました。(【図1】参照)

「【A】細かく予定を立てて行動するのは苦にならない」
「【B】細かく予定を立てて行動するのは面倒だ」

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全体の傾向としては「苦にならない」人(Aに近い計)がおおよそ6割、「面倒だ」という人(Bに近い計)が4割となっています。男女比もそれほど変わりませんが、男性では60代以上で「苦にならない」人の割合が多くなります。一方で若年層はやや「面倒だ」という人が多いようです。

シニア層は「予定をしっかり組む」派が半数超え

次に、1日の予定の立て方を見てみましょう。【図2】は次の2択の内のどちらに近いかを尋ねた結果です。

「【A】1日の予定をあらかじめしっかり組む方だ」(しっかり組む派)
「【B】1日の予定はなるべくその日の気分で決めたい方だ」(その日の気分派)

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全体では「しっかり組む派」(Aに近い計)が6割、「その日の気分派」(Bに近い計)が4割となっています。こちらは男女ともに、10~20代は「その日の気分派」が半数近くまで迫っています。一方で男性の60~70代は「しっかり組む派」が7割近くまで達しています。

普段、仕事や学業で予定が入りがちな若年層は予定に縛られたくない意識が強く、仕事を引退し始めるシニア世代は現役時代のように「予定をしっかり組みたくなる」ということでしょうか。

「事前予約」派が9割の一方、性年代別の回答傾向には「体力」の影響が?

「予約」の意識についても質問しています。

「【A】行きたいイベントや施設は当日長時間並ぶより、事前予約必須の方がよい」(事前予約必須派)
「【B】行きたいイベントや施設は事前予約必須より、当日長時間並ぶ方がよい」(長時間並ぶ派)

この2つの内、近いものを選んでもらった結果が【図3】です。

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※構成比(%)は小数点以下第2位で四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%にならない場合や、テキストの記載と差が発生することがあります(以降同様です)。


これには大きな差がつきました。全体として、「事前予約必須派」(Aに近い計)が約9割に対し、「長時間並ぶ派」(Bに近い計)は1割程度にとどまっています。

特徴の一つとしては、男女差が大きく男性の「事前予約必須」派が84.6%なのに対し、女性は90.0%と5pt以上の差がついています。また年代が上がるほど、「事前予約必須」派が多くなる傾向にあり、男性の10~30代では「事前予約必須」派は7割台にとどまります。この結果から推察すると、体力のある男性や若年層の方が並んで待つことをいとわない傾向があるのかもしれません。

さらに旅行の準備についても聞いています。「旅行で準備の買い物や旅先の予約をあれこれするのは楽しいことだ」という質問への回答をまとめたものが【図4】です。


これは67.6%が「そう思う(計)」と答えているのに対し、「そう思わない(計)」が32.4%です。この項目も20~30代の若年層は「そう思う」がやや少ない傾向になります。旅行にかかるさまざまな準備の面倒くささが、昨今よくいわれる「若者の旅行離れ」の一因なのかもしれません。

ここまで見てきた4つの設問を総じて見た際の傾向として、今の生活者は予定を立てることや予約をすることをそれほど嫌っていないようです。ただし、若年層ではやや予定嫌い、予約嫌いの傾向が見られます。若年層のタイパ志向を見ると意外に思えますが、若年層でもどの項目も5割を超えていないので、若年層の全体傾向で考えると予定や予約は嫌われていないようです。

「長時間並ぶ」ことを選ぶ人はどんな人か?

ここまで、現代の生活者はそこまで予定や予約を嫌っていない、という傾向を見てきました。一般的にはこの多数派である「予約をする人」を読み解くことで、現代の消費傾向などを明らかにしていくことが多いのですが、少数派の「行列に並ぶ人」を見ることで、今までに気づけなかった社会の盲点を知ることができるかもしれません。また、少数派を読み解くことは新しい商品やサービス開発の視点を生み出すことにもつながります。

そこで、少数派となる予約よりも並ぶことを選ぶ人はどんな人たちなのかを見て行きたいと思います。

さきほど【図3】で紹介した「事前予約必須派」と「長時間並ぶ派」の回答者について、深掘りをしてみたいと思います。「長時間並ぶ派」の回答者数がやや少なめではありますが、有効なサンプル数は確保できているので傾向を見ることは可能です。

まずは「事前予約必須派」「長時間並ぶ派」それぞれが、【図1、2】、および【図4】で質問した予約や予定に関する意識項目の回答をクロス集計した結果を見てみましょう。

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「長時間並ぶ派」は「1日の予定はなるべくその日の気分で決めたい」「細かく予定を立てて行動するのは面倒」が高く、「旅行で準備の買い物や旅先の予約をあれこれするのは楽しいことだ」が低い傾向にあります。どうやら、そもそも予定を立てて行動するのが好きではないようです。

「長時間並ぶ派」はどんな現代の欲望を抱えているのか

次に性年代の違いを見てみます。


先ほど見たように「長時間並ぶ派」は全体と比べてやや男性比率が高く6割を占めています。年代は若年層の比率が高く、10~30代では「事前予約必須派」と10pt以上の差がついています。並ぶだけの時間も体力もあるからこそ、「長時間並ぶ派」なのかもしれません。

さらに、DDDが提唱する「11の欲望」に関わる欲望因子のスコアを見ると(【図7】参照)、「長時間並ぶ派」は「全体」および「事前予約必須派」と比べて、「承認&優越」以外は全体的に低い傾向にあるのが分かります。図内にはありませんが、この11の欲望因子スコアは総じて若年層が高い傾向にあるため、「長時間並ぶ派」の傾向に年代の影響はあまりなさそうです。

「11の欲望」について詳しくは、こちらをご覧ください。
「新しい欲望に、名前をつけてやる。」(ウェブ電通報)
DENTSU DESIRE DESIGN、人間の消費行動に影響を与える「11の欲望」2024年版を発表


また11の欲求因子の元となる欲求項目のスコアを見ると(【図8】参照)、「長時間並ぶ派」が「事前予約必須派」を大きく上回る項目は、「人に影響を与えたい・コントロールしたい」「ステータスや特権が欲しい」「セクシーな体験をしたい」の3項目です。


一方で「長時間並ぶ派」が大きく下回る項目を見ると「快適に過ごしたい」「心の健康を大事にしたい」「自由でいたい・縛られたくない」「リラックスしたい・のんびりしたい」「安心して、平穏に暮らしたい」といった項目が見られます。総じて、安定・安心した生活を求める欲求が低く、他者に影響を与えることを意識した欲求が高いように見えます。

この他者に影響を与えたい意識は、【図9】のとおり、価値観の項目からも見られます。


価値観で「長時間並ぶ派」が「事前予約必須派」を大きく上回る項目を見るとSNS上での承認欲求に関するものが多く上がってきています。

● 他人から実物と違うと思われても、SNSでは盛っている自分を投稿したい
● SNS上で、自分が他人から注目されると嬉しい
● 同じ趣味や好きな人・モノがある仲間がいて、そのグループやコミュニティに参加している
● SNSへの投稿をよくする

一方で、消費関連の項目でも、次のような項目が挙がっています。

● 良いものを安く買ってしまうのは、どこか失礼な気がする
● 欲しいものだったら、あまり検討をせずにすぐ買う方だ
● 流行っているものや世の中のトレンドに乗り遅れたくない
● ストレス解消のためにお金を使うことがある

この2つの傾向を併せて考えると、どうやら、衝動買いや話題になっているモノを買い、その様子を発信することで、ストレスを発散するタイプのように思えます。消費行動そのものが自分を表現する一部になっているのかもしれません。

また、「我慢しなければならないことが多すぎて、我慢の限界を超えてしまいそうになることがある」の項目も高くなっています。

自分の内なる衝動に素直になるからこそ、事前に予約をするよりも長時間待つのを選ぶというのは興味深いポイントです。確かに予約という仕組みは、衝動買いとは最も縁遠い行動ではあります。一見、長時間並ぶという行動と衝動買いは相反するものにも見えますが、実はこれは同じ欲求からの行動の裏表と言えるでしょう。

「思い付きの行動」も受け入れる柔軟性のある社会へ

回答者の数のみで見た場合、「長時間並ぶ派」は全体の1割に過ぎないため、一見すると見過ごしてもよいものに思えるかもしれません。しかしこの行動を「衝動買い」の一側面ととらえると見え方も変わってきます。

コスパ、タイパなどの概念が当たり前になってきている現代社会、かつ、昨今の継続的な物価高では、衝動買いはなかなかしづらいものになりつつあります。だからこそ、この衝動買いや行列に並ぶことができる余地を社会に残していくことは、社会の柔軟性や余力にもつながります。

街中に長い行列ができていたら、何のための行列なのかを確認してみて、気になるものが売っていたら試しに並んでみるくらいの柔軟性を持って行動してみてもよいのではないでしょうか。

【調査概要】
〈第11回「心が動く消費調査」概要〉
・対象エリア:日本全国
・対象者条件:15~74歳男女
・サンプル数:計3000サンプル(15~19歳、20代~60代、70~74歳の7区分、男女2区分の人口構成比に応じて割り付け)
・調 査 手 法:インターネット調査
・調 査 時 期:2025年11月7日(金)~ 11月12日(水)
・調 査 主 体:電通 DENTSU DESIRE DESIGN
・調 査 機 関:電通マクロミルインサイト

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著者

松本 泰明

松本 泰明

株式会社 電通

第2統合ソリューション局

主任研究員

入社後、主にマーケティング関連局で、食品・飲料、酒類、家電、保険、金融などさまざまな業種のクライアントのアカウントプランニング作業に従事。その後、2010年にメディア・シェイカーズのM1・F1総研の主管研究員として、20~30代の消費者心理について研究。2013年から電通総研で、消費潮流分析、話題・注目商品などを担当。2017年より電通未来予測支援ラボメンバー。【専門分野】消費潮流、消費トレンド、生活者インサイト

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