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近年、新たな中期経営計画の策定と並行して、コーポレートブランディングにおいても3~5年の中期計画を立案し、経営・事業戦略とブランド戦略を両輪で推進する企業が増えています。

その背景には、多くの企業で中期経営計画が、財務・非財務を統合した企業の変革ストーリーの基盤として位置づけられるようになっていることが挙げられます。そのため必然的に、コーポレートブランディング活動も中期経営計画が示すありたい姿の実現を加速するための複数年計画である必要があり、経営・事業戦略との連動性がより強く求められるようになりました。

しかし、そのような取り組みは多くの企業において前例に乏しいのが現実です。経営企画部門とブランド戦略部門(コーポレートコミュニケーション部、広報部など)、あるいはブランド戦略部門内の各グループ間で、齟齬(そご)が生じる場面が多く見られます。

今回は、ブランド戦略部門が新しい責任者を迎え、中期計画を立案することになった場面を想定し、その初動期間におけるつまずきやすいポイントと円滑に推進するためのアプローチを、電通 ブランドコンサルティング部長の中町直太が解説します。

中期経営計画の位置づけが変わった

近年、「中期経営計画をより魅力的にストーリーテリングしたい」というご相談をいただくことが増えています。つまり、多くの日本企業が中期経営計画を「作ること」と「伝えること」を両輪で推進する必要がある、と考えはじめたと言えます。その背景には以下のような理由が挙げられます。

  1. 非財務情報開示義務化の広がりを受け、自社の成長性への評価を高めるために財務・非財務を統合した形で独自の価値を訴求する必要がある
  2. 外部環境の不確実性がますます高まる中で、数字に対するコミットもさることながら、
    変革の実現に向けた強い意志がより問われるようになっている
  3. 変革の推進に向けては社内外のステークホルダーとの共創が不可欠であり、そのためのエンゲージメント向上が課題になっている

中期経営計画は、主に投資家に向けて収益目標を説明するためだけのものでは、もはやありません。さまざまなステークホルダー(その中には自社の従業員も含まれる)に対して、ビジョンの実現と、そのためのコミットメントについて説得する「対話の基盤」として位置づけられるようになっています。この変化をまとめたのが下記の図です。

このような変化を受け、経営企画部門とブランド担当部門は、より緊密な連携が求められています。

経営企画部とブランド担当部門の「同床異夢」

しかし、多くの企業において、両者の目線がそろうのに思いのほか時間がかかってしまう、という問題が起こっています。最も多く見られるのは以下のようなケースです。

コーポレートコミュニケーション部や広報部をはじめとしたブランド戦略を担当する部門は、部内の各グループにおける活動の振り返りをもとに、より効果的なコミュニケーション施策について提示します。

しかし、経営企画部がまず知りたいのはそこではありません。最も関心があるのは、「自社の経営・事業戦略の推進にブランディング活動はどのように貢献するのか」を明確に定義することです。そのために現期間における成果と課題を端的に整理し、ありたい姿に向かうプロセスを定量・定性の両面から構造的に提示することを求めます。具体的な施策について議論するのはその後のステップだと考えているのです。その「同床異夢」を下記の図に整理しました。

このようなすれ違いが起こると、時間的なロスによって業務スケジュールがタイトになってしまうだけでなく、両者の信頼関係にも影響が及びかねません。

ポイント①:ブランド価値規定の「開き直し」

それでは、両者が目線を合わせるためのステップはどのように進めていけばよいのでしょうか。まず必要になるのは、それまで推進してきたさまざまなブランドコミュニケーション施策の起点であるブランド価値規定およびその背景を、ブランディングの専門知識がない他の部門にもわかる言語で「翻訳」することです。そのイメージを示したのが下記の図になります。

PEST(政治・経済・社会・技術)、SWOT(強み・弱み・機会・脅威)、STP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)

ブランド価値規定は、外部環境・内部環境それぞれの分析や、経営陣へのヒアリング、現場従業員によるワークショップなど、さまざまな情報を統合し、あるフレームワーク(支援する企業によって異なる)に収れんします。例えば電通では、コーポレートブランドの構築に向けて「IVマトリクス」というフレームを提供し、多くのクライアントにご活用いただいています。

フレームワークに収れんしたものは、ブランド担当部門にとってはそれまでの調査・分析プロセスが凝縮されたものとして便利なものです。しかし、経営企画部はじめ他の部門にとっては、自分たちの担当業務との関連性をすぐに理解することが難しく、コミュニケーションギャップが生じることがあります。また、日本企業では数年でローテーション人事が行われることが多いため、他部門だけでなく、自部門に新しく着任したメンバーへの円滑な引継ぎも大きな課題です。

そのためブランド価値規定を、「自社におけるコーポレートブランディングとは、経営・事業戦略の加速に向けて誰の何をどのように変えることなのか?」という問いに答えられる形にする必要があります。具体的には、ビジネスにおいて汎用的に活用されているフレームワーク――例えばPEST(政治・経済・社会・技術)、SWOT(強み・弱み・機会・脅威)、STP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)など――に「開き直し」を実施します。数枚のレポートに端的にまとめて共有することが、自社がコーポレートブランディング活動を展開する意義を理解してもらうための「第一歩」となることを、私は経験上、痛感しています。

ポイント②:中期計画の構成要素

次に、中期計画のシナリオ作成に含まれるべき構成要素を整理する必要があります。もちろん、各社ごとに課題意識やそれまでの経緯は異なるため、唯一の正解は存在しませんが、一般的には下記のような流れに落とし込むことが多いです。

先ほどお伝えした通り、経営企画部との合意形成に向けては自社の経営・事業戦略の推進において、ブランディング活動がどのように貢献するのかを明確に定義することが重要です。そのため、図4の1~3のステップにまずはエネルギーを注ぐことが求められます。多くの場合、経営企画部との下打ち合わせ段階では1~3を議論したうえで、経営陣への活動計画やそれにともなう予算申請に向けて4~7を詰めていく、という流れになることが多いです。

ポイント③:部内メンバーの巻き込み

同時に、自部門のメンバーをうまく巻き込んでいくことも重要です。責任者(部長クラス)や各担当分野のマネージャー(課長クラス)を中心に経営・事業戦略レベルの目線合わせを進めていくと、必然的に日々の業務に邁進している担当者クラスのメンバーの方々と距離が生じます。

また、日本企業の多くは「トップダウンによる押し付け」を嫌う傾向があるため、中期計画を「自分ゴト化」してもらうためにも、適切なタイミングとやり方で、なるべく多くのメンバーの声を取り入れる必要があります。特に重点施策の立案段階では、ワークショップなども取り入れ、担当者クラスの方の声も吸い上げながら策定していくことをお勧めします。

加えて責任者は、中期計画の推進に向けて人員の増強や育成、場合によっては組織改編を視野に入れる必要が出てきます。自部門のメンバーに新たにどんなことに取り組んでほしいのか、あるいはそのためにどのような能力を身につける必要があるのかを考えてみましょう。そのためにお勧めしたいのが、担当部門×組織能力でマトリクスを作成して検証することです。それにより、活動計画を組織図における各担当部門に落とし込む前に、「今後必要とされる組織能力はどこが(誰が)担っていくのか、現在足りない能力は何か」を、見える化します。


これをすることで、「目先の業務を一つ一つ改善する」というフォアキャスティングの目線から、「ありたい姿に近づいていくために必要なことに挑戦する」というバックキャスティングで自部門の組織の未来とそのために必要なタスクを考えることができます。

ブランディング課題は「イネーブルメント」へ

現在ご相談をいただくブランディングに関する課題の大部分は、戦略の策定よりもそれを実装する段階、つまり「イネーブルメント=組織が成果を出すために必要な環境を整え、メンバーが継続的に行動するための仕組みづくり」にあります。

電通グループは、ブランド戦略立案およびその推進のために必要な組織・業務のコンサルティングからはじまり、コミュニケーションプランニング、クリエイティブ制作、効果測定まで、一気通貫で伴走しています。

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著者

中町 直太

中町 直太

株式会社 電通

第4マーケティング局 ブランドコンサルティング部長

入社後、マーケティングプロモーション局、営業局を経て、現在は第4マーケティング局でコーポレートブランドコンサルティング/広報コンサルティングを専門とする。コーポレートブランドコンサルティング領域では、さまざまな業種の数万人規模の大企業やスタートアップ企業などを幅広く支援。特に、インターナルコミュニケーションによる企業文化変革支援が得意分野。またPR領域では、放送局のディレクターとしてテレビ番組の制作、そしてグループ会社設立時の広報体制立ち上げを経験。クライアントワークにおいては自治体の新条例の成立支援や、国際的なビッグイベントの広報戦略立案など、大型プロジェクトの経験も豊富。

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