AI時代、dentsuの競争力はどこから生まれるのか。
Global CEO 佐野傑氏が語る「Innovating to Impact」の新時代
世界最大規模のクリエイティビティの祭典「Cannes Lions International Festival of Creativity 2026(カンヌライオンズ2026)」。その本会場の一つであるドビュッシーシアターで、dentsu Global CEOの佐野傑氏が、CNBCのSenior Media & Tech CorrespondentであるJulia Boorstin氏と対談しました。
テーマは「A New Era of Innovating to Impact(Innovating to Impactの新時代)」。2026年3月末のGlobal CEO就任から約100日となる佐野氏が、AIによって働き方や創造のプロセスが変化する中、イノベーションをいかにクライアントや社会にとって価値ある成果へとつなげるかについて、dentsuが125年の歩みの中で大切にしてきた価値観とともに語りました。
冒頭、佐野氏は、dentsuが125年の歴史を踏まえて次の章を描くために重要な点として、dentsuのパーパスとカルチャーを事業活動の軸に据え続けること、その上でクライアントに対する価値やインパクトを創出することを挙げました。
そして、「クライアントの皆さまとの長期的な信頼関係のもと築かれた『One Team』の精神からは、共通の目標に向かい、時に厳しい意見を交わしながらも、クライアントの皆さまの成長への責任を共有する姿勢が形作られます。dentsuに根付く、『好奇心』『相互尊重』『クリエイティビティ』『協働』『信頼』を大切にする企業文化が、One Teamの精神を支え、競争力につながっています」と説明しました。
また、業界環境が抱える「変化のスピード」「複雑性」「同質化」という課題に対しては、それぞれ「機動性」「簡素化」「独自性」をもって向き合うことが競争力の鍵になると述べました。
こうした変化の激しい時代において、佐野氏が自身のリーダーシップの軸として挙げたのが、「顧客起点」「本質的な課題の特定」「意思決定と実行のスピード」です。「クライアントの皆さまの『Growth Partner』になるのは難しい。表面的な要望に応えるだけではなく、クライアントの皆さまが向き合う本質的な課題を見極め、動きながら学び、改善していく姿勢が求められます」と語りました。
佐野氏は、日本事業を率いてきた経験を振り返り、クライアントとの長期的な信頼関係を支えてきたのも、この「One Team」の姿勢だと説明しました。
「クライアントの皆さまと私たちが同じ目標を共有し、課題を共に解決し、成果に責任を持つOne Teamとなること。この顧客起点の姿勢を大切にしています」
セッションの大きなテーマの一つが、“AI”でした。カンヌライオンズ2026でもAIは主要な話題となり、多くのセッションで、その可能性とリスクが議論されました。
佐野氏は、AI時代のイノベーションについて、「アイデアではなく、インパクト(実際の影響・成果)が本質であり、AIは可能性を拡張する一方で、課題設定や意思決定、社会への価値創出は引き続き人間の役割として残ります。人とAIが協働し、高め合うことによる価値創出が最も重要です」と語りました。
佐野氏はまた、人とAIの在り方について、「AIとPI(=People’s Intelligence)」が重要だと続けました。この「AIとPI」という言葉には、AIを人の代替ではなく、人の知性や創造性を拡張し、人とAIは互いに高め合うものと捉えるdentsuの考えが表れています。AIによる効率化だけを目的とするのではなく、人の知性や創造性を拡張し、新たな事業領域やクライアントへの提供価値を広げていくという考えを示しました。
セッションの終盤、佐野氏はこれからも重要なdentsuの価値観を125周年にちなみ、「1・2・5」という言葉で表しました。
「1」は、クライアントとOne Teamであること。
「2」は、イノベーションとインパクトという二つの中核的な力。
「5」は、五つの価値観:好奇心・相互尊重・クリエイティビティ・協働・信頼
を基盤に、クライアントと社会の持続的成長に貢献していく、と締めくくりました。
今回の対談を通じて示されたのは、イノベーションの価値は、新しい技術やアイデアそのものではなく、それがどのような成果や変化につながるかによって測られるという考え方です。また、AIなどの技術が進化しても、人の好奇心やクリエイティビティ、相互尊重、協働、信頼が、成長やイノベーションを支える重要な基盤であることが語られました。
dentsuは「Innovating to Impact」をクライアントおよび社会に対するコミットメントとして掲げ、クライアントやパートナーの事業成長を支える「Growth Partner」として、ビジネスと社会の双方に前向きなインパクトを生み出す取り組みを進めていく考えです。
著者

佐野 傑
株式会社 電通グループ 代表執行役 社長 グローバル CEO 兼 dentsu Japan CEO
1992年に(株)電通入社後、営業部門での業務経験を経て、BX 成長及び海外展開、グループの競争力強化に貢献。2024年より dentsu Japan CEO、2025年よりdentsu Japan CEO兼デピュ ティ・グローバルCOOに就任し、国内事業とグループ横断の事業 変革を推進した。





