“やり抜く覚悟”が企業を動かす――個の情熱と組織の実行力の接続点

【この記事は、こんな方におすすめ】
- 社会課題への取り組みを、CSRにとどめず事業や組織の力につなげたい方
- 個人の思いや提案を、社内の理解・承認・実行へと進めたい方
- パーパス浸透や社員エンゲージメント向上のヒントを探している方
今年も社会課題に挑む強い意志を持つ個人が一堂に集い、白熱した議論を展開した「第5回Beyondカンファレンス2026」。今回は、「Drive the Will. 個の意志に、組織の動力を。」をテーマに掲げた。これまで個人の意志がリードしてきた各種活動を加速させるべく、そこに企業の持つ強い実行力をいかに接続していくか、その接点を見いだそうというのが目論みだ。

これまで当カンファレンスで共有されてきた各種活動は、その多くが課題を発掘し、解決に向けた勇気ある第一歩を踏み出すまで、それぞれ個人の強い思いが推進してきている。やがてその思いに共感する個人がつながり、それぞれの強みを生かしながら連携していく、いわゆる個人版「コレクティブ・インパクト」(※)がこれらの活動を支えていた。
しかし目指すべき目標と実現のための手法という基盤が整ったタイミングでは、さらに大きく飛躍するための人員体制や予算が必要となってくる。その先に見えているゴールを企業や団体といった組織に理解・共感してもらい、さらなる大きな一歩として踏み出すにはどのような行程が必要なのか。そのターニングポイントで壁にぶつかり、もがくアジェンダリーダー(各活動の推進役)は少なくない。
一方、企業においても、企業市民としての社会的責任を果たしたいという意識は高まっている。しかし、その取り組みが従来型のCSR活動の域を出ないケースも少なくない。これらの活動への参画を決めたとしても、単なる社会奉仕活動の一環として捉え、明確なリターンを感じ得ていないとすれば、それは表面的なものにとどまりかねない。そのような状況下、今現在も次のフェーズに進もうとしながらも、面前の壁に阻まれているそれぞれの悩みも交えながら個人と組織が協働できる道筋を探った。
※ コレクティブインパクト=特定の社会課題について、行政や企業、NPO、基金、市民などが組織を超えて協力し、解決に向けて取り組むこと。
社会課題に挑む意志が集う物理的拠点「グラスロック」
今回カンファレンスが開催された場所は虎ノ門ヒルズ。そこには社会課題解決に関心の高い企業や団体、行政、学生を含む個人といったさまざまな存在が集まる物理的拠点「グラスロック」が併設されている。言わずと知れた森ビル運営の施設で、以前同社が運営していた六本木アカデミーヒルズが個の知識を高めるためのネットワーク拠点とすれば、グラスロックは2025年に新たな目的で改修された拠点と言えよう。複雑さを増し、刻一刻と変化する社会においては、もはや一人の情熱、一社のリソースだけでは、太刀打ちできないであろう各種課題に対し、組織の力を統合して向き合うため、それぞれの意志が交わるための場所が、アカデミーヒルズの後継施設であるグラスロックなのだ。
今回、カンファレンスの主体であるand beyond companyが記したステートメントには、「『社会を良くしたい』という願いは、時に 『きれいごと』とされ、組織の論理や利益に弾き返されてきた。理想なき利益は、続かない。利益なき理想は、届かない。今こそ、その矛盾をエネルギーに変えよう。個人の意志が、組織という『エンジン』を得たとき、理想は社会を動かす確かな推進力になる。」とあるが、グラスロックはまさに当カンファレンスが目指した個人と組織の融合といった化学反応を起こすにふさわしい場所と言えよう。
主管組織はあれど、企業も発露のタイミングに苦慮
以前のカンファレンスレポートでも述べたが、当カンファレンスは他のそれとは少々異なる趣を持つ。一方的なセミナーで知識を得るのではなく、常に登壇者と参加者は対等、登壇者の投げ掛けに対して参加者全員が意見を表明し、その先の着地点に向けた次なる一歩を具体的に設定するまで議論する。そして自身が貢献できることを見つけた参加者は、その活動に飛び込み、コミットしていくのだ。そのため会場は常に車座となれるよう配置され、およそ通常のカンファレンスとはイメージの異なる、いわば集会のような体を成す。
今回の基調講演では企業のトップマネジメントのスタンスと悩みがカンファレンス冒頭に共有された。登壇者はSOMPOホールディングス/損害保険ジャパンの酒井氏、NTTドコモ・ベンチャーズの笹原氏、エレコム/エレコムヘルスケアの葉田氏の3人で、「トップマネジメントセッション/いまなぜ、資本主義に社会課題解決/共創が必要なのか?」という題目のもと、鼎談形式でディスカッションが行われた。
社会課題の解決に向けて組織の各部門を率いていく難しさ、具体的な成果に対する客観的評価の在り方など、多様な視点で率直に想いや悩みが語られ、興味深いセッションとなった。テーマは、社会課題解決を基軸とする活動に、いかに企業意志をコミットさせ真の企業活動に昇華させるか。社会課題解決への明確な意志を持つ各人が、組織をいかに動かそうとしているのか、してきたのか、またそこに生まれた障害や葛藤がざっくばらんに語られた。

“やり切る覚悟はあるか?”が合い言葉に
キーワードとして3人が共通して語っていたのは、あらゆる起点は「個の意志の覚悟」、すなわち“やり切る覚悟があるか”に尽きるという点である。
口火を切ったエレコム葉田氏は、自身の医療・社会活動の経験から「どれほど論理やROIを整えても、やりたいという意志が弱ければ物事は動かない」と強調。当事者に強烈な覚悟があれば、最終的には企業トップや周囲も巻き込まれ、結果的に組織が動くところまで持っていけるはずと述べた。それまで個人的ネットワークで各種活動を推進してきた経験を持つ葉田氏は、それでも一定の成果は出せてきたとしつつも、やはり企業の組織力があれば規模もスピードもより向上するはずと感じ、実家が営むエレコムに入社したという。
入社当初は組織の制約を感じながらも、それでも徐々に関心が広がり、協力する人も増えていったとのこと。そこで見いだした社内説得のポイントとして、これら社会課題への取り組みは人材を引き寄せる力を持ち、長期的な企業価値向上にもつながることを経営に理解させることと話した。またその体験から、いかにスキルやナレッジとしての「How」「What」が整っても、基盤として最も重要なのは「Why」であり、なぜそれをやるのか、やるべきなのかがその意志を強固なものにするとした。
損保ジャパン酒井氏も葉田氏同様、個の意志の強さ、やりたいのか、やりたくないのかが企業内での推進力にも影響するとし、「PDCAのPは、個人的には、Passion(情熱)だと信じている」とコメントした。その一例として東日本大震災の復興支援として同社が保有するゴッホの「ひまわり」を東北に貸し出した際のやりとりが紹介された。東北の子どもたちを「ひまわり」の絵で元気にしたい、という現場の想いを実現するため、社内稟議に奔走するもなかなか決裁が下りない状況が続く中、酒井氏の背中を押したのは「本当に自身がそれを実現したいと思っているのか?」という覚悟を問う上司の言葉だったという。「本気でやり遂げたい」、その思いを伝えるとサポートの輪が広がり、展覧会は大盛況を収めた。
「企業の中でその意志を実装するには丁寧な“対話と承認”が不可欠です」と酒井氏は語る。志を組織に広げるためには、共感を生むビジョンの形成や、挑戦を許容する文化づくりが不可欠であり、日常のコミュニケーションや関連部署とのリレーションづくり等の浸透のプロセスをしっかりと踏むことが組織全体の行動変容につながるという。また、サステナビリティ専門家の間でも昨今は「エコノミゼーション」という言葉が頻繁に使われるようになってきており、社会性と経済性、双方を意識しながら企業は持続的な成長を果たしていく必要があるという見立てを示した。
またNTTドコモ・ベンチャーズ笹原氏は、企業の役割を「個人の意志と社会をつなぐプラットフォーム」と捉え、ユーザー価値や社会的意義に基づく活動が結果的に経済価値も生むと指摘。かつてのiモードでも技術的先進性に対する注目がありつつも、それにフォーカスしすぎるとオーバースペックになり、実は顧客の期待からズレてきてしまう現象を経験したという。技術が成熟し、社会に浸透すればするほど「社会との接続」を気にしなければならず、そこから社会をどう変えられるのかを考えるようになるため、双方の目線を併せ持つことが必要だとした。
また各種活動の基軸として、企業のパーパスの重要性についても「合理的判断と決断は別物。決断は暗闇で決めるもので、常にその道しるべとなる理念やパーパスがあってこそブレない決断ができる」と話した。加えて、企業間連携が機能するためには、表層的な協業ではなく、共通のパーパスと“やり切る覚悟“の共有が不可欠とした。

総じて、「いかなるアクションも、それを推進する個人の意志がいかに強固であるかが重要であり、その熱量が周囲を巻き込み、やがて企業の実行力へと転化する」という結論に収束する。社会課題解決は制度や仕組みだけでは進まず、まずは個人の圧倒的な意志が起点となる。そして、企業はそれを増幅装置として社内外に浸透・拡大していく役割として認識しつつ、実行主体が企業という組織へ移管されるとは思わない方がいいのかもしれない。あくまでそれを推進する“顔”が動力源としては必要ではないだろうか。この“不退転の意志”を企業に伝搬させていくにはどうすればいいのか。以下、鼎談内容からそのプロセスをまとめてみたので参考にしてもらいたい。
企業が意志を受け入れるプロセスは?
企業が個人の相応の覚悟を受け入れ、実行へと昇華していくプロセスは、大きく4段階で整理できる。鼎談の文脈に沿うと、単なる稟議や論理ではなく、「意志の伝播と翻訳」のプロセスである点が本質的だ。
① 強い意志の可視化
まず出発点は、個人の圧倒的な覚悟と情熱だろう。葉田氏が語る通り、「命がけでやりたい」というレベルの意志は、言語化以前に周囲へ伝わっていく威力を備える。
- 何度否決されても提案し続ける
- 自分で補助金や仲間を集めて実証してしまう
- なぜやるのか(Why)がぶれない
この状態になると、上司や経営層は当該活動とその推進役を「評価する対象」から「無視できない存在」へ認識を変えることになる。すなわち意志の強度そのものが説得力になるフェーズと言える。
② 周囲への“翻訳”と刷り込み
ただし個人の意志だけではやはり組織を動かすのは難しい。酒井氏が指摘するように、次のステップとして仲間を増やしていくことが重要だ。そしてそのときに必要となるのが社内の各部門の理解度や共感文脈に合わせた「翻訳」と「対話」というフェーズである。
- 財務部門にはROIやリスクで説明
- 現場には顧客価値や実利で説明
- 経営には企業価値・人材・ブランドで説明
さらに重要なのは、行動変容には一定時間がかかるという点だという。一度で通らなくても繰り返し伝えることで、他者の認知がようやく追いついてくる。たとえ正しいロジックで現活動を説明したとしても、基礎理解が異なれば即座に理解・共感を得ることは難しいのは当然だ。
すなわち「時間がたち、自分が実現したいと考えていたことを他人が言い始める」状態まで持ってこられれば、この時点でそれらの意志は「個人のもの」から「社内の関係者に共有されたもの」に変わる。
③ パーパスへの接続(正当化の獲得)
次に起こるのが、企業の存在意義やビジョンとの接続である。
- 「社会にとって必要」
- 「当社のビジョンに合致する」
- 「顧客価値を高める」
といった文脈に当該活動の意味を乗せることで、活動が正当化されるという。笹原氏・葉田氏の議論にもあるように、企業間連携が成功する条件も「共通パーパス」であり、単なる利害では動かないというのも納得感がある。
ここで初めて、
“個人のやりたいこと”が“会社としてやるべきこと”に昇華されることになる。
④ 実行力への接続(組織が動く)
最終段階は、企業の資源が動き出すフェーズ。
- 人材配置
- 予算化
- 事業化・制度化
- 他部門・外部との連携
酒井氏の言う「承認」と「挑戦を許容する文化」がここで効いてくる。
また葉田氏の実践のように、
- 補助金活用で初期投資を抑える
- 小さく成果を出して説得力を高める
といった段階的な工夫により、企業が連携しやすい土壌が整うこととなる。
再度これらの4プロセスをまとめてみると、その本質は「意志→共感→正当化→実装」というものになるだろうか。個人の不退転の意志が、対話によって共感され、パーパスで正当化され、最後に企業の実行力として具現化されるのが現状見えている着実なステップと言えるかもしれない。
重要なのは順番であり、
- 最初からROIで通そうとしない
- 実は“意志の熱量(個人のパーパス)”が突破の鍵
- 後からロジックで補強する
という逆転思考が企業巻き込みのTIPSに他ならない。
社会と向き合うことで、自社と自身の価値を再発見
こうして見ると、「社内をいかに巻き込むか」はその推進役も常に苦労し、トライアンドエラーで進めていることがうかがえる。各社粛々と活動および共感と協力を積み重ねていくのが王道にも見えるが、あるチャンスを活用して大きな成果を達成した事例もある。その異例のチャレンジ精神が際立ったのがNTTの佐藤 優氏から共有された大阪・関西万博におけるNTTパビリオン運営の内製化チャレンジの取り組みだ。同パビリオンは後に「奇跡のパビリオン」の名称で呼ばれることになる。

通常、大型パビリオンは運営の安全面や完成度、スムーズな運営のためイベント制作会社へ運営委託するのが一般的だが、NTTではあえてその常識を覆し、グループ社員を中心とした運営体制を採用。ほぼ全面的に内製化したのだ。この意思決定の背景には、コスト制約という現実的な理由があった一方で、それ以上に「万博という企業と社会が直接つながる貴重な機会を、社員一人一人の成長とエンゲージメント向上につなげたい」という強い狙いがあったという。
テーマは「自分ごと化」。目前の超巨大イベントにおいて、自社従業員がみずからの手でそれを運営し、苦労し、工夫し、達成したその経験値が、社員のエンゲージメント強化に大きな効果をもたらしたことは誇るべき成果だろう。世間の耳目が集まるこの機会に、社会と社員がつながる場を有効活用したその内容と成果を紹介したい。

素人集団だからこそ自然発生した、共創の意志と改善の連鎖
当プロジェクトでは、NTTグループから約2300人が公募で参加し、万博の184日間を46のブロックに分け、5日間単位でメンバーを入れ替える独自の運営方式を採用したという。すなわち常に運営スタッフが入れ替わり、初めての経験が繰り返されるということ。さらに参加者の多くはイベント運営の経験がない“素人”であり、研修も最小限にとどめ、早期に現場へ投入するという、普通に聞けばかなり無謀ともとれるチャレンジと言える。
一方で、だからこその発見もあったという。一般的なパビリオン運営とは対照的に、短期間で人材が入れ替わることで常にフレッシュな視点と主体性が生まれ、各チームがみずから考え、試行錯誤しながら運営を改善していくプロセスが形成されたという点は、これまでのやり方では決して生み出せなかった成果だろう。ある意味、新たな社員間コミュニケーションの場づくり、社内エンゲージメント強化のスキームが、この巨大企業グループにおいて打ち立てられたのは快挙かもしれない。

さらに運営においては、トップダウンによる厳密な指示よりも、現場の自由な発想を尊重するマネジメントが徹底されたという。万博会場内で初めて採り入れられた来場者の見送り演出や、障害者への自主的な個別案内対応などは、社員の自発的な提案から生まれたものであり、社会に向き合う企業人としての体験価値を高める重要な要素となったとのこと。また、チーム間での引き継ぎを繰り返すことで、成功事例や改善点が蓄積・共有され、組織知として昇華されたようだ。このような自主提案や改善プロセスは事後の各人の業務にも良き形で再現されているという。
結果として、社員満足度は非常に高く、アンケートではほぼ全員が「NTTで働くことへの誇り」を強く感じたと回答している。異なる会社・職種・世代の社員が一つの目的のもとに協働した経験は、グループ内の一体感を醸成すると同時に、顧客と直接接することで企業が社会とどのように関わるべきなのかを体感する良き機会となったようだ。

“ハレの日”を、全社で社会に向き合う機会に
この取り組みの本質的な価値は、単なるイベント成功にとどまらない。運営を外部委託するのではなく、社員自身が主体的に関わり、試行錯誤を重ねながら価値を創出したことで、「企業が社会と寄り添うとはどういうことか」を実感できた点にある。また、非日常の“ハレの舞台”でみずから考え行動する経験は、社員の内発的動機づけを高め、その後の業務にも生かされる基盤形成につながったと言える。
このように、NTTの万博パビリオン運営内製化は、制約を契機として生まれた挑戦であったが、結果として社員エンゲージメントの向上、組織学習の促進、そして企業と社会の新たな関係性の構築という多面的な成果をもたらした事例であり、今後の企業活動においても示唆に富むものと言える。
恐らくこの成功は、担当者の強固な意志を基盤に、本当に実現可能なのかその実行可否の逡巡も乗り越え、無我夢中で最後までやりきったことに負うところが大きいのではなかろうか。さらには後半には少し余裕もでき、当該プロジェクトが生み出したさまざまな価値をナレッジ化しようとするしたたかさも見せているから頭が下がる。とはいえ万博のような大舞台で、このチャレンジングな施策に打って出るというのはリスクを考えれば当然避けて通りたいところだ。しかし、考えてみれば“ハレの日”も日常的に大小さまざま存在する。言い方は悪いが、困難な出来事も逆の見立てでは関係者の関心を一つに束ね、協力体制を促すきっかけとなり得ることは学びとなろう。

能登の災害への取り組みが、企業間コラボも生み出し拡大・継続しているのもそういった環境も関係するのだろう。またスケールを狭めていけば、より日常的なきっかけを発見できるかもしれない。社員が、生活者が困っていることが顕在化したときに、それに対してなにができるのかをみんなで考えていく「社内ご意見箱」なども昨今の社内の取り組みとして採用度は高いという。
さらにはこういった機会体験を社内研修に採用すべきだという声もカンファレンスの各登壇者から共通に上がっていた。確かに定期的・持続的にその体験機会を提供できる研修制度は、上意下達ではなく、社員一人一人の意志に火をともす良き機会となりそうだ。パーパスの社内浸透、社員エンゲージメント強化などを目的にインターナルコミュニケーション施策を提案する筆者にとっても、また良き学びをいただいた気がする。
社会活動への企業の巻き込みは未だ途上、しかしキャズムを超えるときは近い
今回のカンファレンスを通じて感じたのは、優れたアジェンダリーダーが手掛けるプロジェクトの躍動感とその推進力、そして周囲の巻き込み力だ。話を聞くたびにそこに仲間として飛び込みたくなるのはいつものこと。一方で企業がそこに飛び込むには、これまでの意志決定プロセスに縛られ、その一歩を未だ踏み出せない状況にあることも理解した。企業にも意志はあれど、既存ルールが邪魔しており、その制約を乗り越えられるのが個人の強みなのだと痛感したわけだ。しかし落胆はない。ここに紹介したとおり、意志ある個人が粛々と活動を進め、仲間を増やし、今回のテーマでもある企業の巻き込みに肉薄していることは間違いない。あとはその壁の一端がほころび、雪崩のように崩れていくのを待つだけだ。
準備は整った。あとは気にせず、前のめりで行けばいいとエールを送りたい。
【個の意志を組織の力に変えるための6つのポイント】
- 何よりも組織を動かす起点となるのは、個人の「なぜやるのか」という強い意志と、やり切る覚悟。
- 個人の情熱を組織に広げるには、相手の立場に合わせて価値を翻訳し、対話を重ねるプロセスが欠かせない。
- 個人の意思を企業のパーパスや事業価値と結びつけることで、組織として取り組む正当性が生まれる。
- 企業が持つ人材、予算、ネットワークは、個人の意志をより大きな社会的インパクトへと広げる力になる。
- 社員が社会と向き合い、みずから考えて行動する機会が、エンゲージメントや組織力の向上につながる。
- 社会課題への取り組みを持続させるには、社会的意義と経済的価値の両方を描く必要がある。
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著者

井口 理
株式会社 電通PRコンサルティング
執行役員
チーフPRプランナー
データドリブンな企業PR戦略立案から、製品・サービスの戦略PR、動画コンテンツを活用したバイラル施策や自治体PRまで幅広く手掛ける。ニュースメディアやソーシャルメディアで話題になりやすいコンテンツを生み出す「PR IMPAKT」や、メディア間の情報の流れをひもとく「情報流通構造」などを提唱。PR会社で30年超勤務。「世界のPRプロジェクト50選」「Cannes Lions グランプリ」「Asia Pacific Innovator 25」「Gunn Report Top Campaigns 100」など受賞多数。「Cannes Lions」「Spikes Asia」「SABRE Awards Asia-Pacific」「PR Awards Asia」「日本PR協会PRアワードグランプリ」「日経SDGsアイデアコンペティション」など内外アワードの審査員を歴任。著書に「戦略PRの本質―実践のための5つの視点」、共著に「成功17事例で学ぶ 自治体PR戦略」。


