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電通デザイアデザイン(DDD)は消費と欲望の関係から、さまざまなソリューション開発や情報発信を行う組織です。

今回は、DDDが実施している「心が動く消費調査」(調査概要はこちら)を分析。調査結果から得られたインサイトやファインディングスをお伝えします。本記事では、2026年5月に実施した第12回の調査結果に基づき、DDDの千葉貴志が「デジタルデトックスと現実」をテーマに調査の結果を考察します。

「デジタル機器から離れた時間を持ちたい」人は55.0%

「少しでも、スマホに触れない時間を過ごしてみたい」。多くの人が一度は思ったことがあるのではないでしょうか。デジタルデトックスという言葉が浸透しているように、常時接続社会といわれる現代において、「情報を提供するデジタル機器から離れた時間」を持ちたいと思う人は少なくないはずです。

「デジタル機器から離れた時間(デジタルデトックス)を持ちたいか」という問いに対しては、「そう思う(計)」(「そう思う」[18.6%]、「ややそう思う」[36.4%]の合計)が全体の55.0%に上りました。一方、「そう思わない」は12.6%にとどまっています。この結果から、少なくとも、日本人の過半数が「デジタルデトックス」について必要性を感じていることが分かります。


さて、この「デジタルデトックス」について、どういったイメージを皆さんは持たれるでしょうか。デジタルの世界から離れ、現実世界に目を向けることでしょうか。それとも、SNSを中心とした「現実を突きつけてくるコンテンツ」から目を背けたいという、現実逃避のイメージでしょうか。

「現実と向き合うことが怖い」のは若年層に多い傾向

「現実と向き合うのは怖いか」という問いに対しては、全体の47.2%が「そう思う(計)」(「そう思う」[13.0%] 、「ややそう思う」[34.2%]の合計)と回答しました。性年代別に見てみると、この傾向は特に若年層の男女で目立っています。

※構成比(%)は小数点以下第2位で四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%にならない場合があります。


特に15〜19歳の男女はともに「そう思う」が30%を超えており、年代による違いが大きいように見受けられます。他の年代を見てみると、30代から70代にかけて、年齢を重ねるごとに「そう思う」の割合が減っていく傾向となっており、年代との関連がうかがえる結果となっています。

「現実と向き合うのが怖い」という問いに対して「そう思う」層、「そう思わない」層それぞれが持つ、「11の欲望」の違いを見てみると図3のようになりました。

■「11の欲望」について詳しくは、こちらをご覧ください。
・「新しい欲望に、名前をつけてやる。」(ウェブ電通報)
DENTSU DESIRE DESIGN、人間の消費行動に影響を与える「11の欲望」2024年版を発表


全体的に、「現実と向き合うのは怖い」と思っている人の方が11の欲望すべてに対して高いスコアを示す傾向があります。中でも、次の欲望(因子)についてはその差が顕著です。

  • 人から認められたい、優れていると思われたい⇒「承認&優越」
  • 悪目立ちしたくない、はみ出したくない⇒「保身&安全」
  • 遊びたい、好きにお金を使いたい⇒「遊興&解放」
  • 好きなモノを集めたい、好きな事に没頭したい⇒「収集&没頭」

現実への不安が強いからこそ、「誰かに認められたい」「安心できる場所を持ちたい」「何かに没頭して一時的でも解放されたい」といった欲望が強くなるのかもしれません。現実から離れたいという気持ちは、単なる「逃避」というよりも、自分自身の心のバランスを取るための欲望として捉えることもできそうです。

デジタルデトックス欲求と、「現実と向き合う恐怖」に関係はあるのか

では、X軸を「デジタル機器から離れた時間(デジタルデトックス)を持ちたい」(そう思う/そう思わない)、Y軸を「現実と向き合うのは怖い」(そう思う/そう思わない)とした4象限で見てみるとどうでしょうか。


いずれに対しても「そう思う」と答えた「現実怖い×デジタルデトックス意向」層が29.1%、反対にどちらも「そう思わない」と答えた「現実受け入れ×デジタル親和」層が26.9%となりました。

「現実と向き合うのは怖い」けれど「デジタルデトックス」は望まない、「現実怖い×デジタル親和」層は18.1%、「現実と向き合うのは怖くない」が「デジタルデトックス」を望む「純粋デジタルデトックス意向」層は25.9%でした。

この結果からは、「統計的には有意な性質の相関がある」が、「関連はそこまで強くない」ことが読み取れます。つまり、「現実と向き合うのが怖い」と思っている人ほど、「デジタルデトックスをしたい」と考えている傾向は、緩やかながら比較的多数派であるということです。

ただし、ここで重要なのは、そもそも「現実」が何を指すのかは人によって異なる、という点です。

ある人にとっての現実は、家族や友人、仕事といったアナログなリアルの世界かもしれません。一方で、日常的にスマホを通じてSNSに触れる人にとっては、そこで目にする他者の生活や評価、社会の出来事もまた「現実」の一部になっている可能性があります。

そう考えると、デジタルデトックスは必ずしも現実から離れる行為とは限りません。むしろ、スマホの中に流れ込んでくる「見たくない現実」から一時的に距離を置く行為とも捉えられそうです。「現実」の定義そのものが、世代や価値観、デジタルとの関わり方によって変わりつつあることが、この結果を考えるうえで大事な視点です。

全体の中での割合として4象限すべてにそれなりのパーセンテージがあることをふまえて、次のブロックでは、それぞれの違いや共通点を見ていきたいと思います。

デジタルデトックスを求める人々の理由は、一様ではない

4つのタイプについて、いくつかの調査項目から差がみられるものを抽出してみます。


4つのタイプを比較すると、まず目につくのは、「現実と向き合うのが怖い」と感じている2つの層の特徴です。「現実よりもデジタルと向き合う方が心が穏やかでいられる」と答えた割合は、「現実怖い×デジタルデトックス意向」層で51.9%、「現実怖い×デジタル親和」層で52.3%と、いずれも約半数に達しています。

一方、「現実と向き合うのが怖い」と感じていない2層では25%前後にとどまっています。デジタルデトックスを望むかどうか以上に、「現実と向き合うことへの感覚」とデジタル空間における心の平穏に、何らかの関係があるのかもしれません。

一方、「純粋デジタルデトックス意向」層では、「自分は幸せだと思う」が71.5%、「疑似体験だけでなく、リアルな体験を大事にしている」が81.9%、「自分と向き合うための時間を日常生活の中で確保している」も70.4%と、他と比較して高い結果となっています。この結果から見ても、デジタルから距離を置きたいという意識は、前出のとおり「現実への不安」から生まれるものだけではないと言えそうです。リアルな体験や自分自身と向き合う時間を大切にするために、意識的にデジタルとの距離を取ろうとする人もいると考えられます。

同じ「デジタルデトックスをしたい」という意向であっても、「現実と向き合うのが怖い」と感じながらデジタルから離れたい人もいれば、現実への恐怖感は比較的低く、それでもデジタルから離れる時間を求めている人もいます。そう考えると、デジタルデトックスを一律に「現実回帰」あるいは「現実逃避」と捉えるだけでは、消費者の実感を捉えきれないのかもしれません。

以前の記事では、「アナログとデジタルは二項対立ではない」という視点を提示しました。今回の調査から見えてきた「現実」という言葉の受け止め方の違いも、その延長線上にあるように思います。アナログとデジタルの境界が曖昧になっているのと同じように、「何を現実と感じるか」も一様ではなくなっているのではないでしょうか。

デジタルデトックスは「デジタルから離れて現実に戻る」という単純な行為ではなく、複数ある「現実」との距離を、自分なりに整えようとする行為と言えるのかもしれません。

デジタルを扱う企業にとっても、単に自社サービスの利用時間を増やすことだけではなく、生活者が「つながる時間」と「離れる時間」の両方を主体的に選べる設計が、今後より重要になっていく可能性があります。生活者の欲望は、常時接続だけに向かっているのではなく、ときに立ち止まり、現実とデジタルの双方を自分なりに選び取りたいという方向にも動いているように見えます。

【調査概要】
〈第12回「心が動く消費調査」概要〉
・対象エリア:日本全国
・対象者条件:15~74歳男女
・サンプル数:計3000サンプル(15~19歳、20代~60代、70~74歳の7区分、男女2区分の人口構成比に応じて割り付け)
・調 査 手 法:インターネット調査
・調 査 時 期:2026年5月12日(火)~ 5月17日(日)
・調 査 主 体:電通 DENTSU DESIRE DESIGN
・調 査 機 関:電通マクロミルインサイト

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著者

千葉 貴志

千葉 貴志

株式会社 電通

第4マーケティング局

プロデューサー

営業、デジタル、テレビなどの部署を経験した後、電通総研に出向し、社会調査全般を担当して情報空間の健全性を研究。2022年より電通に帰任し、クライアントの未来の企業価値を創発する未来事業創研/消費者研究プロジェクトDENTSU DESIRE DESIGNに所属。未来と欲望を基点に、新規事業から日用品まで業界業種を問わずさまざまなビジネス開発を手がける。慶應義塾大学X Dignityセンター共同研究員。

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