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公開日: 2026/11/06

会社を好きな20代の3人に1人が転職検討!エンゲージメントの限界の先

昨今、電通PRコンサルティングには広報周辺部署からのインターナルブランディングに関する相談が急増している。以前は周年記念として、10年単位のタイミングでなにかやらねばと重い腰を上げる印象が強かったのだが、いまや社内コミュニケーション年間通して行われ、社内コミュニケーションを通じたエンゲージメント強化はトレンドと言える。実際、若手の離職回避のために人事や広報は協働し、年中インターナルコミュニケーションの計画と実行、さらに度々エンゲージメント調査を行い、経年数値とにらめっこしているような状態ではなかろうか。

当社も今年65周年を迎えるが、5年刻みに、対外的に情報発信をするためのイベントや展示、また社内的にもさまざまな趣向で社員間のコミュニケーション施策が計画されている。思い返せば、自社の周年事業としては、30周年のときの社史編纂、時を経て50周年のときのバーチャル空間上での全社員参加イベント、60周年での社名変更など近年はショートタームでなにかしら全社ゴトとなる催しが成されてきている。

そんな中、当社が3年ごとに行ってきた「インターナルブランディング®調査」の第4回の結果が上がってきた。会社へのエンゲージメントと、仕事での活躍実感(本記事では「やれてる感」と表記)、働き続けたい気持ちとの関係の最新傾向について紹介していきたい。

※調査概要はこちら

もはや「新卒採用3年以内」のくくりは無意味?

近年、多くの企業が若手社員の早期離職に頭を悩ませてきたことは間違いない。中でも大学新卒採用から3年以内で退社・転職していく新入社員が3割を超えるという事実(※)は企業にとってはショックであり、恐怖であった。さまざまな施策を行い、人やコストをかけて採用した“人財”が3年たたずに離脱してしまうというのは、担当部署にとってはやるせないことこの上ないだろう。

直近でも新規大卒就職者の3年以内離職率は33.8%(※)と、依然として3人に1人を超える水準にある。企業はここ数年、新卒社員の早期離職対策に注力してきたが、人材流動化が進む現在、その対象は新卒層から20代全体へと広がりつつある。

※令和4年3月卒業、新規学卒就職者における離職状況(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00010.html


これまで企業のリテンション施策は、新卒入社後3年間の定着を主な対象としてきた。しかし、転職が一般的なキャリア選択となった現在、企業が向き合うべき課題は「新卒の離職防止」から「20代人財の継続的な活躍と定着」へと変化しつつある。実際、本調査では会社へのエンゲージメントが高い20代であっても3人に1人が転職を検討していることが明らかになった。

②20代ビジネスパーソンの離職意向比較.png

厚生労働省の調査によれば、新卒就職者の約3人に1人が入社後3年以内に離職している状態は長年続いている。こうした状況を受け、企業の人材戦略は長らく「いかに新卒社員を定着させるか」に重点が置かれてきたのは先述の通りだ。しかし、人材流動化が進み、転職が一般的なキャリア選択肢となった現在、企業が向き合うべき課題は新卒社員だけに限られなくなっている。

むしろ今企業に迫られているのは、20代全体を対象に、なぜ人は会社に残るのか、あるいは会社を去るのかという根本的な問いである。こうした問題意識のもと実施した調査からは、企業のインターナルコミュニケーション施策にとって重要な示唆が見えてきた。

エンゲージメントが高くても、転職は止まらない

人的資本経営の文脈において、従業員エンゲージメントは重要指標として定着しているのは間違いない。会社への愛着や共感、組織への貢献意欲を高めることは、生産性向上や業績向上につながると考えられてきた。実際、中小含めて多くの企業がサーベイ導入や組織開発施策を進めている。そのかいがあってか、今回の調査でも20代のエンゲージメント率は意外に高く、高エンゲージメント層と呼べる層は全体の39.6%に及んだ。

大手のみならず、中小企業においての人材の維持はそれこそ企業存続の生命線でもあり、最重要課題のひとつとも言えよう。実感値として、風通しも良さそうに思えた企業もこういったエンゲージメント調査を行い、その結果を重要視しているように思えた。

③20代ビジネスパーソンのエンゲージメント構成比.png


 しかし、今回の調査で最も注目すべきなのは、20代ではエンゲージメントの高さと転職意向が必ずしも相反しないという事実である。

高いエンゲージメントを示した20代層においても、約3人に1人が転職を検討しているという事実。これはエンゲージメント強化を提案してきた立場として、また自社においてもこの数値をメイン指標としてきた経験値からあまりにショッキングなものだった。しかし、よくよく読み解いてみると、これは決して「会社への愛着がない」という意味ではない。

むしろ現在の20代は、「組織への共感」と「自身のキャリア形成」を別の軸で捉えている可能性がある。企業文化や人間関係には満足していても、自身の成長機会や市場価値の向上を求めて転職を考える。会社が好きだから残る、という従来型の組織と個人の関係性だけでは説明できない状況が生まれているのである。この結果は、企業が取り組むべき課題がエンゲージメント向上だけでは不十分であることを示唆している。

定着を左右するのは「活躍できている」という実感

では、社員は何を根拠に自社で働き続けたいと思うのだろうか。分析から見えてきたのは、「活躍実感=やれてる感」の重要性である。特に継続勤務意向との関連が強かったのは、「自分の強みや能力を発揮できている」という認識だった。

ここで興味深いのは、単なる成果や評価ではない点である。本人が高い評価を得ていても、自らの強みが生かされている感覚がなければ定着意向は高まらない。一方で、自分らしく仕事ができていると感じる社員ほど、同じ会社で働き続けたいと考える傾向が強くなっていた。

従来の人的資本マネジメントでは、「会社への愛着を高めること」が主目的として語られることが多かったが、これからは、「社員がどのように組織の中で自分の価値を発揮できているか」を可視化し、支援していく視点が不可欠になるだろう。言い換えれば、定着の鍵は帰属意識よりも自己実現に近づいているのである。


 「自社らしさ」が見えていると、「やれてる感」も感じやすい

もう一つ特徴的だったのが、企業文化認知と定着意向の関係だ。調査では、「この会社らしさ(=自社文化)」を理解している社員ほど継続勤務意向が強い傾向が確認された。ただし、注目すべきなのは、文化の中身そのものではない。挑戦志向であるか、安定志向であるかといった違いよりも、自社独自の価値観や行動様式が社員に共有されているかどうかが重要なようだ。

組織文化は目に見えにくい。だからこそ、それが明確に言語化され、社員の日常的な行動や意思決定と結びついている組織ほど、働く意味や判断基準が共有されやすいのだ。逆に、自社らしさが見えない組織では、自分が何を期待されているのか、自分の仕事が何に貢献しているのかが曖昧になりやすい。すなわち、「やれてる感」も感じにくいということ。活躍実感と企業文化認知の間にも強い相関が見られたことを考えると、「自社らしさ」を社員に共有することは単なる理念浸透施策ではなく、社員の活躍を支える経営基盤と捉えるべきなのかもしれない。

⑥企業文化の4象限図 (1).png


社内SNSは文化浸透のインフラになりつつある

では、自社らしさはどのように伝えればよいのだろうか。今回の調査では、継続勤務意向の強い20代ほど、社内SNSやアプリを有効な情報接点として評価していた。従来の社内報やトップメッセージは依然として重要であるものの、デジタルネイティブ世代にとっては、日々の業務の中で流通する情報こそが企業文化を理解する手掛かりになっている。一方的な情報伝達ではなく、いわゆるナラティブ的に、それぞれがその社内文化をどう評価しているのか、そういった生の情報がリアルとして受け止められるのだろう。

誰がどのような挑戦をしたのか。どのような価値観が称賛されているのか。部署を越えてどのようなコミュニケーションが行われているのか。社内SNSは単なる情報共有ツールではなく、企業文化そのものを可視化するメディアとして機能し始めている。インターナルコミュニケーションの役割も、情報伝達から文化体験の設計へと拡張していると言えるだろう。


「愛着」から「活躍」へ

今回の調査が示したのは、若手社員の定着を考える際の発想転換である。これまでの企業は、エンゲージメント向上や理念浸透を通じて、会社への愛着を高めることを重視してきた。もちろん、それらの重要性は変わらない。しかし、20代の3人に1人が高いエンゲージメントを持ちながら転職を考えているという事実は、それだけでは不十分であることを示している。

社員がこの会社で能力を発揮できていると感じられること。自社らしさを理解し、自身のキャリアとの接続を描けること。そして、その実感を日常的なコミュニケーションの中で育んでいくこと。インターナルコミュニケーションに求められる役割は、「会社を好きになってもらうこと」から、「この会社で活躍し続けたいと思える状態をつくること」へと移り始めているのではないだろうか。

【調査概要】
調査名:インターナルブランディング®調査2026
調査主体:企業広報戦略研究所(所長:阪井完二、株式会社電通PRコンサルティング内)
調査手法:インターネット調査
調査時期:2026年5月15日〜21日
調査エリア:全国
調査対象:従業員300人以上の株式会社に勤める20~60代
有効回答サンプル数:2000サンプル+追加調査20代1000サンプル

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著者

井口 理

井口 理

株式会社 電通PRコンサルティング

執行役員

チーフPRプランナー

データドリブンな企業PR戦略立案から、製品・サービスの戦略PR、動画コンテンツを活用したバイラル施策や自治体PRまで幅広く手掛ける。ニュースメディアやソーシャルメディアで話題になりやすいコンテンツを生み出す「PR IMPAKT」や、メディア間の情報の流れをひもとく「情報流通構造」などを提唱。PR会社で30年超勤務。「世界のPRプロジェクト50選」「Cannes Lions グランプリ」「Asia Pacific Innovator 25」「Gunn Report Top Campaigns 100」など受賞多数。「Cannes Lions」「Spikes Asia」「SABRE Awards Asia-Pacific」「PR Awards Asia」「日本PR協会PRアワードグランプリ」「日経SDGsアイデアコンペティション」など内外アワードの審査員を歴任。著書に「戦略PRの本質―実践のための5つの視点」、共著に「成功17事例で学ぶ 自治体PR戦略」。

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