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【続】ろーかる・ぐるぐるNo.36

心にこびとを住ませよう

2014/07/24

大学時代、最も記憶に残っているのが竹内弘高先生(現・ハーバード大学経営大学院教授)の講義です。初回に顔写真入りの自己紹介ペーパーを提出するのですが、二回目からは先生が100名近くの学生全員の名前を記憶していらっしゃるので授業中は全て名指し。「高木くんの意見は?」「江原くんはどう?」「山田くんは…」。とにかく緊張感があって刺激的な時間でした。

明治学院の学生さん


縁あって明治学院大学で経営学特殊講義を担当して3年目。マネをしてみんなの名前を覚えているのですが、これがもう本当に大変で。写真は黒髪なのに実物は金髪だったり、なぜか集合写真が提出されてどれが当人だか分からなかったり。あらためて竹内先生のすごさを実感しています。
一方、しなやかで正直な学生に触れられることは大きな役得です。顔と顔を合わせてコミュニケーションすることで、ぼくの心の中に住む若者の「こびと」が老けてしまわないようメンテナンスすることができます。


アイデアづくりの前半(ぐるぐる思考でいえば感じるモード&散らかすモード)は身体的な思考が要求されます。理性的に客観的に分析するのではなく、自分ゴトとして肉体的な感覚やインスピレーションまでを総動員します。
そのためには目の前の現実を己の肉体にすっぽり取り込み、そのミニチュアの世界の中で、ターゲット役のこびと相手に「こうしたら買う?」「どうして買わない?」などと試行錯誤を繰り返すことが有効です。
心の中のこびとたちが実際のターゲットと同じような思考や感性を持っていれば、おのずと思考の精度も上がります。電通の先輩は「アイディアとは人間理解の仕方のこと」とおっしゃっていました。無味乾燥な統計データを乗り越えるためには、できるだけ多くの人に出会い、語り合い、生々しく経験して、多様なこびとを確保しなければなりません。

 

大学の講義が終わると、たまに都合のよいメンバーでご飯に行きます。「沖縄出身のTさんは、まだ東京のペースに慣れていない」「聴講生のIくんは昔アイドルを目指してプロダクションに所属していた」「Oくんは法律で許されるありとあらゆるギャンブルを制覇しようとしている」「イケメンのAくんはコンタクトにした方がいい」「いや、メガネの方が萌える」「Nくんが今まで彼女がいたことない、なんてウソだぁ」「Nくん、ホントは遊び人?」とか、ひたすらくだらない会話で盛り上がります。
「なるほどイマドキの大学生は○○だ」という明確な発見などめったにありませんが、ぼくの中に住む若者のこびとの鮮度は確実に上がります(と同時に、きっと学生の中に住む「中年オヤジ」のこびともバージョンアップ?ダウン?していることでしょう)。

さて。次回は江戸時代の名君、上杉鷹山に関する食べもののお話です。

今週見つけた旨いもの:北海道仁木町のグースベリー

 

どうぞ召し上がれ!