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【続】ろーかる・ぐるぐるNo.38

自走するネーミング

2014/08/21

スイカ丸
尾花沢のスイカ
 

暑い日が続きますが、そうなると、がぜん旨くなるのがスイカ。汗をダラダラ流しながら、しっかり冷やしたのをガブガブするのが最高です。
尾花沢スイカ(山形県)はシャリシャリした食感と、皮ギリギリのところまで甘いのが特徴。最近カットスイカに慣れていたので久々の「一玉」は腰が抜けるほど重たく感じましたが、エッチラオッチラ運ぶことすら幸せでした。
尾花沢スイカが美味しい最大の理由は、昼間は40度近くなのに夜は涼しくなる一日の寒暖差にあります。太陽が昇っているときは活発に光合成をして養分をつくるものの、日が沈むと活動量が低下してそれを使うことなく糖分としてためていくのだそうです。一瞬「砂糖がかかっているのかしら?」と勘違いするほどの甘さです。
そしてもうひとつの理由は和牛畜産から生まれる極上の堆肥をふんだんに使っていることです。地域に密着した循環型の農業によって作物が元気よく育つのでしょう。

スイカカット
尾花沢のスイカ(カット)
 

このスイカを美味しくする和牛こそ、以前ご紹介した「雪降り和牛 尾花沢」です。そしてもうずいぶん前になりますが、この名称はぼくが付けました。
正直、ネーミングは難しく、何が正解なのかよく分かりません。ただ①覚えやすいこと、②名が体を表していること(少なくとも「全然違うじゃん」にはしないこと)は大切です。と同時に、できればネーミング自体にちょっと話題になるスキがある方が良いのかな、と考えています。
「雪降り和牛(ゆきふりわぎゅう)」は尾花沢市が日本三雪(三大豪雪地帯)のひとつに数えられ、その雪のチカラで肉質が良くなっていることに由来しています。でもふつう、人は文字の並びをなんとなくビジュアル全体で認識するため「霜降り和牛(しもふりわぎゅう)」と誤読されるリスクがあることも分かっていました。そしてそれをどう判断するかがひとつの悩みどころでした。
先日、尾花沢市の方が「初めて紹介すると何割かの方が“しもふり”とお読みになります。でも、それをきっかけに『いえいえ、“ゆきふり”なんですよ。なぜなら…』ってやると、けっこう話が弾むんです」とお話しくださいました。銀座にある取扱店でも同じようなことを耳にします。もちろん最初から正しく読んで、正しく覚えていただくのが一番なのですが、コミュニケーションのきっかけを提供するネーミングというやり方もあるのだと確認しました。

天国のぶた
 

「玉子屋やまたか(群馬)」が販売する濃厚プリンの「天国のぶた」というネーミングは、そのレシピのベースとなったスペイン・アンダルシア地方の伝統菓子「TOCINO DE CIELO(トシーノ・デ・シエロ)」に由来しています。スペイン語でCIELOは天国、TOCINOは豚・豚肉・ベーコンを意味します。その訳をまんまネーミングにしたのですが「プリンといえばニワトリでしょう?」という意見もありました。しかし生活者自らが「なぜ、ぶた(笑)」といったような興味を示してくださるのはとても貴重なことです。それこそ「TOCINO DE CIELO」のエピソードをご紹介するチャンス。あくまで「②名が体を表していること」とのバランスですが、あまり四角四面に正しさを追求しなくてよかったです。

結局、商品のネーミングを単独で論じても意味はなく、カテゴリーやパッケージデザイン、売り方などと総合的に考えなければならないのでしょうが、広告投資をする余力がない商品はもちろん、大型のキャンペーンが期待できるような場合でも、改めて「ネーミング」そのものの情報発信力について考える余地はありそうです。

そうそう。尾花沢で見つけた「雪山ぶどうワイン」。味も香りも濃密で、ワイン通の方がどうおっしゃるのかはさておき「分かりやすく旨い!」です。せっかくなので雪降り和牛 尾花沢の切り落としをサッと炒めて一緒に食せば、嗚呼贅沢。冬の厳しさが育てた夏の幸を堪能できます。

雪山ぶどうワイン
雪山ぶどうワイン
 

さて、次回は企業のビジョンについてです。

どうぞ召し上がれ!