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通販王国発! マーケティング新発見!No.7

通販的コミュニケーションデザイン論②

2015/01/26

 

通販王国、九州へようこそ!
前回に引き続き、最終回となる今回も通販における
コミュニケーションデザインについてお話しします。
さて今回のテーマは、「ダイレクトマーケティングの購買心理を俯瞰する!」です。

■“直線的で短い”通販の購買心理プロセス

デジタルはじめクロスメディアの浸透により、コンタクトポイントマネジメントの重要性が高まっていますが、中高年層を消費ターゲットとする通販業界においては、「(電話が)何件鳴った?」という、媒体とレスポンスデバイスが直結した、短い購買プロセスがまだ多数を占めています。通販マーケティングにおける成功の鉄則は、この短く直線的なプロセスにおいて重要な心理変容ポイントを押さえることです。そこで今回はその購買心理を、購入前から使用後までの一連のサイクルとして、改めて整理してみましょう。

本リレーコラムの中で、弊社の香月が購買モデル「AIDMA」のパロディーとして、ドバドバと情報を注ぐことを狙いとした「AIDBA」なるモデルを紹介させていただきました。言葉遊びから生まれたこのモデルですが、実は、情報を注いであふれさせるという心理変容は、ロジカルに捉えても「AIDBA」という頭文字で表現することができます。

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3つのフェーズに集約される“通販の購買心理変容モデル”

まずは広告にしっかり接触させ、購買欲求を喚起し、そして最終的には商品を手に取ってもらう。さらに使用してもらうことにより、商品価値を実感してもらい再購入につなげる、という購買心理変容モデルです。言うなれば「AIDBA」モデルに“R”(Reality)を加えた「AID-BAR」モデル。6つのポイントに分かれますが、重要な事象は大きく3つのフェーズに集約されます。ではそれぞれのフェーズについてのポイントをまとめます。

■その1.しっかり認知・理解させることができていますか?
   
認知+理解フェーズ
  ~キーワードは、「リーチ+アテンション・パワー」~

さてその中でまず大事なことは、「広告メッセージをしっかり届ける」ことです。…と当たり前すぎて大変申し訳ございません。ですがオフライン・オンライン問わずこのフェーズでつまずいているケースが多いのです。プランニング担当者としては、
  1. .単にリーチや接触すればよいというものではなく、視認性を(効率的に)高めること
  2. .ターゲットを中心に訴求力のある/共感説得できるメッセージデリバリーを意識すること

に他なりません。この2つの要素を併せた「リーチ+アテンション・パワー」がカギとなるのです。様々な媒体ごとに特徴を生かしたプランニングが必要になりますが、特にaについては、テレビなどオフライン媒体には詳報性や双方向性はない一方で強力なアテンション力があります。またテレビにおける詳報性がない弱点をカバーするのがインフォマーシャルと呼ばれる長尺型のCMです。つまり、気づきから購買喚起→購買行動まで一気通貫型の展開が可能となります。逆にインターネット/デジタル媒体においては、検索連動広告を中心に獲得効率が非常に良い一方で、アテンション力を持った購買導線への流れがいまだ明確になっていない印象があります。広告コンテンツの配置のし方においても改善が進んでいますので、今後は“気づき”と“興味喚起”を両立する媒体への進化が続くことでしょう。このコンテンツ配置についてですが、配信方法が異なる2つのケースを見てみましょう。

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上の図において、新聞やウェブ広告などの場合、情報コンテンツの側面に広告コンテンツが配置されるため、広告注目率が下がります(=固定配置型)。そのため結果的に到達コストは上昇します。テレビの場合は情報コンテンツと広告コンテンツが交互に露出する(=インターバル型)ことと、視聴者もそれを当たり前のものとして情報を受容するため、広告注目率が効率的に高まります。テレビの媒体パワーの根源がここにあるわけです。どのような媒体でも、まず消費者にコンテンツを受容する気になってもらう必要があります。視認性を高くすることで到達だけではなく、しっかり理解してもらうためのコミュニケーションデザインが必要となります。

■その2.買いたくなる気持ちを最大化させる。
   
欲求-抑制(障壁)フェーズ
  ~購買欲求を高め、かつ買わなくてもよい気持ちを低減化する~

次は、商品理解が一定量進み、購買検討行動へ移るフェーズです。ここでのポイントは、コップをあふれさせるためニーズを満たそうとしても、それをも上回るコップの壁があれば、なかなか売り上げに結びつきません。あふれさせる量を増やすには、このコップの壁(敷居)を低くすることも打ち手の一つです。公式にすると、

「あふれる量」「注いだニーズ」「買わなくてもよいという壁」

 

となります。事例をみてみましょう。10万円のパーソナルコンピューターを購入検討している場合の購買心理として、例えば…

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上記のように買いたい気持ちはかき立てられているのですが、現状でも満足していないわけではないため、結局は購入を控えてしまうことが圧倒的に多いのです。この場合、買いたい気持ちが買わなくてもよい気持ちを凌駕できていないのです。当たり前ですが“あふれさせる”ためには、①買いたい気持ちを増幅させ②買わなくてもよい気持ちを抑制する。それによって販促効果を大幅にアップさせることができます。
例えばこのようにしてあふれさせる工夫をします。

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買いたい気持ちの増幅については、機能的便益ではなく情緒的便益が有効の場合が多いです。流行や世間体などを気にすることは、心理学の世界では「バンドワゴン効果」と呼ぶそうですが、えてして行動心理に基づいていることを押さえておきましょう。
買わなくてもよい気持ちの敷居を下げる工夫としては、「今、買わなきゃ!」といったあおりに反応する心理行動です。ちょっとした損得勘定が購買心理に影響を与えるという「プロスペクト理論」がこれに当たります。このようにちょっとした「お得」、限られた「お得」によって、買わなくてもよいという壁は、見事に崩壊するのです。

■その3.通販ビジネスの要諦。いかに商品を愛していただくか?
    購買+実感フェーズ
  ~商品・広告に対し、共感から実感に変わるとき、お客さまとの絆が生まれる~

3つめは、広告接触時では共感レベルであったものが商品購買・使用時において実感に変わる瞬間。これが顧客関係の絆を強化するKPI(重要業績の評価指標)だと思います。もちろん企業自身を信頼しているという企業ブランドが商品購入を促すことも多いのですが、商品自身を愛してもらうために一番効力があるのは、使用体験によるポジティブな実感が一番です。さきほどの“買わなくもてよい気持ち”の敷居を下げる工夫としての“あおり(オファー)”が定期購入を阻む両刃の剣となってしまうケースがあります。ですから買いたい気持ちにしっかり応えることができる使用体験=商品価値の発揮による満足度の向上が大事です。通販各社のトップの方々もよく「お客さまに喜んでもらうことが何より大事」とおっしゃいます。「売り上げはその結果である」と。それはきれい事ではなく、妙を得た真理です。

いかにお客さまに喜んでいただくか?

お客さまへの販促施策をあれこれ考える際の一番大事な根幹について。シンプルにそして本質的なアイデアを結集しPDCAを回すことで顧客とよりよい関係が築けます。事例として水産業を営んでいる企業が魚を原料とした健康食品を販売しているのですが、定期購入客に対し、自社で漁獲した鮮魚を定期的に送っているそうです。顧客に大変好評とのことで、お客さまにとって意味のある、または合点のいくサプライズギフト制度を導入することで顧客との関係をうまく構築できている好例です。

■最後に

さて、2回に分けて、「ダイレクトマーケティングの購買心理の俯瞰」についてご紹介しました。
ただ、概念や理論だけではコトが進みません。ぐるぐるの試行錯誤が何より大事です。これは取り組みと振り返りの数だけ発見があるはずです。まさに皆さんお一人お一人のPDCA業務の中に、本質的で有意義な多くの発見があります。

最後に。九州が「通販王国」と称されるゆえんがあります。
それは何か?
学びの共有です。

販促施策における勉強の場を様々な通販各社や関連する業界の皆さんで共有しています。この切磋琢磨する関係こそ、王国のゆえんだと感じます。
とはいえ、横並び意識が低く、個性を発揮している企業が少なくないことも特筆すべき点です。
以上、香月を含め、全7回のコラムを担当させていただきました。お読みいただいた方々、どうもありがとうございました。