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「伊勢志摩サミットで未来をひらけ!集会in東京」開く

2015/12/03

    2016年の主要国首脳会議は、日本が6回目の議長国となり5月26、27日に「伊勢志摩サミット」として三重県で開催される。

    これに向けて機運を高めるため、読売新聞社と内閣官房の共催で「伊勢志摩サミットで未来をひらけ!集会in東京」が11月27日、千代田区のベルサール飯田橋駅前で開かれた。同集会は、読売新聞社の創刊140周年を記念した「未来貢献プロジェクト」の一環として、今後も場所を変え、計3 回を予定している。

    参加者は熱心に識者らのパネルディスカッションに聞き入った
    参加者は熱心に識者らのパネルディスカッションに聞き入った
     

    同イベントではまず、25分間の映像「未来をひらけ!伊勢志摩サミット」を上映。これまで日本で開催された5回のサミットを振り返り、当時の時勢をなぞりながら、「エネルギー」「市場開放」「環境」「IT技術」の各課題を解説した。

    続いて「サミットの歩みを振り返る~伊勢志摩サミットに向け、いま何に取り組むべきか。~」と題したパネルディスカッションを行った。コーディネーターをフランス文学者・小説家・慶應義塾大学文学部教授の荻野アンナ氏が務め、ジャーナリストで元NHK解説委員の嶋津八生氏、国立環境研究所気候変動リスク評価研究室の江守正多氏、農事組合法人和郷園代表理事の木内博一氏、東京工科大学コンピュータサイエンス学部教授の手塚悟氏が登壇。それぞれの専門分野に関わるテーマに対し、これまでの日本の取り組みと、現在に続く課題を熱く語り合った。

    荻野氏
    荻野氏

    パネルディスカッションでは各氏が日本のエネルギー政策について言及。嶋津氏が分かりやすく歴史を解説した。

    第1次・第2次石油危機を経て開催された1979年の東京サミットでは、先進国の原油輸入量の上限目標が定められ「脱石油」が課題になった。当時、石油社会であった日本はエネルギーの大転換を迫られ、産業界から一般家庭まで省エネに取り組んだ。結果、日本の産業の競争力強化にもつながった。

    90年代からは地球温暖化が深刻になり、CO2排出量を減らすことが国際的な課題に。1997年のCOP3で取り交わされた京都議定書では、日本は2008年から2012年の間に温室効果ガスの排出量を基準年の1990年から6%削減することが求められた。

    嶋津氏
    嶋津氏

    CO2排出量について江守氏は、2007年に安倍首相が提案した、世界のCO2排出量を2050年までに半減する長期目標「美しい星50」(クールアース50)宣言を強調した。また、2010年のCOP16では、世界全体の気温の上昇を工業化以前の平均気温から2度未満に抑える目標が掲げられ、11月30日に仏・パリで開幕したCOP21では、合意文書に盛り込むことを目指している。

    江守氏は「地球温暖化を止めるためには、今世紀中に世界のCO2排 出量をほぼゼロにしなければいけない計算。エネルギーの使い方と同時に作り方を変えていかなければならない。再生可能エネルギーを増やすこと、更に省エネ を推し進めること、また、化石燃料を燃やす際にはCCSというCO2を地中などに封じ込める技術を使うことなどが求められる」と訴えた。

    江守氏
    江守氏

    嶋津氏も「2100年に向けて人類がCO2を出さない社会をつくらねばならないが、現状は難しい。特に日本では東日本大震災後のエネルギー状況もあり、 もっ と飛躍的な技術革新や進化した再生可能エネルギーが出てこないとCO2削減モードには入らないのではないか」とイノベーションの必要性を述べた。

    手塚氏は、IT技術がエネルギー・環境問題の解決に貢献できることを紹介。環境負荷を抑えながら経済成長を継続する新しい都市の姿「スマートシティ」「スマートコミュニティ」では、ネットワーク上で各家庭の電力の使用状況の把握・コントロールができるようになり、CO2の削減につながる。「2000年の九州・沖縄サミットでITがテーマになった際に、グローバルな情報『社会』というキーワードがあった。つまり、ITは単なる技術ではなく社会を形づくるもの。うまく使うも使わないも私たち次第で、基本はまずIT技術を『知っている』ことだが、『デジタルデバイド』と呼ばれる国や世代間での情報格差が、2000年にもすでに議題になった」と展望と課題を述べた。

    手塚氏
    手塚氏

    木内氏は、「市場開放」の観点から日本の農業を語った。人が手間を加えなくても春に芽を出し、夏に茂り、秋に実を付け、冬に枯れ、枯れたものが栄養になって春に芽を出す「四季」と、きれいな水が日本の強みだと説明。「日本の食は素晴らしいと世界で言われている。そのニーズを捉え、他産業と連携して、生産からサービスまで世界に提供していく攻めの農業・食産業の元年になってほしい」と伊勢志摩サミットへの期待を述べた。

    木内氏
    木内氏

    次回は「伊勢志摩サミットで未来をひらけ!集会in神戸」が12月18日、神戸市産業振興センターで開かれる予定。無料で参加者を募集している(12月11日18時まで)。参加申し込みはこちら

    1月14日には横浜で開催を予定。随時「未来貢献プロジェクト」ウェブサイトで、告知・募集を行っていく。