loading...

電通報ビジネスにもっとアイデアを。

セカイメガネNo.42

嵐の後に、虹をかける

2016/02/17

僕の名前はジョーイ。虹を創るお手伝いをしている。アスパックでクリエーティブのトップを務める傍ら、フィリピンのタクロバンで心に傷を負った子どもたちが喜びを見つけられるように活動を続けている。読者の皆さんもご存じの通り、2013年11月、フィリピンは観測史上例を見ない強さの台風30号に襲われた。最大瞬間風速102.7メートル。「ハリケーン・カトリーナとサンディを合わせたより強い」とCNNは報道した。

多くの子どもたちが精神的痛手を受け、孤児になり、絶望的な状況に置かれた。この大きな課題に立ち向かうとき僕が頼りにしたのはクリエーティビティー、そして子どもたちが内に秘めた楽観的な強さだ。

レイテ島北東部の港町、空の玄関タクロバンを台風が破壊し尽くした後、できる限り早く現地を訪れよ
うとした。嵐から100日が過ぎたころ、ようやく実現した。惨状を目の当たりにして心が折れそうになったが、僕には考えがあった。とても前向きなアイデアだ。その話を皆さんにしよう。

僕のキャリアのスタートはアート職だ。だから絵もスケッチも描く。子どもたちに絵を描く基本も教えている。僕はどうしても知りたかった。子どもたちが自分の目で何を見たか、あの絶望的な状況の中で。カメラマンの友人に頼んで被災地のモノクロ写真を手に入れた。その写真を引き伸ばし、タクロバンを再び訪れた。子どもたちにクレヨンを渡し、白と黒の写真の上に何を描くか観察するのが僕のアイデアだ。

どこもかしこも壊れた街の写真に子どもたちが描いたのは、虹だった。雲だった。青空だった。子どもたちが自分の中に持つ、生きることを肯定する力が僕の心を開いた。人生で最も価値ある体験、時間だった。

子どもたちが写真に描いた絵をムダにしてなるものか。その絵を一枚一枚額装し展示した。クライアントを招き、クリスマスにオークションを催した。収益はタクロバンの子どもたちに持ち帰った。この小さな出来事は、クリエーティビティーが人生を肯定する力と結び付いたとき、類を見ない力を発揮することを証明してくれた。その思いは日々生きる信念の言葉になった。嵐の後に虹を創り、虹をかける。いつだって。どんな嵐の後でも。職業人生、個人の人生を両方使って、僕は虹を創り出す。

(監修:電通 グローバル・ビジネス・センター)

セカイメガネ
セカイメガネ
(写真下:教壇に立つ筆者と子供たち)