ツボをおさえる「目」のつけどころNo.4
高齢者の「ポジティブ化」
爺-POP
2016/06/10
多岐にわたる地域の課題解決に向けて、今、多様な取り組みが各地で展開されています。 的確な課題抽出と、独自の着眼点から繰り出す卓越した打ち手からは、さまざまなヒントが見えてきます。キーパーソンへのインタビューとともに事例を紹介します。
高知県
黒潮が数々の海の恵みをもたらす土佐湾、「日本最後の清流」といわれる四万十川、日本一の森林率84%を誇る森林資源。海と陸の豊かな恵みにあふれる高知県は、一方で県民の高齢化率が全国第2位、全国平均に比べても10年先行するという課題を抱えている。ところが県は、常識を覆す視点と手段で高齢化問題に光を当てている。それは…。
高齢者の「ポジティブ化」
爺-POP
「全国第2位の高齢化率は、ワースト2じゃなくてベスト2じゃないのか、との問題意識がスタートでした」と語る小笠原氏。「年取ったことの何が悪いのか。高齢になるまで元気でいるということですよね」。この鮮やかな“逆転の発想”を具現化する表現手法が、また振るっていた。平均年齢67.2歳の5人組が歌って踊るアイドルグループ「爺-POP」。今年2月26日に鮮烈にデビュー。「3人に1人は65歳以上」と同県の現実も軽やかに歌詞に織り込み、「だけど陽気陽気エブリバディ陽気」とゴキゲンに歌い踊るプロモーションビデオは、県内のみならず、ネットやテレビで全国に爆発的に拡散した。
こんな施策が登場したのには、背景がある。2013年から展開が続いている「高知家」プロモーション。まるで一つの家族のような県民性を打ち出し、さまざまな成果を挙げてきた。15年は実在の県民を主人公としてスポットライトを当てていく企画「高知家ALL STARS」が展開された。その中から生まれたのがこの爺-POPだった。
「県外の方々に対しても、トリガーになればいいと思うんです。『明るく元気な高知県』に興味を持ってもらうことが大事。そうすればあとは人はネットなどで調べてくれる。こうした行動が、高知県への観光や移住といったアクションにつながる扉になる」と小笠原氏。今後も、次々と続く展開が企画されているとのこと。「課題解決の先進県」というワードを標ぼうしている高知県が、現代生活者のメディア行動実態を読み込んで展開する施策からは、しばし目が離せそうもない。