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ツボをおさえる「目」のつけどころNo.2

「水」への恩返し
Carrying Water Project

2016/05/27

多岐にわたる地域の課題解決に向けて、今、多様な取り組みが各地で展開されています。 的確な課題抽出と、独自の着眼点から繰り出す卓越した打ち手からは、さまざまなヒントが見えてきます。キーパーソンへのインタビューとともに事例を紹介します。


福井県 大野市

 

大野市は高い山々が連なる福井県東部に位置する。越前大野城の東に基盤目状に広がる城下町は、戦国時代を起源としている。現在、大野市の人口は約3万5000人で、減少数は県内自治体の中で2番目の多さという課題を抱える。古くから「清水(しょうず)」と呼ばれる湧水を飲み水や生活用水として利用し、水を使った食品加工業も盛んに行われてきた大野市。その人口減少対策とは…。

シンボルキャラクター「みずのめぐみん」。名前は市内の小中学生の公募で決定した
「Carrying Water Project」のシンボルキャラクター「みずのめぐみん」。名前は市内の小中学生の公募で決定した

「水」への恩返し

Carrying Water Project

(左から)結の故郷推進室室長 吉田克弥氏、湧水再生対策室長 帰山寿章氏、湧水再生対策室企画主査 荒矢大輔氏
(左から)結の故郷推進室室長 吉田克弥氏、湧水再生対策室長 帰山寿章氏、湧水再生対策室企画主査 荒矢大輔氏

2015年5月、大野市は人口減少対策の一つとして「Carrying Water Project」(CWP)を始動した。キャッチフレーズは「水への恩返し」。大野の豊かな「水の恵み」を発信し、水のまちとして国内外からの評価を高めることで市民の気付きと自信につなげ、さらには水関連の新たな産業創出や人材育成、企業誘致、人口流入を図っていく。中・長期的な足腰をつくっていく活動だ。

これまでに、マラソン大会など市内イベント、ミラノ万博会場でのPR活動、タウンミーティング開催、市内の小中学生を対象にしたシンボルキャラクターの名称公募など地道に啓発活動を展開してきた。今年1月には事業を推進する「水への恩返し財団」を設立。また、水環境に恵まれない東ティモールを支援するため日本ユニセフ協会とパートナーシップ協定を締結した。

活動開始から約1年、市民にもCWPへの理解が進んできているという。「例えば、市内の喫茶店で東ティモール産の豆と大野の水を使用したコーヒーを提供するなど、“水を誇る”市民の自発的な動きも生まれてきました」と荒矢氏は手応えを語る。

実は大野市が「水」の施策を打つのはCWPが初めてではない。「これまでの活動があったからこそのCWP」と帰山氏は力を込める。1970年代には井戸枯れの危機があり、市民と共に地下水保全に取り組んできたのだ。ただ、高齢者は井戸枯れの危機を覚えているが、若い層の水への意識はやや希薄な面もあるそうだ。「市民の『当たり前』の意識が『ありがたい』に変わらなければ大野は変われません」と吉田氏。水への自信と誇りに大野の未来が懸かる。

日本ユニセフ協会とのパートナーシップ協定調印式。岡田高大市長(左から3人目)、赤松良子日本ユニセフ協会会長、在日東ティモール大使館代表者らが出席した。
日本ユニセフ協会とのパートナーシップ協定調印式。岡田高大市長(左から3人目)、赤松良子日本ユニセフ協会会長、在日東ティモール大使館代表者らが出席した