CES Asiaに行ってみたNo.2
未来の市場に向けてプレゼンスを宣言
2016/06/09
前回に引き続き、「CES Asia」を視察した電通人の視点からリポートを紹介する。
グローバル・ビジネス・センターの内藤です。今年で2回目となった電通イージス・ネットワーク(DAN)傘下DAN Chinaの出展をサポートした立場からリポートします。
元々は家電の展示会として始まったCESですが、やはり特にドローンや自動車、VRなどの展示が目立っており、「次の産業」のマーケット・ポテンシャルを測る場としてCESが活用されていることを示していました。アリババやファーウェイなど中国の大手テクノロジー企業や、メルセデス・ベンツ、BMWなど欧州の大手自動車メーカーが大々的な展示を誇る一方で、実は大多数の参加企業は日本ではなじみのないベンチャーに近いところばかり。例えばドローンだけでも数十社、それぞれの違いは私にはほとんど分かりませんでした。まだ構想段階で、実演が追い付いていないところもありました。
ホールを周回し終えた私の頭をよぎったのは、中国市場ではまず「手を挙げること」が重要なのではないか、ということです。潮流となりつつあるVRやドローンなどの次世代テクノロジーですが、中国を含めてほとんどの国では市場は今のところ未開拓。ただ、膨大な人口と急激な経済発展で急成長してきた中国では、何かきっかけがあれば一気に市場は開かれ、その時その場にいなければ後から入り込むのは実質不可能です。特に中国は、海外の普及例を即座に導入する「タイムマシン経営」の成功事例が多い国の一つ。本家CESで話題を集めた領域に各社が積極的に興味を示すのは不思議ではありません。そして、広告会社も同様に、まず「手を挙げる」ことが非常に重要なのではないでしょうか。
CES Asiaは、DAN Chinaが未来の市場に向けてプレゼンスを宣言する場として最適だったと感じています。山岸紀寛DAN China CEOはオープニングセレモニーで「クライアントのビジネスを成功に導くためには生活者をつかむことが重要で、そのためにイノベーションへの取り組みは欠かせない」と出展の狙いを語っています。昨年の盛況ぶりを踏まえて面積を3倍に拡大したブースには、電通本社からの4点を含む、計12点のプロダクトが展示され、3日間で7800人がブースに来場。あらためて中国のイノベーション領域への関心の高さを目の当たりにしました。
以下、今回の展示を日本からの出品を中心に紹介します。(かっこ内は出展者)
RoBoHoN(シャープ、電通)
シャープが2016年4月に国内で発表したモバイル型ロボット電話。近い将来の中国展開を見据え、CES Asiaでもお披露目されました。ロボットによる学習能力、コミュニケーションの多様さなどから、電話の新たな進化を予感させた他にも、その愛くるしい姿から多くの来場者を魅了しました。
Pace Sync(電通、旭化成)
旭化成で開発された非接触の脈波検出技術を元に作られたこのアプリは、スマートフォンのカメラを通じて顔を撮るだけで心拍数を測定し、いつでもどこでもリラックスすることができるというもの。アプリの有用性だけではなく、その技術の汎用性の高さに多くの業種から関心を集めました。
Smile Explorer(電通)
世界最大のクリエーティブ・ビジネス・フェスティバルSXSW(サウスバイサウスウエスト)に続いての出展となったSmile Explorerは、毎日のお出掛けの中で赤ちゃんの笑顔を自動的に撮影し、位置情報と共に記録ができる次世代コミュニケーション・ベビーカー。特に家族の絆が強い中国においては、赤ちゃん向けのプロダクトの出展が多数見られ、Smile Explorerのブースでもさまざまな質問が飛び交いました。
TABO(dmLab、touch.plus)
iPadのタッチスクリーン上を動くロボット、TABO。iPadと連動し、自分で考えて動きます。来場者はブースでゲームの勝負をし、小さいながらも存在感を発揮。今後のロボットの多様化を予感させました。dmLabは、電通の海外メディアネットワークDentsu Mediaが15年10月に立ち上げたイノベーション・ラボ。
上記以外でも、脳波を活用した独自のVR機器BVRAIN(Isobar Nowlab上海)、ユニクロのキャンペーンで活用された脳波でお客さまが欲しいTシャツが分かるUMOOD(Isobar Australia)とニューロ領域への取り組みの強さをアピールする展示や、紙に電子回路を印刷するICPAPER(Carat)や180度壁一面に映されたスクリーンをモーションジェスチャーで動かすCAVE(Carat・D2C China)、スポーツにまつわるさまざまなデータや映像を記録ができるSmart Arena(Amplifi・Smart Arena・Zepp)、画像認識技術とアナログディスプレーを組み合わせたFlip Dots(電通・IMG SRC)、Twitterに特定のハッシュタグを付けて投稿をするとバーの時計を“ハッピーアワー”まで巻き戻すHappy Hours Rewind(Dentsu Webchutney)などの新しい広告表現を狙った展示、さらにはバーチャル姉妹アイドル8911(電通テック・Beetle)など、日本をベースにした電通ならではの展示だったと思います。
次回はSmile Explorerを手掛ける電通の眞貝維摩氏が、出展者の視点からリポートします。