電通デジタル、設立発表会でデジタルマーケティングセミナー開催
2016/07/12
電通は7月1日、デジタルマーケティング専門の新会社「電通デジタル」を設立。8日には港区のザ・プリンス パークタワー東京で、設立発表会と設立記念デジタルマーケティングセミナーを開催した。
電通の石井社長は冒頭、「電通デジタルの設立を発表した後、さまざまなご意見を頂き、中には『遅過ぎるのではないか』という話もありました。私ももう少し早くつくりたいと思っていましたが、その分さまざまな検証をすることができ、設立したこのタイミングからすぐに実践的なサービスを提供できる集団であると確信しています」とあいさつ。「電通グループは百数十カ国のネットワークを持っていますが、その仕事量の60%近くがデジタルです。こうした海外のネットワークも含め、グループ一体となって皆さまのビジネスの成長、成功にコミットできるパートナーとして選んでいただけるよう変革、挑戦を続けてまいります」と述べた。
続いて登場した電通デジタルの丸岡吉人社長COOは「マーケティングはもっと進化できる」と題したプレゼンテーションを行い、この50年で在来線が新幹線へと変わり黒電話がスマートフォンへと進化を遂げたことと比べ、マーケティングには劇的な進化がもたらされなかったと前置きし、さまざまな問題点や解決策について解説した。
マーケティングシステムを導入しながらも機能を使いこなせていないケースや、顧客獲得を最適化しながらも顧客管理に投資できていないケースを例に挙げ、「自社にとってのマーケティングのデジタル化とはいったい何か、もういちど考える必要がある」とし、マーケティングにはデータや施設、業務などさまざまな連携が必要であることを述べた。
そして「電通デジタルの特長の一つが、クライアントと一体の組織を形成する『チームアプローチ』で、現在の段階では、物理的に近い場所で一緒に仕事をすることが効率的、効果的であると考えています。また、一つのプロジェクトに一人、チーフコンサルタントと呼ばれる責任者を置きます」と業務体制について紹介。さらに、マーケティングやデジタルなどさまざまな業務を経験したハイブリッド人材を持つことが社の強みであるとしながらも「私たちの得意分野は私たちが担当しますが、そうでないところはぜひ各分野の専門会社、専門家の皆さまと共同でやらせていただきたい」と結んだ。
設立発表会の後に行われたデジタルマーケティングセミナーでは、MITメディアラボ所長の伊藤穰一氏が登壇し、デジタル化がもたらす未来像について基調講演を行った。
「MITメディアラボは一般的な大学と異なり、自分たちの学位と自分たちの研究が一体化されています。通常は論文を書いて学位をとり、また別に研究などを行いますが、われわれはレクチャーなども行わず物をつくることで学びます」とMITメディアラボの独特なスタイルやさまざまな活動について紹介。「Anti-disciplinary Research」はその特徴を表すキーワードで、通常の大学にあるさまざまな分野はそれぞれ深く狭くなる傾向にあり、各分野の間の領域では学位がとりづらく専門家も不在で予算を確保しづらいが、MITメディアラボはその分野の間を受け持っていると説明した。
インターネットが普及する前と後の時代をそれぞれ「BI(Before Internet)」「AI(After Internet)」と表現した話題では、インターネットの出現によってイノベーションコストが下がったことで、学生が興したベンチャー企業が大企業に対する競争力を持ち、ビジネスの仕組みが大きく変わったと話した。
教育の進化についても言及し、「プロジェクトを仲間と一緒に、ワクワクしながらやるのが重要だと思っている。普通の学校は教科書を使って一人で勉強して、パッションはどうでもいいから遊ぶなと言われる。ロボットがなかった時代はロボット人間が必要だったけれど、人工知能のこの時代にロボット人間は必要ない。必要なのはクリエーティブな人間だ」と述べ、さらに「人間は、人工知能ができることをやってもしかたがない。人間ならではのこととは、遊びやエンターテインメント、クリエーティビティーだ。電通デジタルは、人工知能の時代に合う人間のあり方や存在意義をうまくアピールしてほしい」と付け加えた。
続いて、電通デジタルのチーフコンサルタントを務める朝岡崇史、安田裕美子、杉浦友彦が参加。「電通デジタルのアプローチはどうちがうのか?」についてディスカッションし、デジタルが創り出す新しいブランド体験などさまざまな角度からプレゼンテーションを行った。
複雑化するデジタルマーケティングの世界で成果を出すための鍵としては、十分なデータを集約してリアルタイムで可視化すること、現場から上層部までどの数字をどう判断するかをあらかじめ合意しておくこと、最新知識を確実にアップデートしキャッチアップすることなどが必要であり、いずれが欠けても成立しなくなると解説。
電通デジタルの新しいアプローチについて、杉浦は「変わる部分と変わらない部分があり、変わらない部分は電通のDNAであり、お客さまに対する成果にコミットしやり切ること。しかし、そこに向かうための手段やベクトルが、電通デジタルでは新しくなる」と述べ、安田は「デジタルマーケティングを成立させるために『What』や『How』が重要ですが『Who』、誰がやるかも大切。ビジョンを持って人と人をつなぐコネクターとなる人間が必要になる」とコメント。朝岡は「これからのクリエーティブは、時間をかけて複数のフォーマットを用意するより、基本コンセプトをひとつつくり、少しずつフォーマットを変えて高速で出す工夫が必要になる」と話し、プレゼンテーションを締めくくった。