セカイメガネNo.47
7歳の息子が教えてくれた
2016/08/17
土曜日は7歳の息子ビーニー、彼の級友、父親たちとサッカーをやると決めている。少年たちは普段サッカースクールで学んでいる。週末の試合は、父が息子と一緒にプレーできる素晴らしい時間だ。けれど私は、それ以上のことをもくろんでいた。
練習を観察していて、息子のプレーの欠点が分かっていた。毎試合一つか二つ、上達のコツを彼に教えてやろうと考えたのだ。ところが結局、レッスンを受けたのは息子ではなく私の方だった。ビーニーは、私がクリエーティブディレクターとしてもっと成長できるように教えてくれた。
試合中の息子は集中力を欠き、自分のスペースを確保する必要を理解していない。私はイライラした。
彼がボールを取る。その瞬間チームメートのポジションにほとんど注意を向けない。ドリブル、ボールコントロール、パス、シュート、全てに問題があった。プレーしながら、私は息子に大声で叫び続けた。
ほどなくビーニーは、動くたびに私の了解を求めるようになった。彼の集中力をそぐ原因に私自身が
なってしまった。息子が首尾よくボールをブロックする、私をちらりと見て指示を求める、振り向いたときにはボールはとっくに敵に取られている。彼を完璧な選手にしようと焦り、求め過ぎた。弱点ばかり目に付き、長所が分かっていたにもかかわらず、うまく引き出せなかった。
クリエーティビティーは試合の最中に教えられるものではない。リスクを冒す自由、誰もやっていないことを試す自由を後押しすればよかった。前向きのプレーで失敗したら許すのはもちろん、祝福すればよかった。そうすればビーニーは自分自身でなんとかすることを学び、学んだことを血にも肉にもできたろう。私はただ子どもを信頼すればよかったのだ。
私自身は根っからの攻撃的選手だった。だから息子にも当然同じ血が流れていると期待した。その期待が危険であることに後で気付いた。息子の本来の強みは飽くことなくボールを追い続け、敵をピタリとマークし、攻撃を阻むことだ。間違いなく彼は、チーム・ナンバーワンの守備的選手なのだ。
人とは違うスキルを獲得できたとき、その喜びが、人にはない能力を自分が持っていると気付かせる。得意なことに取り組めば気分がいいし、さらに取り組む意欲が湧いてくる。週末の試合の一瞬一瞬、ビーニーが心の底から楽しめるように応援する。それが私にできる一番素晴らしいことだった。
7歳の息子がくれた、大事なレッスン。
(監修:電通 グローバル・ビジネス・センター)