「4K映像」は世界をどう塗り替える? 渋谷で実証実験!

  • 高木 健介

2017/04/03

「4K映像」は世界をどう塗り替える?
渋谷で実証実験!

次世代の高精細画質「4K/8K」。現在主流のハイビジョンと比べて4Kは4倍、8Kは16倍もの画素密度で映像表現ができる技術です。

2020年には、国内スマートテレビ市場において4K対応テレビの普及率が70.5%まで拡大する(2016年2月、電子情報技術産業協会)という予測も出ており、今後ますます映像の高精細化が進んでいくと予想されます。

私も、4Kの普及に期待する一人です。

4Kの普及は、テレビに限ったことではありません。街中のパブリックディスプレーなど、さまざまな画面に導入されていくでしょう。 そんな中、電通と電通国際情報サービスでは2月24〜26日、4Kデジタルサイネージの実証実験「4K@SHIBUYA」を東京・渋谷マークシティで行いました。

実証実験

 

「今の画質で十分」は思い込み?

高精細は「臨場感」という情報を運ぶ

この実験では、4Kデジタルサイネージで渋谷の観光スポットや商店といった街の映像を流すとともに、25、26日には、渋谷区をホームタウンとするプロバスケットボールB.LEAGUEチーム「サンロッカーズ渋谷」のリーグ戦を、試合会場となる青山学院記念館から4K映像でライブ配信しました。

当日は滞りなく映像配信が行われました。4Kの高精細な映像は街行く人の足を止め、楽しんでいただけたと思います。既存施設のスペースで4Kの試合映像をネットワーク技術を使って上映したことでさまざまな課題と発見があり、大きな成果が得られました。

とはいえ、読者の中には、4Kが本当に普及するのか懐疑的な方もいるのではないでしょうか。「今の画質で十分」というご意見もあるかもしれません。

しかし、過去の映像革新を振り返っても、「今の画質で十分」は思い込みではないかと感じるのです。例えば携帯電話のディスプレーがモノクロからカラーになった時、あるいはテレビがアナログ地上波から地デジになった時、「そんなもの必要ないだろう」「今のままでも十分だ」という声はありましたが、その環境に慣れた今になると、あえて当時に逆戻りしたい人はあまりいないと思います。

今回の実験でも、4Kの可能性を感じる出来事がありました。それは、ライブの告知や街の風景といった「編集映像」を流しているときに比べ、バスケットボールの試合中継が始まった途端、サイネージの前で足を止め、関心を示す人が増えたことです。どうやら「高精細な4K映像」と「ライブ中継」の組み合わせは、無意識に心にとどまる何かを生み出すようです。

実証実験

「心にとどまる何か」、それは「臨場感」です。

 

臨場感についてのアンケート

実証実験で行った視聴者へのアンケートでは、85%以上の方々が4K映像を「家で見る以上の、または会場で見るような臨場感」と評価しました。映像の画素密度が高まると、まるで肉眼で実体を見ているような錯覚が生まれます。つまり高精細映像では、これまで表現しづらかった「現場の空気」という情報が加わるのです。

過去の映像革新と同様に、4Kもその高品質や臨場感を一度味わえば、4分の1の密度には戻りたくなくなるでしょう。今後4K/8Kの映像ソースが広がるにつれて、ありとあらゆる「ディスプレー」で高精細化が浸透していくと思います。

高精細が新たなコンテンツを生み、

新たな収益源をつくる

では、4Kの普及によって具体的にどんな可能性が広がるのでしょうか?

広告表現においては、これまでは写真や映像を駆使して情報やストーリーを伝えようとしていました。しかし、高精細で撮影された4K映像なら、見せるだけで商品の「質感」や「雰囲気」を伝えられます。最も商品が映えるライティングの映像を掲載するだけで、まるでショーウインドーがそこに空間移動してきたかのようなシズル感を表現できます。ラグジュアリーブランド、食品・飲料など、その恩恵を得るクライアントはさまざまでしょう。

つまり、4K動画では、ストーリーや演出を駆使するバズや口コミ動画とは別次元の、「映像美と空気感で感情をくすぐるブランドマーケティング」が実現できるようになるのです。特に大画面ではその効果が得られやすく、4K化されたテレビCMやサイネージボードなどで活躍すると思われます。

また、今回の実証実験では「バスケットボールのライブ配信」をデジタルサイネージで行いました。すでにアメリカやヨーロッパでは、コンサートや舞台などを遠隔地でライブビューイングすることが、ショービジネスとして成長しつつあります。伝送で高精細映像のパブリックビューイングやライブビューイングができれば、新たなビジネスが生まれます。

「スポーツの決勝戦を全国各地のファンと応援する」「海外アーティストの公演を国内のホールで楽しむ」「美術館で公開されていない収蔵品を手に取れるような質感で見せる」など、ライブビューイングは幅広く応用できます。より大きなサイズのディスプレーで迫力ある映像を流せるので、集客の拡大、観客の満足度アップにもつながるでしょう。そのことは、ライブやイベントの興行主、コンテンツ事業者に新たな収益をもたらします。

実証実験

そしてもう一つ。今回、デジタルサイネージを「ネットワーク」につなげられたことにも大きな価値があると考えています。これにより、ウェブのターゲティング広告と同じ手法で、日時やイベント、街の天気や環境の変化に合わせたオンタイムな広告配信が可能になります。それは、アドネットワークを街に張り巡らせるということ。高精細のデジタルサイネージをより効果的に街の広告として使えます。

ポテンシャルの高い4K/8Kだからこそ、

正しいコンテンツと理解を

今後数年で、ソフト・ハードともに4Kのシェアは確実に拡大します。大切なのは、その特性を生かしたどんなコンテンツを生み出せるかです。高精細だからこそ、扱い方を少し間違えれば“チープ”に見える危険性もあります。4Kには4Kの、8Kには8Kの特性があり、これまでの手法とは異なるクリエーティブ制作のアイデアと、培ってきたノウハウ、コンテンツ調達力がモノを言うでしょう。

私たち電通の役割は、高精細ディスプレーにはどのようなコンテンツが適しているかを見極め、4K/8Kを活用するショーケースを増やすことだと考えています。それは、高精細化の市場を正しく導き、拡大させることにつながるはずです。

一方、高精細コンテンツを活用してもらう「場」を増やすことも大切です。高精細ディスプレーを採用するのは、施設にとっても金銭的な負担が生じますし、設備としての制約もあります。だからこそ、4Kや8Kの正しい価値を伝えていき、納得してもらわなければ、市場規模は拡大できません。

施設をはじめ、クライアントやコンテンツ事業者にも、高精細な表現による「価値の変化」を理解していただくことが私たちの役目です。そうすることで、きっとこれまでにない広告表現やコンテンツが続々と誕生することでしょう。

高精細な画質には多くの可能性があり、今回の実証実験はそういった未来へと向かう一歩なのです。

 

■実験名称:「4K@SHIBUYA」(高精細デジタルサイネージ配信実験)
■主催:映像配信高度化機構、電通、電通国際情報サービス
■実施期間:2017年2月24日(金)~26日(日)
■設置場所:渋谷マークシティ 1Fイベントスペース・4F COIN SPACE by 渋谷区観光協会
※B.LEAGUE「サンロッカーズ渋谷」対「京都ハンナリーズ」
2月25日は18時~試合終了まで、2月26日は14時~試合終了までライブ配信
■コンテンツ提供事業者:B.LEAGUE、サンロッカーズ渋谷、株式会社NHKエンタープライズ、渋谷のラジオ、ルトロン、渋谷区観光協会ほか
※平成28年度総務省実証事業「高度な映像配信サービス実現に向けた調査研究の請負」の一環として実施。