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“伝えるべき魅力”に集中したことで話題化に成功 ―新生・湖池屋のリブランディング戦略―

クリエーターのしっぽ №3

  • 鈴木 晋太郎

2017/05/30

“伝えるべき魅力”に集中したことで話題化に成功 ―新生・湖池屋のリブランディング戦略―

2016年10月に開始の「総合スナックメーカー・湖池屋リブランディング」プロジェクト。湖池屋の新社長就任により始まった同プロジェクトでは、リブランディングを象徴する商品「KOIKEYA PRIDE POTATO」を発売。これまでにない斬新なパッケージとインパクトのあるコミュニケーション戦略によって、17年2月の発売から1カ月を待たずに品切れ状態になるなど大きな話題を呼びました。

「KOIKEYA PRIDE POTATO|株式会社湖池屋」企業サイト
湖池屋「KOIKEYA PRIDE POTATO」ウェブサイト

そのプロジェクトを推進したクリエーターは、電通の鈴木晋太郎氏。話題を呼ぶ仕掛けを企画した次世代クリエーターが自身のこだわりと今回のリブランディング戦略について語りました。

取材協力:PR Table
※このプロモーション事例に関するエピソードは、PR Tableでもお読みいただけます。

 

商品と消費者を強くつなぐ、愛される商品名を模索
 

──「総合スナックメーカー・湖池屋リブランディング」プロジェクトはどのような経緯があってスタートしたのでしょうか。

鈴木:16年、新たに社長に就任された佐藤章氏が「湖池屋を新しくする」と公言されて。その新しい「湖池屋」をつくっていくためのロゴマークやスローガン、それを象徴する商品の開発を手伝ってほしいと連絡いただき、プロジェクトは始まりました。

最初のミーティングでは、佐藤社長が直々に2~3時間にもわたってじっくり新しい湖池屋とは、という思いを話してくださって。今までのものを捨てて新しいものに生まれ変わるのではなく、原点に立ち返って、もう一度、おいしいポテトチップスってなんだろうと考えること。自分たちの立ち位置を確かめた上で、今求められているスナックを開発できる会社になろうというのが、このプロジェクトのコンセプトでした。

湖池屋は「カラムーチョ」「スコーン」「ポリンキー」「ドンタコス」といったヒット商品を出していますが、次のロングセラー商品の開発が課題となっていました。PRネタになる奇抜な商品を自社企画でつくるというような施策では、湖池屋の品質、ブランドを伝えることができないと考えていたようです。

鈴木晋太郎氏
鈴木氏

──「KOIKEYA PRIDE POTATO」。思わず突っ込みたくなる商品名ですが、どのような背景があったのでしょうか。

鈴木:最初に「コイケヤ ジャパン100ポテトチップス」という仮の名前で、佐藤社長からイメージをスケッチしたものを頂きました。原点に立ち返って、湖池屋の妥協なく一番おいしいポテトチップスをつくる、プレミアムラインのポテトチップスを象徴するものとして出したい、という思いと一緒に。

この話を聞いた時に、あまりにも真っすぐ過ぎて。こう言ってはなんですが “普通”だなと。昨今たくさん出ているプレミアム系のお菓子の中に埋没してしまう。「老舗のメンツをかけてつくります!!」ってあんまり真顔で突っ込んでいっても、消費者からすれば 「たかがポテチでそんな…」って、引かれちゃいますよね。

本気であると露骨に表現するよりは、ちょっとチャーミングに伝えた方が、愛される商品になる。その発想で100案以上を佐藤社長にプレゼンして、その中で社長が「プライドをかけた一品になるからちょうどいい」と選択してくださりました。

考え抜いて提案したアイデアではありますが、社運をかけた一品に「フライドポテト」とかけたダジャレを選択してくれたことには正直驚きました(笑)。

──パッケージは、これまでのポテトチップスからは想像できないデザインですよね。どんな狙いがあったのでしょうか?

鈴木:生半可なものだと、普通のプレミアムポテトチップスに見えてしまうため、一目で湖池屋の威信をかけたものに見えるパッケージにしようと、振り切った案を考えていました。

どうしてもメーカー目線だと、“たかがポテトチップス”みたいな茶目っ気がないものになったり、シズルがないと不安になったり、どうしても丸くなってしまいます。なので、そうならないように提案を続けました。よくある原色カラーの黄色とか赤とか緑ではなく、白にしたのもそういった理由です。

パッケージの表面は当初、「こういう素材/製法で出来ている」「味が濃いのに軽く揚がってるのがポイント」といった商品情報をたくさんコピー化して載せてほしいとのご要望がありました。でもそれだと、何が本当に訴求するべきことなのか分かりませんよね。

とにかくそぎ落として「KOIKEYA PRIDE POTATO」を印象に残した方がいいと佐藤社長にプレゼンして納得してもらえたのはよかったです。シンプルでスッキリしたパッケージに仕上がり、他と差別化できました。

その結果、流通からの評判も良いものが完成しました。パッケージの評判は良かったらしく、コンビニの棚も結構取れたみたいです。

店内の棚に陳列された商品
 

動画制作は時間のデザイン ―“伝えるべき魅力”をシンプルに残すことを追求したテレビCM

──制服を着たごく普通の高校生に見える女の子が荒野を歩み、圧倒的な歌唱力で荘厳な曲を歌い上げる。しかし歌詞の内容は「100%日本産のイモを使っているの」それだけ、というこのギャップだらけのテレビCMですが、どのような狙いがあったのでしょうか。

鈴木:試作品を食べてみたら、本当においしくて、「こんなにおいしくつくれるの?」と感動しました。これは印象に残りさえすれば売れるなと。だからテレビCMは、登場感があって、難しいことは言わずにシンプルに商品の印象を残るものにしようと考えたんです。

以前、普通の人が真剣に歌うさまが面白みを生み出すテレビCMがヒットした経験から、今回もインパクトのある歌で伝える企画を提案に盛り込みました。起用したのは、ゴスペルコンテストで優勝経験のある女子高生の鈴木瑛美子さん。実は、たまたまテレビで歌っているところを佐藤社長が見つけ、起用することになりました。鈴木さんにすると言われた時も、商品名決定と同じくらい驚きましたね。

CM撮影風景
 
CM撮影風景
 
CM撮影風景
 
CM撮影現場の鈴木氏
鈴木氏

──このテレビCMも大きな話題を呼びましたが、制作過程では、具体的にどのような工夫をされていたのでしょうか。

鈴木:インパクトのある企画を、ということで壮大な曲に単純な歌詞、異様に目立つテレビCMを心掛けて制作しました。意外と古典的なやり方のテレビCM企画なんですけど、今こういうことをやってるところがあんまりないので、かえって目立つことができたのかな、と。

オンエアされるたびにSNSで「なに今の?」と書き込みをたくさんの方がしてくれて。拡散の起爆剤にと考えた商品のことを言わない4分フルバージョンは、30秒バージョンよりも倍近く再生されました。また、フルバージョンの曲をサイトに掲載しただけで11番組くらいからテレビ取材が来たりしましたね。

おかげで、テレビCMと動画だけのシンプルな展開で17年2月6日に発売したとたん、販売計画を上回る大成功を収めることができました。

テレビCM「100% SONG」30秒編
テレビCM「100% SONG」30秒編
「100% SONG」 MUSIC VIDEO
「100% SONG」 MUSIC VIDEO

──短い時間の中でインパクトを残すために、クリエーターはどのようなことを気に掛ける必要があるのでしょうか。

鈴木:僕は「動画は時間のデザイン」だと考えているので、時間の設計することを大事にしています。今回でいうと「曲」を設計することが時間の設計になります。どんな音楽、どんな歌詞を乗せるのか、面白さをどこにつくるか、など。そのために僕は、常にストップウオッチを持って、セリフをぶつぶつとカフェとかで言いながら、自分で手を抜かずに丁寧につくっています(笑)。

「言葉」と「映像」にこだわることで、多くの人に届くことを証明

──このような大きなプロジェクトが、キックオフからたった半年間でリリースしたんですよね。大変だったのではないでしょうか?

鈴木:怒涛の日々でした(笑)。「本来はロゴ決めるのって、もっと時間かかるんじゃないのか?」と思うくらいのスピードでいろいろなことが決まっていきましたね。クリエーティブに対しては、リスペクトしていただいている感覚があり、仕事は楽しかったです。また、企画が早く決まったため、時間をかけたかった作曲に時間をとれたのは本当に良かったです。

──今回のリブランディング企画によって、商品が売れたこと以外に、「こういう反響があった」「こういう変化があった」など予想外だったことはありますか?

鈴木:「KOIKEYA PRIDE POTATO」の大ヒットにより、湖池屋社内は非常に活気づき、新しいプロジェクトがどんどん立ち上がっていると聞いています。新社長に代わってすぐに今回の大きなプロジェクトが開始され、社内は驚いていたようです。しかし、今では新社長を信じていいんだという空気があり、すごく社内がやる気に満ちあふれているようです。
 

──それはうれしいですね。徹底的にシンプルに、信じてつくってきてよかったですね。

鈴木:今回の結果で、自分が今まで信じてきた「言葉」と「映像」にこだわることで、多くの人に届くということが証明された感じがします。いろんな手法があっても、遠隔で伝えることができるメッセージは、「言葉」と「映像」だと僕は思うんです。ここに頼るしかない。だから言葉に手を抜きたくない。今、僕はアクが強い企画に仕上がりがちですが(笑)、より多くの人に届く「言葉」と「映像」をこれからも磨いていきたいと思います。

鈴木氏
鈴木氏