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2013年「話題・注目商品」を読み解く 第1回

2013/12/16

    「消費者が選ぶ2013年の話題・注目商品ランキング」を読み解く

    電通総研はこのほど、今年の「話題・注目商品」を読み解くリポートをまとめ、「消費者が選ぶ2013年の話題・注目商品ランキング」と2014年の「消費キーワード」を発表した。調査は11月15~17日、全国の20~69歳の男女計1000人を対象にインターネットで実施し、約130の商品・事象について「認知度」「注目度」「話題度」の三つの視点で集計・分析した。そのリポートをまとめた電通総研の袖川芳之研究主幹の解説を、2回に分けてご紹介する。

    2013年は「現実が期待を超えた年」

    13年の話題はアベノミクスで始まり、株価もリーマンショック以前の水準に戻り、消費者の“心のデフレ”も和らぎつつある。さらに、富士山の世界文化遺産登録、9月の2020年東京オリンピック・パラリンピック招致決定など、大型の明るい話題が目立った年となった。

    14年は戦後日本の株価の最高値をつけた1989年から来年で25年目に当たり、アジア金融危機、リーマンショック、東日本大震災という大変革を経験しつつもそれを乗り越え、日本社会は過去の清算から攻めの姿勢へとようやく転換する元気を取り戻している。

    13年の年末から14年3月までは、消費税増税に対する駆け込み需要で消費は盛り上がる見込みで、この勢いを継続的な消費需要につなげていくことが求められている。

    2013年の話題・注目商品ランキング

    13年の消費トレンドはどのような状況だっただろうか。

    13年の話題・注目商品ランキングの上位を占めたのは、13年に初めて登場した新商品よりは、数年来人気の高い商品がさらに進化してユーザーや関心層を広めたものであり、安定したトレンドが続いている。

    13年の話題・注目商品の特徴は、次の三つの視点で要約できる。

    一つ目は、車の省エネ・衝突防止支援システムや3Dプリンターなど、未来的な技術が関心を集めたこと。実現にはまだ時間がかかりそうだと思われていた技術が商品化されて出てきたことに驚かされた。

    二つ目は、商品のプレミアムシフトや本格化である。お菓子の高級バージョンが大阪の百貨店で限定販売されたり、「おとなの~」や「金の~」を冠したパッケージ菓子や食品、特保の飲料など、「納得感のある高級化」が受け入れられた。また、コンビニの本格コーヒーは、本格的であるのに手軽に購入できるところが人気である。

    三つ目は、日本に対する自信の回復を背景にした日本の文化やコンテンツの評価と、海外に発信する気運も高まっていることである。日本のおもてなし、富士山の世界文化遺産登録、和食の無形文化遺産登録、日本のものづくりの水準の高さなどと共に、ゆるキャラや地方の豪華周遊列車など地方の多彩さも目立った。

    ランキング入りした商品・サービスの特徴

    1位の東京スカイツリーは12年5月の開業だが、11年に3位、12年に2位でついに今年1位になった。電通総研のランキング調査は全国の消費者を対象にしているので、今年1位になったのは、地方での東京観光熱が高まるなど、地方での関心の高まりが後押しした。

    2位のハイブリッドカーは、12年夏までエコカー補助金が実施されていたので需要を先食いして販売が減少するのではないかと危惧されていたが、新商品、新技術の導入の効果と12年11月以来のアベノミクスによる景況感の改善によって、いわゆる「ペント・アップ・デマンド」(不況期に買い控えていた需要が、好況期に繰り出されてくる現象)が起こり、消費税増税前に購入しようとする人が増えた。また、軽自動車にもハイブリッド技術が使われ、車種が広がったことで関心層が広がった。

    3位のスマートフォンは、12年まで3年連続1位だったが、今回は3位となった。13年は各社で新機種が投入され、ユーザーの裾野も広がってきたものの、ツイッター、フェイスブック、ラインに次ぐ新たな大人気アプリが登場せず、他の商品に話題性で上回られた。しかしながら、20代・30代でのランキングでは1位であった。

    4位のロボット掃除機は12年に続きランキングの上位を占め、ライフスタイルとして定着しつつある。5位の車の衝突防止支援システムは各社が提供し始め、手に届く技術として関心が高まった。6位のテーマパークの周年イベントは、余暇・レジャーに使うお金を増やしたいという消費者の意向を背景に、過去最高入場者数・最高益を更新。パレードの刷新や新たなアトラクションへの投資が非日常性を求める消費者の心を捉えた。

    その他、13年に特徴的な商品として注目すべきものは、6位の「コンビニの本格コーヒー」で、入れたてのコーヒーのようにライブ感のある食経験が人気となっている。生麺タイプのインスタント麺は12年以降さらにバリエーションが増え、このカテゴリーの品質感を数ランク高めるプレミアムシフトを果たした。12位の3Dプリンターは、工業的な用途だけでなく、今後は子どもの成長を“立体写真”としてフィギュアで残したり、ペットのストラップを作ったり生活の中に入り込む予感が高く、各年齢層から支持を得た。20位の「特保飲料」も好調で、健康=薄味ではなく、健康=濃い味わい×少量という健康感の変化の中で、味わえる特保飲料のブームが到来しそうである。


    袖川 芳之

    (そでかわ・よしゆき)
    1987年電通入社。マーケティング局、電通総研主任研究員、内閣府経済社会総合研究所政策企画調査官などを経て現職。多摩美術大、慶應義塾大大学院で非常勤講師を務める。専門分野はマーケティング・コミュニケーションおよび家族研究、世代論、ヒット商品・トレンド分析など。著書に『クリエイティブ頭のからくり』など。