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1+1=∞ のコラボ・マーケティングNo.1

コラボの思惑

2018/04/03

初めまして、電通コピーライターの坂本弥光と申します。

4年前に立ち上げた「午後の紅茶×ポッキー コラボレーションプロジェクト」について、クライアントと共著した著書『ブランドのコラボは何をもたらすか』が刊行されました。

このコラムでは、本の内容を一部取り上げながら「コラボレーション」が生み出すさまざまな産物について論じていきます。パートナー選び、売り場拡張戦略などコラボに必要なノウハウはもちろん、ブームを起こすためのスケジューリング術、SNSで自走させるためのフォトジェニックの考え方など、コラボから見えてきた新しいマーケティングメソッドまで、余すことなくお伝えしていければと思います。全6回、どうぞお付き合いください。(この先、何回「コラボ」って言うんだろう…)

そもそもコラボをする必要ってあるの?

本書では、午後の紅茶×ポッキーのコラボを成功ケースとして取り上げています。

二つを並べるとつながる「ペアリングパッケージ」と、合わせて食べると新たなスイーツになる「マリアージュ味覚設計」で話題になった午後の紅茶(キリンビバレッジ)とポッキー(江崎グリコ)のコラボ商品開発(左から順に第1〜4弾の商品)
 

通常、こういった「お祭りごと」の成果を測るのは簡単ではありません。しかしこのプロジェクトにおいては、2商品の売り上げが好調なだけではなく、ブームの余波が定番商品にまで及び、ブランド全体の売り上げアップに貢献できたこと。広告出稿がないものの、多くのメディアやSNSに取り上げられ世の中のニュースとなったことが、目に見える結果として出ています。

普段のマーケティング活動では難しい領域に踏み込み、跳ねたアイデアも通すことができました。おそらく二つ並べて男女がキスする食品のパッケージなんて、定番商品では絶対にできないもの。相互作用で高め合える「コラボ」だったからこそ、実現した企画でもあるのです。

ただし、コラボは目的達成のためのひとつの「手段」にすぎません。ブランドの全体戦略において、どのような目的のためにコラボをするのか、コラボがどういった役割を担うのかについて、きちんと段取りを整理しておくべきだと考えます。

なぜなら「コラボ企画」はその特性上、ブランド戦略上の本流に位置付けられるプロットにはならないからです。午後の紅茶やポッキーの場合も、たとえ何年続こうと、コラボ商品がメインの看板アイテムになることはありません。期待できる売り上げだって、短期的なものです。あくまで、ブランド活動を盛り上げるためのひとつの「手段」なのです。

また、ブランドや会社が違えば、根付く文化、使われる言葉、答申プロセスも全く異なります。そのすり合わせに圧倒的な手間が掛かるのはもちろん、話を通さなければならないエライ人の数も、倍々に(もしくはそれ以上に!)膨れ上がっていくのです。

そう考えるとコラボ企画は、本流ではないのに「ヒト」や「時間」といった人的投資を必要とされる、「高コスト」なものだといえます(言っちゃった…)。

コラボを始めようとする際には、そんな側面があることを理解しておくべきだと思います。

欲しいものは同じじゃない

「停滞しているブランドに新しいニュースをつくりたい」
「新たなパートナーと組むことでファンを増やしたい」
「相手に乗っかって、とにかくおいしい思いをしたい」 

コラボを始めようとすると、その目的が相手と異なる場合があります。その際、どういったコラボの組み「型」にするかで、プロジェクトの進行方法が変わってきます。


どの型が正しいとかそんなことは全くなく、プロジェクトに応じて選択してみてください。ただし、型の選定によって、細やかなジャッジの軸や主導権の在りかが変わってきます。お互いの目的が何なのか、何を得たいと思っているのか、できるだけ早めに開示し合っておくことが大切です。それがwin-winなアウトプットにつながると思います。

このように、コラボにコストやリスクは付きものですし、そもそも異なるビジネスを営む相手との調整の中で、100%自社側の言い分が通ることなんてあり得ません。

それでもコラボは面白い。一人じゃ、1ブランドじゃ、到底たどり着けなかった世界にいとも簡単に行けてしまう、ひとつの手段です。そんな「コラボ」について、これから少しずつひもといていきます。
(次回につづく)