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ひとりを起点に、新しいファッションを作る

  • 澤田 智洋

2018/05/18

ひとりを起点に、新しいファッションを作る

インクルーシブデザインから生まれた「041 FASHION」

「みんなが乗れる車をつくる」「みんなが着られる服をつくる」「みんなが行ける遊園地をつくる」。日本の工業化、戦後の発展を支えてきたマスマーケティング。ところが、そこに含まれない人が大勢いました。いわゆる「障がい者」といわれる人たちです。

障害者白書によると、日本の障がい者(手帳所持者)は800万人以上。手帳所持者以外も合わせると、1000万人前後の人が何らかの障がいがあるという説もあります。

彼らは、日々多くの悩みと直面しています。例えば、いまだに信号を「勇気と勘」で恐る恐る渡っている視覚障がいのある男性。新幹線のチケットを取るのに2時間待たされる車椅子ユーザー。文字の読み書きが苦手なことを家族からも職場からも理解されず、苦しみ続けたディスレクシア(難読症)の女性。こうした悩みは、これまでは「マイナーな声」として企業もスルーしがちでした。

企業のマーケティング/商品開発部門の方々と話をすると「ニーズが飽和状態にある」という声を聞きます。本当でしょうか? では、なぜ障がいのある人たちの日常生活の不満はなかなか解消されないのでしょうか? それは障がい者のマイナーな声を、企業側がニッチで非ビジネス的であると捉えてきた側面があるからではないでしょうか。

ところが、歴史に目を向けてみると、障がい者を起点に生まれたイノベーションがたくさんあることが分かります。諸説ありますが、例えばライター、ストロー、カーディガンなどは、障がいのある人が起点で生まれているそうです。大流行したハンドスピナーもそうです。

こうした、障がい者を含めた多様な声を、商品・サービス開発の上流から取り入れていく手法を「インクルーシブデザイン」といいます。障がい者・高齢者人口比率が高い日本だからこそ、むしろ社会的弱者と呼ばれる人を起点にイノベーションを起こすべきではないでしょうか。

そこで始めたプロジェクトが「041」です。“ALL FOR ONE”を意味し、ひとりを起点にモノやサービスを開発していく社会実験です。Social WEnnovatorsという、日本テレビ・電通・JAPAN GIVINGの社会起業家たちが、組織や業界の枠を超えて、知の塊として社会課題に向き合うソーシャルユニットのプロジェクトとして推進しています。

これまで 障がいのある方が楽しめる「041 SPORTS」 、子連れや病気治療中の方の外出時に電車移動が楽になる方法「041 SOS」を生み出してきました。このたび新たに立ち上げたのが 「041 FASHION」です。

実用とファッション性を備えた041 FASHIONを共同開発

障がい者と服の悩みは、切っても切り離せないものです。例えば低身長・低体重だと、自分の体型に合ったサイズがない。目が見えないと、色が分からないのでコーディネートできない。筋力が弱いと、着脱がしづらい。

今こそ、彼らの悩みから新しいファッションを作れないか。そう思っていたときに、UNITED ARROWS LTD.(UA)との縁があり、共同で041 FASHIONプロジェクトを立ち上げるに至りました。

まずは、障がいのある5人に協力してもらい、それぞれに対してUAのスペシャルチームをマッチングしました。続いて、「服のどんなお悩みがあるか?」を徹底的にヒアリングし、具体的でエッジが立った悩みを抽出した上で試作品を開発。

実際に試着していただき、よりシャープでディープなヒアリングをし、着脱しやすさなど実用性だけでなく、デザイン性も重視したファッションアイテムを完成させていくプロセスを踏みました。半年以上の時間を重ね、結果的に6アイテムが生み出されました。

例えば、車椅子ユーザーの関根彩香さんは、10年以上満足のいくスカートに出合えていませんでした。悩みとしては、着脱のしづらさ/風でめくれてしまう/座ると丈がどうしても短くなる/介助者に着させてもらうときに中心部が分かりづらい/臀部に縫い目があると床ずれになりやすい、など満載!こうして生まれたのが「タイトにもフレアにもなるZIPスカート」です。

特徴としては、縦に5本ZIP(ファスナー)が入っていること。全開するとふわっとしたフレアスカートになり、閉じるとタイトスカートになります。また、真ん中のZIPがセンターラインの目印となったり、重みでめくれ上がりにくくなります。さらに、ニーズから生まれた5本のZIPという機能性が、結果として新規性の高いデザイン性へとつながっています。

車椅子ユーザーの関根さんを起点に開発されていますが、いわゆる「障がい者だけ向け」ではないのもポイントです。一人を起点に、万人のために。これこそが、インクルーシブデザインの醍醐味なのです。

2020年の東京パラリンピック開催期間中は、世界中から障がいのある人が日本に集まります。私は、日本が「ダイバーシティー先進国」であるというレガシーを残したいと考えています。そのためには、障がいのある一人一人を起点にイノベーションを重ねていく他ないのだと思います。ぜひ、一緒にやりませんか?