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新聞広告コンペで最優秀賞を獲得!新聞のない「楽しい日々」

2019/02/13

新聞広告コンペで最優秀賞を獲得!新聞のない「楽しい日々」

新聞広告のコンペティションとして毎年若手クリエーターを対象に行われる「新聞広告クリエーティブコンテスト」。2018年度は、「新聞」そのものがコンテストのテーマに設定され、787点の作品の応募がありました。

最優秀賞に選ばれたのは、電通関西支社のアートディレクター石川平氏(クリエーティブ・デザイン局)と、コピーライター小池茅氏(クリエーティブ・デザイン局)の作品「楽しい日々」。“新聞の新聞広告”というテーマに対し、2人はどのようにしてこの作品を考えたのでしょうか。また、このコンペから感じた新聞の価値とは。

新聞広告クリエーティブコンテスト
2018年度「新聞広告クリエーティブコンテスト」最優秀賞受賞作品、「楽しい日々」

新聞の“良さ”を徹底的に洗い出すことから始めた

──今回、2人で参加した経緯を教えてください。

石川さん、小池さん
(左から)小池茅氏、石川平氏(共に電通 クリエーティブ・デザイン局)

小池:最初に参加を考えたのは僕の方です。僕はまだ2年目で、石川さんは4年目の先輩なのですが、普段から話す機会が多く、声をかけましたね。

石川:2人で仕事をしたことはなかったのですが、お互いどんな仕事をしているか認識はしていたので今回の誘いに乗りました。やるからには、本気で賞を取りにいきたいと思いました。

小池:石川さんを誘った理由として、先輩ではありますが、年次関係なく、お互い相談しながら共に作品を作り上げていくタイプなので、一緒に組めば楽しく取り組めるのではと考えたんです。

石川:ときどきタメ口で話してくるしね(笑)。企画について議論する上で先輩後輩は関係ありません。気兼ねせずに話せる関係は重要だと思っています。

──そして今回の作品に至るわけですが、アイデアが生まれた経緯を教えてください。

石川:最初に、2人で作品案をいったん持ち寄ってみました。ただ、それでは深みが出なかったので、改めて新聞とは何か、“良さ”を洗い出したんです。これはあらゆる広告クリエーティブを制作する中でも基本的な部分で、中途半端な良さを訴求するのは難しいです。たとえば、競合に劣っている点を長所として訴求しても説得力に欠けますので。

それで新聞の良さを洗い出したのですが、自分自身が日常的に新聞を読むタイプではなかったので、悩んだ部分でもありました。一方、小池さんは新聞を日常的に読んでおり、結果的に読んでいる側とあまり読んでいない側の両面から考えられたのが良かったと思います。

──どんな新聞の良さが挙がったのですか。

石川さん
石川平氏(電通 クリエーティブ・デザイン局)

石川:具体的に挙がったのは、自分の興味のあること以外の記事も見られる一覧性や、記事の正確性、深い取材がされていることに裏付けられる信ぴょう性。こういったことを背景に、ネットメディアが隆盛しても、やはり新聞に掲載されることには確かな価値がある点など。そういった“良さのタネ”を2人で出していきました。

小池:そのディスカッションを何度かやって、この要素は似ているから合わせようとか、これはもっと広げようと話しながら、作品を作っていきました。最終的に、6点ほどの作品を応募しましたね。

ただ、最優秀賞の今回の作品は、いわゆる「1軍」ではなくて、話し合っている途中で石川さんが「実はこんなのもあるんだけど…」と出してきたものです。その時点で作品の大枠はできていたのですが、右下のコピーが決まっていなかった。石川さんは「ここに何を載せればいいか迷っている」と言っていて。

新聞を読んでいない「淡い危機感」を表現するまで

──なぜ、途中でこのアイデアを小池さんに見せたのでしょうか。

石川:自分の実感値に近いというか、本当の気持ちから生まれたアイデアだからですかね。さきほども話したように、僕はあまり新聞を読んでいなくて、ネットメディアが中心です。それでも生活はできるのですが、なんとなく「新聞を読まなくて大丈夫かな」という淡い危機感は持っている。

そのリアルな観点を形にできればと思ったものの、最後のコピーがどうしても決まらなくて、なかなか難しいなと。それで1軍に入れず、あとから一応小池さんに見せてみたんです。

小池:その後、僕も一緒にコピーを考えたのですが、最初はストレートに「新聞を読まないといけない」と感じるような、わかりやすいコピーを想定していました。でも、いまいちピンとこなくて。そこで石川さんが、「新聞のない、楽しい日々。」というコピーを出してきて、バシッと決まった感覚がありました。

納得した理由は、“行間”を感じるコピーだったからです。この文章を読んで「新聞を読まなきゃいけない」と思うかもしれないし、人によっては「そうだよね」で終わるかもしれない。押し付けがましくなくいろんな解釈ができるのは、むしろ新聞の意義を考えることにつながると思いました。

石川:自分としても、淡い危機感をうまく表現できたと思いました。決してネットメディアがダメなわけではないですし、上から否定するのも違う。ただ、その情報源だけで本当に大丈夫かな、という示唆をする。そういった「自分の本当の気持ち」を形にできたかなと。

──コピー以外の部分についても、細かなこだわりがあれば教えてください。

小池さん
小池茅氏(電通 クリエーティブ・デザイン局)

小池:こう見えて、いろいろあります(笑)。例えば、「ニュース」に「がぞう」、「〜まとめ」と、囲み部分の内容とその階層をバラバラにしたことです。あえて整えず、煩雑な情報を並べることで、ネットのイメージを表現しました。そのほか、「すごいおもしろいがぞう」のように、“い”で終わる形容詞を続けるなど、文章の完成度を低くしたのも細かなこだわりですね。本来は、「すごくおもしろい」が適切なのですが。

石川:ちなみに、字を書いたのは小池さんです。このアイデアを形にするには、彼の汚い字しかないと。(笑)

小池:右手と左手の両方を混ぜて書きました。読めないとマズイので、あくまで読めるレベルで。

情報過多だからこそ、若者は潜在的な新聞ニーズを持っている

──このコンペを通して得たものや、やりがいとして感じたことはありますか。

石川:僕が思ったのは、自分の本心から出てくるアイデアはやはり強いということです。自由にアイデアを形にできる人もいるかもしれませんが、僕のモノづくりにおいては、無理に一般化せず自分の視点を大事にすべきだと今回のコンペを通して実感しました。それは今後の糧になると思います。

小池:今回、新聞自体の広告を新聞に載せるというのが面白かったですね。最優秀賞は実際に新聞広告として掲載されるので、新聞を読んでいる人に自分たちの考えを伝えられるところに、すごくやりがいを感じました。

──では最後に、このコンペを通して感じた新聞の価値やあり方について教えてください。

小池:メディアが多様化し、情報があふれて何が正しいか分からなくなる中で、その状況に疲れる人も出てきていると思います。だからこそ、新聞という選択肢が見直され得るのかもしれません。新聞の持つ正確さや堅さも、情報として必要な多様性の一つですから。

石川:若者はデジタルネイティブと言われることが多いですが、その世代でも人によってデジタルの得意不得意はあるはずです。だからこそ、新聞の持つ独自性や価値を今後も保ってほしいと思います。それは他の新規メディアが簡単に代替できるものではないですから。

小池:デジタルネイティブの世代は新聞にほとんど触れていない人も少なくないような気がしていて、今言ったような魅力や特性に気づく機会さえ少ないかもしれません。であれば、新聞の良さに気づける機会や、新聞と若者をつなぐ回路のようなものができたらいいですよね。若者の中には、まだ顕在化していない新聞へのニーズがあるかもしれませんから。

受賞作品と共に