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広告電通賞、その現在地、これから

2024/11/08

第77回広告電通賞の贈賞式

去る10月22日(火)、第77回広告電通賞の贈賞式が都内で盛大に行われました。そもそも広告電通賞とは、どのような賞なのでしょうか。そして、時代の変化とともに広告コミュニケーションのカタチが変わる中、いかに変化をとらえ、自らの価値を磨き、未来に向けてどのような役割を果たそうとしているのでしょうか。

広告電通賞審議会の事務局長に昨年就任した沼澤忍氏に聞きました。

沼澤忍(ぬまさわ しのぶ)
沼澤忍(ぬまさわ しのぶ) 電通入社後、クリエイティブ部門でさまざまな広告主や電通の新VI(ビジュアル・アイデンティティ)百人百色「dentsu」などを担当。2017年、電通西日本グロースプランニングセンター長・常務執行役員。現在、広告電通賞審議会事務局長、日本広告業協会制作取引委員会委員長、TCC会員。朝日広告賞、ACC金賞、TCC新人賞、広告電通賞部門賞などを受賞。2023年、日本広告業協会第58回吉田秀雄記念賞、2024年、東京広告協会 白川忍賞を字幕付きCM普及推進チームで受賞

 

公的な審議会が運営、表彰されるのは広告主

──広告電通賞とはどのような賞か、その趣旨や特徴をあらためて教えてください。

沼澤:広告電通賞は、1947年(昭和22年)12月に電通が創設した日本で最も歴史のある総合広告賞です。優れた広告コミュニケーションを実践した広告主を顕彰することにより広告主の課題解決の道を広げ、日本の産業・経済・文化の発展に貢献することを目指しています。

運営は、公的機関である「広告電通賞審議会」によって行われています。審議会の歴代会長は経済・産業界の名誉ある方、具体的には経団連や日本商工会議所の名誉会長や名誉会頭が務めてきました。副会長や理事は全国各地の広告協会の会長や副会長、新聞協会会長、民放連会長が務めています。

広告賞としての特徴の一つは、表彰されるのが広告主であることです。もちろん、スタッフリストには広告会社や制作会社の名も記されますが、贈賞式で登壇していただくのは広告主です。ようやくコロナ禍を脱し、今年の贈賞式は銀賞以上の受賞企業・団体の皆さまにご出席いただけるようになりました。

広告電通賞


──広告電通賞には、どのような部門がありますか。

沼澤:社会環境や時代の変化に対応すべく、常にさまざまな見直しを続けており、現在は7部門があります。

【広告電通賞の7部門】
・プリント広告部門
・オーディオ広告部門
・フィルム広告部門
・OOH広告部門
・ブランドエクスペリエンス部門
・エリアアクティビティ部門
・イノベーティブ・アプローチ部門

それぞれの部門に最高賞(賞金100万円)・金賞(賞金30万円)・銀賞(賞金20万円)があり、さらに全部門を通じて総合賞(賞金200万円)や特別賞(賞金100万円)、SDGs特別賞(賞金100万円)が贈られます。

加えて、名古屋・九州・北海道の各地区には、各地区選考に基づき、地区広告賞(賞金20万円)・準地区広告賞(賞金10万円)があります。

電通グループが関わっていない作品も応募できる

──応募資格と選考対象について教えてください。

沼澤:電通グループの広告会社や制作会社が関わった作品だけが応募できると誤解されがちですが、まったくそんなことはありません。取り扱い広告会社・制作会社にかかわらず、原則的に日本全国の広告主に応募資格があります。応募は無料です。

部門によって多少の違いはありますが、過去1年間に実施された広告コミュニケーション作品が選考対象となります。募集は例年3月に行なっています。

──選考は、誰が、どのように行っていますか。

沼澤:選考は、広告の現場で実際に広告コミュニケーション作業に携わる広告主や媒体社の方々をはじめ、広告関連の有識者、大学や研究機関の学識経験者など約500人で構成する広告電通賞審議会選考委員の投票によって行われます。電通から選考委員を出していると誤解されがちですが、そうではありません。

部門ごとに選考委員による投票を経て受賞作品が選出されます。コロナ禍を経て、現在はすべてオンライン投票となっています。その後、正副委員長会、広告電通賞審議会最終選考委員総会での決議を経て、最終確定となります。

日本をはじめ世界各国には数多くの広告賞がありますが、これほど多くの選考委員を組織し、幅広い領域を網羅している賞は少なく、日本の広告界を代表する総合広告賞として高く評価されてきました。

──応募作品に見られる最近のトレンドはどのようなものでしょうか。

沼澤:第77回広告電通賞は1178点の応募をいただきましたが、今年は「コロナ後の社会をどう変えていくかを深く考える」「AIなど最新技術を普通に活用し、かつ斬新なアプローチを示す」「今こそ人と人のつながり、ぬくもりを描く」といったコミュニケーション事例が多く見られました。受賞作品はすべて、昨今の社会情勢、商品・サービス・企業を取り巻く環境を深く考え、広告主の皆さまが発信したものだと感じました。

「広告」と一口に言っても、メディアの使い方、技法の進化、新たな切り口の提示など、実に幅広いコミュニケーションがあることを今年も再認識しました。

第77回広告電通賞フィルム広告部門最高賞 サントリーホールディングス ザ・プレミアムモルツ「無言の父たち」篇
第77回広告電通賞フィルム広告部門最高賞 サントリーホールディングス ザ・プレミアムモルツ「無言の父たち」篇
第77回広告電通賞OOH広告部門最高賞 サントリーホールディングス 企業広告「人生には、飲食店がいる。」
第77回広告電通賞OOH広告部門最高賞 サントリーホールディングス 企業広告「人生には、飲食店がいる。」


国内の優れたケーススタディが競い合う場に

──広告電通賞の最近のトピックス、新たな取り組みや課題について教えてください。

沼澤:まず、今年度から三村明夫日本商工会議所名誉会頭が審議会会長に就任しました。

また選考委員についても、広告業界を長年見てこられた方々の知見を選考に生かしていただくため、第77回からいくつかの広告関連業界団体の理事長や理事の方に選考委員をお願いしています。一方で、最新のクリエイティビティを発揮された方々の知見も選考に生かしていただこうと、日本広告業協会(JAAA)「クリエイター・オブ・ザ・イヤー」、日本アド・コンテンツ制作協会(JAC)「JAC AWARD」、日本広告写真家協会(APA)「日本広告写真家協会公募展(APAアワード)広告作品部門経済産業大臣賞」、東京コピーライターズクラブ(TCC)「TCC最高新人賞」の各受賞者に1年間限定の選考委員をお願いすることを始めました。

さらに、コロナ禍を受けて選考がすべてオンライン投票となりましたので、従来の北海道・名古屋・大阪・九州地区以外からの選考委員を少しずつ増やし、全国規模での選考の活性化、応募の増加を図っていこうと考えています。

贈賞式で登壇する三村明夫氏
贈賞式で登壇する三村明夫氏

課題としては、時代の変化の中で広告電通賞自体が進化を続け、その価値をいかに高め、発信していくかということが挙げられます。

近年、広告電通賞は広告コミュニケーションの変化に対応すべく、「ブランドエクスぺリエンス部門」「エリアアクティビティ部門「イノベーティブ・アプローチ部門」を新設しました。グラフィックや映像・動画といった従来からある制作物以外の幅広いコミュニケーションプランニングの成果として、この3部門への応募が増えているのも事実ですが、まだまだ全国的に十分認知されているとは言えません。来年、第78回からはイノベーティブ・アプローチ部門に三つ目のカテゴリーとして「データカテゴリー」を新設しますので、これを機に認知促進に努めたいと考えています。

──最後に、広告電通賞が今後果たすべき役割について、どのように考えていますか。

沼澤:広告電通賞は、ACCによる「ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」、日本アドバタイザーズ協会(JAA)による「JAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクール」と並んで、国内の総合的な広告活動を定点観測できる広告賞だと言えます。まずは、その役割を今後もしっかり果たしていきたいと考えています。

私は過去に海外の代表的な広告祭であるカンヌやアドフェストの事務局のお手伝いもしてきました。その中で国外の最新事例にも触れてきましたが、国情や国民性によるマーケットの違いから、その考え方・手法を日本に持ち込むことの難しさも感じてきました。

だからこそ、広告電通賞には、日本というマーケットの特性を前提として「国内の優れたケーススタディが競い合う場」という役割があると思っています。事務局には77回分の紀要が全てそろっており、時々過去をひもといたりするのですが、まさにその時代時代の最良最善の広告コミュニケーションが顕彰されています。

広告電通賞が今後も「国内の優れたケーススタディが競い合う場」であり続けるために、変化をとらえ、価値を高める努力を今まで以上に続けていきたいと思います。

第77回広告電通賞の受賞作品は、アドミュージアム東京で開催する「第77回広告電通賞展」でご覧いただけます。この機会に、ぜひ足をお運びください。

【第77回広告電通賞展】
主催:吉田秀雄記念事業財団/広告電通賞審議会
会期:11月8日(金)〜30日(土)
会場:アドミュージアム東京
   東京都港区東新橋1-8-2カレッタ汐留
開館時間:火〜土曜 12:00〜18:00
※状況により開館時間、曜日が変更になることがあります
休館日:日、月曜(ほか不定休あり)
入場料:無料
 
■第77回広告電通賞展の詳細はこちらから

 

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