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7割以上がキャッシュレス決済を利用!シニア×スマホのリアルを調査

「電通シニアラボ 」は、2000年に発足した「電通シニアプロジェクト」の長年の活動実績を受け継ぎつつ、メンバーを大幅に拡充して2022年1月に発足した社内横断ラボです。現在、超高齢社会における社会課題解決をテーマに、さまざまなインサイト分析やソリューション開発を行なっています。2022年7月には「電通シニアラボ」による調査の第一弾として、「シニアのスマホライフ実態調査」(調査概要はこちら)を実施しました。(リリースはこちら

本連載では 、調査の結果を基に、現代のシニアのスマートフォン所有・利用状況や、それによって生活の質がどのように変わったかをひもといていきます。今回は、急速に進みつつあるシニアのスマートフォン利用のリアルについて紹介します。

<目次>
近年急速に進むシニアのスマートフォン利用

スマホの利用頻度は「ほぼ毎日利用」が97.8%

利用内容は、親しい人とのコミュニケーション、情報検索がメイ

意外に進んでいるシニアのキャッシュレス決済

スマートフォンの切り替え時期ピークは5~10年前

スマートフォンを“とても使いこなせている”と回答するのは女性が多め
 

近年急速に進むシニアのスマートフォン利用

近年、シニアのスマートフォン利用が急速に進んでいます。2021年のシニアのスマートフォン利用率は60代で70.0%、70代は40.6%。この数値は、2年前の2019年と比較すると、それぞれ1割以上利用率を伸ばしています。コロナという特殊な環境が続く中で、改めて人と人をつなぐコミュニケーション手段としてスマートフォンが注目されている結果といえるかもしれません。
(出典:総務省「令和元年/令和3年通信利用動向調査」インターネット端末の利用状況)

一般にシニアはデジタルに弱いと思われがちです。しかし、高齢者のスマートフォンの利用率は伸びています。現在のシニアはどのようにスマートフォンを使いこなしているのでしょうか。また、スマートフォンを利用することで、どのような生活の変化を感じているのでしょうか。

スマホの利用頻度は「ほぼ毎日利用」が97.8%

最初はスマホの利用頻度についてです。利用頻度は97.8%が「ほぼ毎日」と回答しています。利用時間については、30分以上から2時間未満が全体の半数以上を占めており、日常的にスマホを活用しているシニアの姿が浮かび上がってきました。

男女別で見ると、3時間以上の回答は女性の方が多くなる傾向があります。実は、携帯依存的なシニアも一定数いるのではないかと思われました。(図表1)

シニアラボ#1_図版01

利用内容は、親しい人とのコミュニケーション、情報検索がメイン

では、具体的にどのようなことにスマートフォンを利用しているのでしょうか。図表2の「利用内容」を見てみるとトップ3に「メール」「LINE」「通話」が並んでいます。「LINE」は、男性よりも女性の利用が顕著に高く、コミュニケーションツールとして多くのシニア女性に支持されていることが分かりました。

4位以降には、「ニュースの閲覧」「天気予報の閲覧」「インターネット検索・閲覧」と検索・閲覧関係が続きます。従来はパソコンで行っていたこれらの検索・閲覧作業が、スマートフォンの普及とともに、こちらに移ってきたものと考えられます。

また「ポイントアプリ・サービスの利用」「インターネットショッピングの利用」は3〜4割程度となっており、スマホを利用したショッピングに関わる動きもそれなりに進みつつあることが分かります。

一方で、“ツアーの予約”“飲食店・美容室の予約”などの予約関連や、Facebook、TwitterなどのSNS利用は、まだそれほど利用率は高くありません。どちらかというと、家族や知人なども親しい人とのコミュニケーションツール、情報取得のツールとしての利用が現在の中心であると言えるでしょう。

シニアラボ_#1_図版02

意外に進んでいるシニアのキャッシュレス決済

こうした中で、意外と感じられたのが、キャッシュレス決済の経験の有無です。「キャッシュレス決済をしたことがある」と回答した人は全体で74.1%と比較的高い結果となりました。(図表3)決済タイプでは、「PayPay」「d払い」「nanaco」「auPay」などが比較的高い利用率を示しました。

ではなぜシニアでキャッシュレス決済が進んでいるのか。その理由のひとつとして考えられるのが、近年のマイナンバーカードの普及を目的としたマイナポイントの提供です。

マイナンバーカードの普及率を年代別にみると、全体平均45. 9%に対し、60代から80代前半にかけておおむね50%を超す高い普及率を示しています(出典:総務省マイナンバー交付状況令和4年7月末現在状況)。こうした動向もシニア世代における、キャッシュレス利用 を推し進めているのかもしれません。

シニアラボ#1_図版03

スマートフォンの切り替え時期ピークは5~10年前

図表4はスマートフォンの保有時期に関する設問です。いつごろからスマートフォンに切り替えたかについては、「10年以上前から」「3~5年くらい前から」「ごく最近~3年未満」がそれぞれ2割強であったのに対し、「5年〜10年前から」が33.1%と最も多く、シニアのスマートフォン切り替えは5年〜10年前がピークであったことがわかります。

図表5は保有歴別に見た、スマートフォンを持つようになったきっかけについてです。項目的に最も高いのは、いずれの時期も「周囲がみんなスマートフォンを利用し始めたから」ですが、保有履歴が短いほど「家族から勧められたから」や「前使っていた携帯電話(ガラケー)の利用料金が高かったから」比率が高くなる傾向にあり、家族の後押しがあったり 、スマホ切り替えの割引プランをインセンティブとして変更したシニアの姿が浮かび上がります。

シニアラボ#1_図版04シニアラボ#1_図版05

スマートフォンを“とても使いこなせている”と回答するのは女性が多め

図表6は、スマートフォンの使いこなし状況について聞いたものです。
「使いこなせていると思う(とても、を含む)」「どちらともいえない」「使いこなせていないと思う(全く、を含む)」の割合は、ほぼ3分の1ずつという結果になりました。
では、誰が使いこなせると思い、誰が使いこなせないと思っているのか、それを男女年齢別に見たものが図表7です。

全般的に見ると、男性の方が「使いこなせていると思う」と回答した割合が高く、女性は「どちらともいえない」の回答が高く見えます。しかし一方で、「とても使いこなせていると思う」という回答は、女性の方が男性より高く、「使いこなせていると思う」の割合も70代女性の高さが注目されるところです。

シニアラボ#1_図版06シニアラボ#1_図版07

今回は、電通シニアラボ「シニアのスマホライフ実態調査」報告から、利用実態の全体状況について説明いたしました。次回は、シニアがスマートフォンを利用することにより、生活がどのように変化したかにポイントを当てて説明していきたいと思います。 

【お問い合わせはこちら】
電通シニアラボ
Email:senior-lab@dentsu.co.jp
 
【調査概要】
調査名:「シニアのスマホライフ実態調査」
対象エリア:日本全国
対象者条件:週に1回以上スマホでメール、通話以外の機能を利用する60~79歳男女
サンプル数:計1000名  
調査手法:インターネット調査
調査期間:「2022年7月11日~2022年7月12日
調査機関:株式会社クロス・マーケティング

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https://twitter.com/dentsuho

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著者

斉藤 徹

斉藤 徹

電通では、電通シニアラボ研究主幹、未来予測支援ラボ、電通デザイアデザイン所属。 西武百貨店、流通産業研究所、パルコを経て、電通入社。現在、超高齢社会と未来予測をテーマに商品開発、事業開発、イベントプロデュースまで幅広く関わる。著書に『超高齢社会の「困った」を減らす課題解決ビジネスの作り方』(翔泳社)『超高齢社会マーケティング』(ダイヤモンド社)、『ショッピングモールの社会史』(彩流社)、『吉祥寺が「いま一番住みたい街」になった理由』(ぶんしん出版)などがある。(財)国際長寿センター客員研究員、早稲田Life Redesign College(LRC)講師、社会福祉士。2023年10月末に電通を退社。

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