電通がワークショップ「OOHメディアの新・進化論」開催~カンヌ審査員・澤本嘉光氏は「ココロを動かすOOH」テーマに講演
2014/03/14
電通は3月3日、OOH Workshop ‘14「見えてきた! OOHメディアの新・進化論」を東京・汐留の電通ホールで開いた。OOHの最新情報を、クリエーティブ、情報拡散、街プロデュースの視点で説明するとともに、電通独自のOOHプランニングや効果検証事例を紹介。広告主ら約600人が参加した。
あいさつに立った電通アウト・オブ・ホーム・メディア局の柳舘毅局長は「東京オリンピック・パラリンピックに向け、これからの6年は街が変貌していく。広告も一緒に進歩しなければならない。OOHはエキサイティングなメディアになるだろう」と展望。課題となっている交通メディアや屋外メディアの共通指標の確立、電通独自のプランニングプログラムの開発にも意欲を示した。
次に、「新・進化論①」として、電通コミュニケーション・デザイン・センターの澤本嘉光エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターが「ココロを動かすOOH」をテーマに講演した。2013年カンヌライオンズのアウトドア部門の審査員を務めた同氏は、アウトドアでなければできない作品で、かつ、人の役に立っているという視点で審査を行ったと前置きし、グランプリや金賞作品について応募ビデオの上映を交えて解説。ただ張るだけでなく立体的なポスターで、ベンチやスロープ、屋根としての役割も担ったグランプリ受賞作、IBM「BENCH/SHELTER/RAMP」(グランプリ、フランス)については「ポスターでありながら街の一部となりデザインまでされている。すごく大がかりなものではなく、単純だがちょっとしたアイデアを加えることによって街が活性化された点で評価された」と述べた。
賞については、ネット上で話題となる“事件”をつくり拡散を狙ったイベント型の手法(ブラジル)、砂漠の街の巨大看板に広告内容と同じ夜露を集めて水をつくる技術を取り入れ実際の生活に役立てた工科大学の作品(ペルー)、高速道路で事故を起こした車を実際に使った新聞社のキャンペーン(アルゼンチン)などの事例を紹介しながら、話題を拡散させるためにはストーリー性が重要との考えを強調。「2020年に向け、OOHにとってチャンスが来ると思う。東京は、提案すれば実現していく可能性が高い。企業広告としてではなく、街が良くなる、役に立つということが実際に起こりそうだ」と期待感を示した。
「新・進化論②」は電通MCプランニング局の松井彬氏が「“バズの着火点”としてのOOH」のタイトルで、OOHの国内における特徴的な拡散事例、スマホ時代における特長、今後の位置付けについて講演した。同氏はまず、電通iPR局の協力で得たOOH展開に関する口コミ数(ツイッター、ブログの記事数)の分析結果を基に、OOH拡散の傾向について説明。
その結果について、実績数字は今後も蓄積が必要だとの課題を示しながらも「OOHを見てネタにしていることは確実だといえる」とし、OOH拡散の法則として①“暇つぶし”利用のスマホユーザーに格好のネタを提供しよう! ②出会い方の演出ができているか ③写真を撮りたくなるような“画”があるか―を挙げた。また、OOHとスマホとの相性の良さ述べた上で、スマホがここまで普及したこれからの時代、O2OあるいはOAO(オンライン・アット・オフライン)という概念の中で、「その場でオンライン」できる媒体としてのOOHは購買導線でオンラインとオフラインを結ぶ“きっかけ”メディアとして活用する価値があると強調。O2OやOAOの“O”は、OOHの“O”だと締めくくった。
「新・進化論③」のテーマは「OOHメディア活用による、街のプロデュース」。電通OOH局の冨田大祥部長と同マーケティング・デザイン・センターの夏目守康専任部長が登壇した。冨田部長は、OOHメディアが街に活力を与えた海外事例としてロンドンの公共交通機関として根付いているサイクルハイヤーや、条例により派手なOOH展開の実施を定めて活気ある街の景観をつくり年間5000万人以上の観光客が訪れるニューヨーク・タイムズスクエア、六本木ヒルズや東京ミッドタウンのなど国内事例を紹介し、人びとの暮らしを豊かにしていくためのOOHメディアの活用方法を説明した。
夏目部長は、街づくりでは近年、街を運営し活用し育てていく「タウンマネジメント」という考え方が主流となり、どのような魅力をつくれるかが街の価値を上げていく重要なポイントだと解説。例えば「発信」「表情」「仕組み」「場」といった切り口で街の魅力づくりを捉えてみた場合に、そこには企業が社会的・経済的価値の両方を生み出せるさまざまなチャンスが見えてくると提案。街のコンセプトメークや、ブランディングなどに参画している立場から「人と街の関係、企業と街の関係を考えるその接点にあるOOHは、街づくりに寄与する大きな可能性を持っている」と展望した。
最後に、電通OOH局の中野雅之部長が、「新・進化論④」として「OOHプランニングの今」について講演。まずOOHの特徴的な機能として①話題喚起バイラルの起点②都市圏のリーチ③テレビ併用によるシナジー④デジタルとの親和性⑤リーセンシー―を挙げ、ビデオリサーチの調査「SOTO」や交通広告共通指標策定に向けた調査による検証データを解説した。
次に、一般化した事例を基に具体的な交通広告のプランニングを説明。屋外広告共通指標の策定に向けた取り組みや屋外広告のパワーを解明する新しい概念、電通オリジナルメソッドである折り込み顧客指数プランニングも紹介した。さらに効果検証事例として、電通独自キャンペーン調査による効果分析を示した。また、次のキャンペーンプランニング立案に役立つ示唆について、同一ブランドの継続調査、競合ブランドとの比較、個別媒体の効果分析などの視点から分析。PDCAの実践により「その時点で最も精度の高い提案と検証」が可能と語った。
◆会場では講演の他、最新技術のOOHや事例紹介のパネル展示も行った。
新世代の音声合成プロダクト「CeVIO」
キャラクターとおしゃべりができ喜怒哀楽が表現できる音声合成ソフト。お客さまと会話しながら会場内の展示コンテンツを紹介した。
笑顔をためることができる鏡「エミタメ」
ミラーに映った笑みを点数化、その点数(エミー)をためることことで募金ができる。グッドデザイン賞受賞。
Aqua Top Display
水面をディスプレイとして映像を投影するシステム。水面でタブレット端末のようなタッチパネル機能を実現。