青学とパートナー企業、電通で未来をつくる講義開講!「AOGAKU PROJECT DESIGN CENTER」活動レポートNo.3
「日常の気づき」がワクワクできる未来を作る!
青学生と共創する「プロジェクトデザイン」の可能性
2025/06/16
2024年9月、青山学院大学総合文化政策学部と電通のフューチャークリエイティブリード(FC)室で、プロジェクトデザインを通じて企業の未来を共創するゼミが開講。題して「AOGAKU PROJECT DESIGN CENTER」。パートナー企業である「春華堂」「BEAMS」「アミューズ」、そして電通と共に、青学生たちがプロジェクトデザインに挑みました。
共創するゼミを経て、何を学び、何を得たのか。そして未来に向かってどのようなアイデアを発想できるようになったのか。今回は青山学院大学4年生で、森島ゼミに所属する内山和香さん、入嶋菜帆さん、大倉菜々実さん、斎藤龍三郎さん の4名と、電通 プランナーの野口柾晴に、プロジェクトメンバーの舩曵慧美がインタビュー。これまでの活動の振り返りと、今後の活動の展望について話を聞きました。

何気ない地元トークがプロジェクト化したBEAMSチーム
舩曵:今回は、BEAMSチームと春華堂チームのメンバー2人ずつに集まってもらいました。チームごとに活動内容の違いがあったと思うので、まずはそれぞれのチームの活動を振り返りながら、ゼミの全体的な感想や、印象に残った出来事を聞きたいと思います。まずはBEAMSチームの大倉さん、入嶋さんからお話を伺えますか?
大倉:私が特に印象に残っているのは、ゼミの講義で聞いたマグロの目利きをAIで行う「TUNA SCOPE」や、伊勢半の採用手法で、応募者の個性を表現してもらう「顔採用、はじめます。」の取り組みです。これらのプロジェクトは日常の「当たり前」に疑問を抱いたことから生まれたものだと知り、私自身も最近は「なぜ、当たり前だと思うんだろう」と逆からアイデアを考えてみるようになりました。

入嶋:BEAMSチームは大名古屋展というイベントに向けて、名古屋の良いところを引き出して紹介する「いいじゃん名古屋」を企画し、展示を行うために活動しています。私はもともと地域活性化の取り組みに興味があって、高校生のときから地域のプロジェクトに参画していました。「大名古屋展」では、自治体はもちろん、電通やBEAMSといった企業のみなさん、青学のプロジェクトメンバーとともに、高校生のときの活動よりもさらに大きな規模感で取り組めたことはすごく面白い経験になりました。また、活動の輪がどんどん広がっていき、お互いの「好き」という気持ちをメンバー全員と共有しながらプロジェクトを作り上げていったので、あたたかな雰囲気の中で活動できたと思っています。

舩曵:BEAMSチームでの活動の中で、大倉さんと入嶋さんはどのようにプロジェクトに関わっていましたか?
大倉:私は最初のころは、意図的にたくさん発言をするようにしていました。メンバーが意見を言いづらそうにしているのを見て、私が率先して手を上げることで意見を言いやすい雰囲気になったらいいなと思ったのです。活動するにつれてメンバーが積極的に発言をするようになってからは、今度はメンバーの発言を聞いた後、少し違う視点でアイデアを出すことを意識するようになりました。
入嶋:プロジェクトへの関わり方で印象的だったのは、飲み会での会話がきっかけとなって、「いいじゃん名古屋」の立ち上げにつながったことです。あるとき、偶然地方出身の友人数人で飲み会をしていて、それぞれの地元トークで盛り上がっていました。名古屋出身の友人は、はじめは「名古屋には何もない」と言っていたのに、周りの人の地元自慢を聞いているうちに「名古屋には、あれも、これもある!」と魅力を語り始めていました。その話をゼミでしたところ、名古屋の「外」から働きかけることで「内」の人のプライドや愛を引き出せるのではないかという仮説として膨らんでいきました。講義を経て、日常の何気ない話にもアンテナを張るようになったおかげだと思います。
メンバーの長所を生かしてアイデアづくりに取り組んだ春華堂チーム
舩曵:今度は春華堂チームの内山さん、斎藤さんに、印象に残った出来事を伺いたいと思います。
内山:私たちは春華堂の事業の一つである「遠州・和栗プロジェクト」に「えんづくりラボ」として参画しました。「“和”栗を“輪”栗に」をテーマに、和栗を国内外に広める活動をしています。段階を踏んで認知度を上げていくために、まずは学生をターゲットとして、学食とのコラボメニュー販売などに向けて動いています。さらには青学だけでなく他大学や世間との“輪“を広げることを目指してプロジェクトを進めています。
私が印象に残ったのは、この活動を通して友達の長所を知ることができたことです。長所を知ることでより仲良くなれたり、尊敬する部分ができたりして、結束力の強いチームになったと感じています。

斎藤:チームメンバーの本当の良さが分かったというのは僕も強く感じていました。例えば、企画の軸を通して話を進められる人、アイデアをたくさん出せる人、内山さんのようにデザインが上手な人など、活動を通してメンバーの魅力が一段と伝わってきたのが最も印象的でした。
もう一つ、僕にとって印象深かったのは、講義で聞いた「日常の疑問から物事を考えよう」という言葉です。それ以来、日常のちょっとした気づきをメモするようになりました。例えば、「新潟出身の母がイクラをパックの上から見ただけで状態がわかるのはどうして?」とか、「左利きの人はどのように改札を通っているのだろう?」とか。こうした小さな問いかけを大切にする姿勢は、春華堂チームの活動でのアイデア出しにも生きていたと感じています。

舩曵:春華堂チームの取り組みには、野口さんが伴走して関わっていました。野口さんから見て、春華堂チームの動きはどのように映りましたか?
野口:僕の目から見ても春華堂チームは、メンバーの長所に応じてしっかりと役割分担をしていたのが印象的でした。いうなれば、プロデューサーチームと制作チームに分かれて、少ない時間でも良いアイデアを生み出せるように動いていたというか。メンバーを信じて、責任をもって自分のパートをやりとげようという気持ちが感じられました。ちなみに僕から見て、内山さんは活動の中で少しずつ関わり方が変化していったように見えましたが、内山さんご自身はどう感じていますか?
内山:最初はアイデアを考えることに精一杯だったのですが、次第に「どうすれば相手に届くか」と考えるようになりました。そこから、自分本位のアイデアというよりは、皆さんの心に根付くアイデアを出すのが大事だなと思って、皆さんを巻き込めるようなアイデアを提案するようになったと思います。
斎藤:確かに、メンバーでアイデアの議論をしている時に、内山さんが掛けてくれた一声でアイデアが良い方向にまとまることも多く、本当にありがたく感じています。
時には3~4日くらい、メンバーでずっと話し合うみたいな時間もありました。しかし、そうした濃密な時間を経て、「えんづくりラボ」のステートメントを完成させたときには、アイデアを生み出す大変さを知ることもできましたし、その分「みんなでやり遂げた」という達成感を共有することができました。
野口:メンバー内で「こうしていくのはどう?」「これいいね」と言い合える環境は風通しも良いし、「みんなでこのアイデアを作った」という満足感も得られますよね。良いプロセスでプロジェクトを進められたんじゃないかと思います。
舩曵:初回から見ていて、BEAMSチームも春華堂チームもこんなに活発な議論ができるチームになると思わなかったです。青学生は結構真面目な子が多い印象なので、型にはまる部分があるかなと思っていたら、回を重ねるごとに人前で意見を言うことに臆さなくなっていって。特に後半加速度的に、それぞれの個性が伸びたのを感じました。チームにおいて得意分野で役割を果たそうという意識の芽生えが、チームとしての機動力が上がっていくのを実感しました。

今を取り巻く課題を解決する、青学生ならではのアイデアの視点
舩曵:どちらのチームも、活動を通して大きな学びや経験が得られたということが聞けてうれしいです。ここでみなさんに、これまでの活動で得た学びを基に、来期の課題づくりに向けて一緒に「今後のプロジェクト」を考えていきたいと思っています。
例えば銀座のこと。銀座という場所は、皆さんからすると遠い存在に感じますか?その存在を身近にするために、どんなことが考えられそうですか?

入嶋:銀座は価格帯が高い店舗が多いので学生にとっては足を踏み入れにくく、行くときはちょっと背伸びしておしゃれしないと行けない場所というイメージがあります。
内山:確かにハードルは高いのですが、自分が熱を持って語れるもの・ことがあれば、自信を持って行きやすいかもしれません。
野口:例えば、和栗プロジェクトの一つとして、「マロンメイク」を銀座から発信するイベントを企画するのはどうですか?
内山:そういうきっかけがあれば、学生も銀座に興味が持てますし、私たち自身も「私は和栗プロジェクトを広めるために銀座に来ています」と自信を持って行きやすくなりそうです。
舩曵:銀座って学生のみんなにとって、今は自信がなくて行けない場所、ということは銀座に行けている自分=自信のある状態だよね。そうすると銀座にいるみんなってすごく自己肯定感が高い状態だなと思って。大人が普段何気なく歩いている銀座の価値って実はそういうところから気づけたりするなと思いました。銀座が持っている魅力とか価値を共通認識として持って一歩掘り下げると、新しいプロジェクトが動き出すよね。
野口:今の話を受けると、銀座に和栗プロジェクトとメイクを掛け合わせて、銀座にも足を運べるくらい自己肯定感を高められる取り組みにすることで、若者と銀座の距離を近くする。若者の自己肯定感をプロデュースするプロジェクトが銀座と和栗から生まれていくのも面白いと思います。
舩曵:最後に、メディアについて少し考えていきましょう。今後の講義計画の中で新聞社やテレビ局が作ったコンテンツをPRするという取り組みを考えています。どのようなアイデアが思い浮かびますか?
大倉:若者をターゲットにするという視点であれば、SNSの活用がキーだと考えています。そのためには、SNSごとに載せるコンテンツを変えてみる工夫も必要かもしれません。TikTokをよく使う若者の興味を引くコンテンツは何か、Instagramだとどうかなど、SNSを使う学生の視点で仕掛けを加えられるといいのかなと思います。
舩曵:SNSといえば、大倉さんはBEAMSの皆さんにTikTokで就活情報を収集しているという話をして、興味を持って話を聞いてもらいましたよね。そもそも、なぜTikTokで就活情報を見ようと思ったのですか?
大倉:実は見ようと思って見たわけではなくて。たまたまインターネットで就活のことを調べていたら、TikTokで「自己PRのコツ」「業界トップランキング」といった就活情報が流れてくるようになったのです。そこで、「TikTokでも就活情報を投稿している人がいるんだ」と興味を持ち、SNSで情報収集をすることに注目するようになりました。
自分からコンテンツを探すことにハードルの高さを感じている人も、SNSでたまたま流れてきたコンテンツに興味を持つことができたら、自分から「もっと見たいから調べよう!」という行動に変わっていくのではないでしょうか。

野口:確かに、TikTokなどで番組のショート動画を流して、興味を持ってもらったユーザーが番組や新聞にアクセスするような動線ができると、発信側としても視聴率を上げるためのSNS施策を行う可能性が生まれてきますね。
ワクワクするプロジェクトが、新しい社会をデザインする
舩曵:日常の気づきから新しいアイデアを生み出していくという学びが、しっかりと生きた座談会になったと思います。最後に、講義での学びを生かしてどんなことに今後取り組んでいきたいか、一人ずつ伺えますか?
入嶋:実は、このゼミに参加するまで自分に自信がなかったのです。でも、居酒屋で何気なく交わした会話がプロジェクトに発展するという経験を経て、これまで普通に生きてきた私でも、誰かの心を動かせる個性や価値があったのだと自信がつきました。きっとそれは誰にでも言えることだと思うので、「誰にでも価値がある」ということを世の中にもっと発信できる取り組みをしていきたいですね。

内山:私自身もこの活動を経て、自分の個性を大事にしていいんだと思えるようになりました。そう思えたのは、この活動を通して電通をはじめ、たくさんの方が知見や考え方を学生に共有してくださったことも大きかったと思っています。皆さんからの学びを得られたおかげで、日々の生活にちょっと余裕が生まれて、「なんとかなるかな」という良い意味で気軽な考え方を持つことができました。
斎藤:電通や春華堂の方々と一緒に活動する中で、プロジェクトメンバーの個性や長所を生かして一緒に物事を進めていくための動き方を吸収できたと実感しています。この経験を生かして、今後僕が取り組みたいと考えていたのが、「みんなが一体感を持てるプロジェクト」です。音楽やスポーツみたいに、人種や言語を超えてまとまれるようなコンテンツにアプローチしたプロジェクトができたらいいなと思っています。
大倉:一人一人の個性や価値観に触れる中で、自分の可能性や取り組めることの範囲がとても広がったと感じます。これまでは「できないかも」「難しいかも」と思って限界を決めていたことでも、仲間の個性を生かして一緒に取り組めばやりとげられる。そんな経験を経て、「何事もとりあえずやってみよう」と考えられるようになりました。今後私が取り組んでいきたいのは、まだ知られていないような日本の魅力に光を当て、国内外に広く発信するプロジェクトです。今後の目標を実現するためにも、一人一人の個性を生かせるようなスキルを磨いたり、今よりもさらに交流の輪や活動範囲を広げていきたいです。
舩曵:個性を大事にしてもいいんだという考えや、自分の可能性を閉じないという考え、すてきですね。プロジェクトデザインを学ぶという半年の講義だったけど、こんなにも自己肯定感が育ったこともとてもうれしく思います。これから社会人になる上で自信を持つことは何より土台になるし、結果的に他者を尊重することにもつながると思っていて。この講義が皆さんの自己肯定感を育て、お互いを尊重しあえるような機会になったことに感動しています。野口さんは、この講義を通して大学生から学んだことはありますか?
野口:皆さんが個性を生かして面白いものを作っていく過程を見ていて、プロジェクトデザインは、プロジェクトそのものはもちろん、メンバーの力を発揮できるようなモチベーションを作り上げていくことでもあるんだなと改めて実感しました。モチベーションを高くして作り上げたものは、深い共感を生み出すことにつながる。そうした視点を思い出せたし、皆さんと行動する中で自分自身も吸収できたと思います。
舩曵:「どうしたら楽しんで課題に取り組めるか」という視点で課題に向き合うことが、誰かをワクワクさせるような仕事につながる。それを、私自身もこの取り組みを通じて思い出せたと感じています。来年度に向けても改めて前提に置きたい考え方だなと思っています。最後に森島教授も一言いただけますでしょうか?
森島教授:学生たちは本来、大きな可能性を持っているのですが、日常生活の中で自分自身のその可能性に気づいていないと感じることが多くありました。しかし今回のゼミを通じて、学生たちは思いがけない気づきを得たように思います。居酒屋での何気ない会話やTikTokにまつわる日常的な体験談が、大人たちに驚きを持って受け入れられ、共感を呼ぶという経験をしたのです。この体験は、学生たちにとって「自分の発想がBEAMSや春華堂、電通といったプロフェッショナルに届いた」という成功体験となったのではないでしょうか。生活の中で生まれた発想が大きなプロジェクトに発展していくという経験は、「自分の中にも可能性があるんだ!」という大きな学びになったと思います。
舩曵:今後もいろいろな人との交流の輪を広げて、さまざまなアイデアを出す経験を重ねていくと、今後の社会に向けた物語を想像力豊かに作り上げていけるのではないかなと思います。プロジェクトデザインの活動を経て、新しい社会を作り上げる授業になるよう、来期の授業もさらに発展させていきたいです。本日は、ありがとうございました。