カテゴリ
テーマ

電通デザイアデザイン(DDD)は消費と欲望の関係から、さまざまなソリューション開発や情報発信を行う組織です。

今回から、DDDが2025年11月に実施した第11回「心が動く消費調査」を分析。調査結果から得られたインサイトやファインディングスをお伝えしていきます。

本記事ではDDDメンバーでZ世代当事者の平位怜が、第11回の最新調査結果を基に、Z世代の「飲み会意識」に注目して、飲み会に対するホンネや飲み会をめぐる世代間のギャップをひもときます。

若者は本当に飲み会を避けているのか?

2025年も終盤に差し掛かり、仕事納めや忘年会で慌ただしい日々をお過ごしの方も多いのではないでしょうか。近年この時期になるとマスメディアやSNSで話題になるのが、「若者が忘年会に来ない」「忘年会に誘ったのに断られた……」といった、上司世代の悲痛な声です。

忘年会に限らず、ここ数年で「若者は飲み会に来ない」「若い子はお酒を飲まない」といった声を耳にすることが増えました。それを裏付けるように「ソバーキュリアス※」や「適正飲酒」といった新たなワードが社会的に注目されています。働き方の変化や価値観の多様化、コロナ禍を経た生活リズムの変化などを背景に、飲み会文化そのものが転換期を迎えているとも言われています。

※ソバーキュリアス:「お酒は飲めるけれど、あえて飲まない」ことを選択するライフスタイルで、「Sober(しらふ)」と「Curious(好奇心)」を組み合わせた造語

一方で、SNSを見ていると、若年層が仕事終わりに友人と食事をしたり、週末に仲間と集まったりする投稿が日常的に目に入ります。
また、私自身の周囲でも、業界や業種にかかわらず、

「飲み会が全然なくて寂しい」
「社会人ってもっと飲みに行くものだと思っていた」
「先輩と“残業飯”とか行ってみたい……」

といった声を若手社員から耳にすることが少なくありません。

実際のところ、Z世代は飲み会を敬遠しているのでしょうか。
そして、世代間で語られる“飲み会に対する意識の溝”はどこから生まれているのでしょうか。

ここでは、飲み会をめぐる世代意識を丁寧に把握するために、「お酒に対する意識」と「お酒を飲む環境に対する意識」の両方の視点から、調査項目の一つとして提示した以下の2つの質問を基に分析していきます。

【質問項目】
・お酒を飲むのが好きな方か
・宴会や飲み会に参加するのは苦にならないか

25歳~29歳の「宴会や飲み会」への抵抗感は、実は“全体とほぼ変わらない”

まずは、25歳~29歳(社会人としてのリアルな飲み会経験が積み上がる年代)と、全体の意識を比較しました。

※構成比(%)は小数点以下第2位で四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%にならない場合や、テキストの記載と差が発生することがあります。(以降同様です)

 

「お酒を飲むのが好きな方だ」(「そう思う」「ややそう思う」計)と答えた人が、20歳以上全体で42.9%、25歳~29歳は36.4%となり、20歳以上全体と比べて25歳~29歳が6.5ポイント低い結果となりました。これは社会全体のソバ―キュリアスや適正飲酒の流れとも整合します。

一方で、「宴会や飲み会に参加するのは苦にならない」(「そう思う」「ややそう思う」計)と答えた人は、20歳以上全体で36.2%なのに対して、25歳~29歳は38.8%で、20歳以上全体より高いという結果になりました。

この結果は、よくある「若者は飲み会が苦手」というイメージとは異なります。少なくともデータ上では、「お酒には慎重でも、飲み会という場そのものは嫌っていない可能性が高い」ということが分かります。

お酒が好きな有職者の、宴会・飲み会に対するホンネは?

ここからさらに踏み込み、対象を「お酒が好きな有職者※」に絞り、その中で 宴会や飲み会に参加するのが苦にならないと感じる人がどれくらい存在するのかを確認しました。飲み会に関する意識は、職場の人間関係や働き方の影響を受けやすいため、本記事ではまず“仕事由来の飲み会に参加する可能性が高い層”に焦点を当てて分析を行いました。

※今回の記事における「有職者」は、公務員、経営者・役員、会社員、自営業、自由業、パート・アルバイト(学生を除く)が対象。
 

お酒が好きな人のうち、6割が宴会・飲み会が苦にならない

 

「お酒が好き」と答えた有職者890人のうち、「宴会や飲み会に参加するのは苦にならない」が58.4%、「宴会や飲み会が苦になる」のは41.6%という結果でした。

つまり、お酒が好きな人の約6割は、宴会や飲み会もポジティブに捉えているということになります。

20代も宴会・飲み会が苦にならない層が多数派

 

さらに、年代別の比率を見ていくと興味深い傾向が見えてきました。

20代ではお酒が好きな有職者のうち、60%以上が「宴会や飲み会に参加するのは苦にならない」と回答していました。一方で、40代を見ていくと、お酒が好きな有職者のうち「苦にならない」が51.6%、「苦になる」が48.4%となり、ほぼ半々という結果になりました。

つまり、「宴会や飲み会に参加するのは苦にならない」と答えた20代の割合は、“若者は飲み会を避ける”というイメージを持ちがちな40代〜60代よりもむしろ高い水準にあります。お酒を好む層に限ってみると、 この点からも、「若者は飲み会嫌い」という一般的なイメージとは異なる実態が浮かび上がってきます。

なお、25〜29歳では「お酒が好きではない」層が6割程度存在するため、若者全体で見ると“宴会や飲み会に参加しない人”が一定数いるのは自然な状態と言えるでしょう。今回はその中で、お酒を好む層に絞って比較することにより、「宴会や飲み会」そのものに対する意識をより明確に把握いきたいと思います。

宴会・飲み会が苦にならない層の20代は“つながりたい・成長したい”気持ちが強い

前出の20代でお酒好き、かつ宴会・飲み会が苦にならない層(以下「宴会・飲み会ポジティブ層」)を価値観に関する設問と照らし合わせると、いくつかの共通する特徴が見えてきました。調査のサンプル数が限られてくるため、ここからはパーセンテージではなく絶対数(サンプル数) を基準に見ていきます。

 

まず、「人と出会いたい、仲間と共感したい気持ち」という項目では、20代の宴会・飲み会ポジティブ層が同年代のお酒は好きだけれど宴会・飲み会が苦になる層(以下「宴会・飲み会ネガティブ層」)よりも明確に高いスコアを示しており、日常的に新しい人や考え方に触れたいという姿勢が読み取れます。

また、「自分とは異なる立場の人の意見や考えを知るのが楽しい」「挑戦したい・成長したい気持ち」といった項目でも、20代の宴会・飲み会ポジティブ層のスコアは一貫して高い傾向が見られました。飲み会を“ただの飲酒の場”としてではなく、人や社会とつながりや経験を広げるための機会として捉えている様子がうかがえます。

これらを総合すると、宴会・飲み会ポジティブ層の20代は、単に飲み会に肯定的なのではなく、新しい価値観や人との交流を通じて、自分をアップデートしたいという前向きな動機を持つ層であると推察できます。

さらに興味深いのは、「仕事よりプライベートを優先する」という項目との関係です。
サンプル数が限られている中ではありますが、2 0代の宴会・飲み会ポジティブ層では、この項目に「そう思う/ややそう思う」と回答した人が約9割と非常に高く、6割にとどまった同年代の宴会・飲み会ネガティブ層を大きく上回りました。

一般的には、「プライベートを大切にする若者は、仕事絡みの飲み会に行かない」というイメージがありますが、今回の結果はその逆の傾向を示しています。

この背景には、限られた時間の使い方を主体的に選びたいという、若者の意識の変化があるのかもしれません。仕事上の“義務感”から参加するのではなく、自分の成長や人とのつながりに意味を感じられる場であれば、プライベートの時間の選択肢の一つとして捉える。そのような価値観が働いている可能性があります。

つまり、宴会・飲み会ポジティブ層の20代にとって飲み会は、プライベートを割いてまで参加しなければならない“避けられないイベント”ではなく、自分の視野や関係性を広げるための前向きな選択肢として位置づけられていると考えられます。

ここまでを見ると、全体としてお酒好きではない20代が増えている事実はあるようですが、一方で飲み会に価値を感じている層も決して少なくないことが分かります。その中で、体感として「最近の若者は飲み会に来ない」点がより強調されてしまうのはなぜなのでしょうか。

その鍵になるのが、次の特徴です。

「配慮が強い」が故に若者は“飲み会に行きたいけれど動けない”

 

ここで注目したいのは、20代の宴会・飲み会ポジティブ層は「人と出会いたい、仲間と共感したい(つながりたい)気持ち 」が強い一方で、「周りに合わせたい・はみ出したくない」や「悪目立ちしたくない」といった、“対人関係における慎重さ”を示す項目でも高い値を示していた点です。特に「周りに合わせたい・はみ出したくない」は、同年代のネガティブ層の約2倍のパーセンテージに達していました。

また、「周囲の人との付き合いや関係づくりは大切だと思う」と答えた人も8割を超え、他者との関係性を丁寧に扱いたいという意識の強さがうかがえます。

宴会・飲み会ポジティブ層の20代は、人と関わりたい気持ちも、学びたい気持ちも強い。その一方で、例えば

• 「誘って迷惑になったらどうしよう」
• 「出しゃばっていると思われるのでは」
• 「先輩を誘うのはおこがましいのでは」

といった気持ちから、自分から誘ったり、企画したりする行動にはブレーキがかかる可能性があるのかもしれません。

表面的には消極的に見える若者の態度は、実は「興味がないから」ではなく、「相手への配慮」が行動を慎重にさせているという構造が背景にありそうです。

このような“つながりたいけれど動けない”という二面性が、結果として「若者は飲み会に来ない」という印象につながり、世代間のすれ違いを生みやすくしていると考えられます。

■ “世代間のすれ違い”について興味がある方は、下記記事もご覧ください
『「もっと関わりたいのに踏み出せない」若者。すれ違う職場コミュニケーションの今』 (電通報)

世代を隔てていたのは断絶ではなく、両者の“遠慮”である可能性

今回のデータが示した大きな発見は、若者層はお酒自体を飲まない割合が増えてはいるものの、お酒好きな層に関して言えば飲み会そのものに強い抵抗を抱いているわけではなく、人とのつながりや自分を成長させる機会として前向きに捉えている層が一定数存在していることでした。飲み会を“義務”ではなく、“自分で選びたい場”として扱っている若者の姿は、従来のイメージとは異なる重要な視点と言えます。

一方で、その前向きさと同じくらい “相手への配慮” が強く働くために、自ら動くことに慎重になってしまう面もあります。今回の分析は、そうした若者の二面性を浮かび上がらせる結果となりました。

こうした構造を踏まえると、飲み会を企画する側も、必要以上に身構える必要はないのかもしれません。特別なイベントとして準備するというより、日常のひと言として「よかったらどう?」と軽く声をかけてみる。そのくらいの“さりげなさ”が、若者の慎重さをそっとほどき、自然な交流が生まれるきっかけになるのではないでしょうか。

そして今年もクリスマスや年末年始といった、人と集まる機会が増える季節が近づいてきました。少し肩の力を抜いて、誰かを誘ってみたり、誘いに乗ってみたり。
この調査記事が、そんな小さな一歩を後押しし、心地よい時間を共有するきっかけになればうれしく思います。

DDDでは引き続き「心が動く消費調査」から、さまざまな観点で生活者のインサイトを考えていきます。

<第11回「心が動く消費調査」概要>
・対象エリア:日本全国
・対象者条件:15~74歳
・サンプル数:計3000サンプル(15~19歳、20代~60代、70~74歳の人口構成比に応じて割り付け)
・調 査 手 法:インターネット調査
・調 査 時 期:2025年11月7日(金)~ 11月12日(水)
・調 査 主 体:株式会社電通 DENTSU DESIRE DESIGN
・調 査 機 関:株式会社電通マクロミルインサイト

この記事は参考になりましたか?

この記事を共有

著者

平位 怜

平位 怜

株式会社電通

第4マーケティング局未来シナリオコンサルティング部

アソシエイト・プランナー

未来事業創研/DENTSU DESIRE DESIGNに所属し、未来の暮らしを起点とした事業開発や消費者研究に従事。半生以上にわたり北米カルチャーをウォッチしてきた経験を背景に、海外視点と日本の生活者感覚を横断した分析を強みとする。Z世代を中心に、価値観や消費行動、カルチャーの変化を読み解くトレンド分析に注力。

あわせて読みたい