ガサッガサッと聞こえる何者かが暗闇の中で動く音。
夜も更けた果樹園に光る2つの鋭い目。
息をひそめて見守る人々の前に姿を現したのは……
いまや現代社会の問題とされている睡眠問題。その現状を踏まえ、さまざまな企業が生活者の睡眠改善に関する取り組みを始めています。
電通の有志で集まったチーム「ねれないス」は、「寝たいけど寝られない時間(寝るまでの時間)」をちょっと有意義な活動に使うことを目的に発足。畑を荒らす動物を追い払う「害獣監視員」プロジェクトや、「ユニーク資格検定」を紹介する取り組みなど、寝るまでの時間を誰かのために、自分のために、有益な価値に変える“ナイス”な活動を実施中です。
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今回は「ねれないス」発起人の、電通CXクリエイティブセンター(以降CXCC)丸橋佳寿子が、同チームも参加する、日本の睡眠業界を盛り上げるために生まれた「ZAKONE」(ザコネ) の鈴木亮介氏と対談。活動内容やその意義、今後の展望についてざっくばらんに語り合いました。
「寝るまでの時間」に着目したユニークなプロジェクト、「ねれないス」発足の背景とは?
写真左より「ねれないス」発起人の電通・丸橋、「ZAKONE」を運営するNTT DXパートナーの鈴木氏
──まずはお2人の自己紹介をお願いします。
鈴木:普段はNTT DXパートナーで睡眠に関する業務を行っています。例えば、企業向けの睡眠改善プログラムや、睡眠に関わる悩み事の解決などです。そうした当社の睡眠事業の一つに、独立した企業コミュニティの形で「ZAKONE」があり、その運営にも携わっています。睡眠業界には一社だけではなかなか解決できない課題がたくさんあるので、さまざまな企業とタッグを組みながらこの業界を盛り上げていくことを目的に活動しています。
丸橋:電通のCXCCに所属し、アートディレクターとして活動しています。通常業務を行いつつ、「ねれないス」のようなプロジェクトなどを立ち上げて、チームを作り運営しています。
──「ねれないス」プロジェクトを発足したきっかけについて教えてください。
丸橋:最初は2005年に「ねれないス」の前身となるプロジェクトがスタートしました。当時、眠れないので睡眠導入剤を飲んでいるという知り合いが結構いたんですよね。調べると日本人の4人に1人前後は眠れていないというデータも出てきて、睡眠問題って結構深刻なのではと実感したんです。その深刻な課題については、製薬会社や寝具メーカーが解決に向けたさまざまな商品を作っています。じゃあ電通で働く私たちには何ができるのかと考えた時に、少し視点を変えて「どうせ寝られないなら、その時間を楽しんでみては」というコンセプトが生まれました。
──当時はどのような活動をされていたのですか?
丸橋:「suiming club」という名前でチームを立ち上げ、活動第一弾として「枕本」を作りました。一日の終わりに読む本で、どのページでもよいので一日1ページ開いてもらいます。何かを想像したり、遊びをやったりなど、寝ることにまつわる内容が各ページに描かれているので、それをしてみながら寝るまでの時間を楽しもうというものですね。同じ内容で通常の形の本も、「sleep book」といった形でマガジンハウスさんから1万部出版しました。
枕の形の「枕本」(下の緑のもの)と、マガジンハウスから発刊された同じ内容の「sleep book」。開いているページの写真はハンモックに寝転んだ時の景色
丸橋:ほかに、当時はやっていたチャットツール用のアプリコンテンツを作りました。チャットを終わらせることができずに寝られなくなる人が結構いたので、それをうまく終わらせられるよう、寝る時間をあらかじめ設定しておくと、時間になったら「今日は閉店します」とチャット相手に知らせたり、「蛍の光」を流してみたりするものです。
そこから業務が忙しくなり一度終了したのですが、再始動のきっかけとなったのがコロナ禍でした。当時、自宅で自粛生活をする中で不安を抱える人たちも増えていき、15年前とはまた違う問題で“寝られない人たち”が出てきていたんです。「寝られない時間を価値にする」という考え方は変えず、今の時代に合わせた睡眠プロジェクトを作ろうということで、新たに5人のチームで始動しました。
睡眠業界を盛り上げる! 「ZAKONE」への参入が、「ねれないス」の活動の幅を広げる

──現在の活動内容を教えてください。
丸橋:「寝られない時間を価値にするためには、何か世の中のためになることをするとよいのでは?」と考えた時に、害獣被害のニュースが目に留まりました。2025年はクマが問題となっていますが、前年はハクビシンが大量発生していたんです。農家さんが時間をかけて育てた作物が、ハクビシンやアライグマなどの害獣に食べられて荒らされる被害が多発していました。そこで、畑に監視カメラを設置して、夜中の寝られない時間に畑が害獣被害に合わないように不特定多数の人で気軽に監視できないかと考えました。
農家さんとのつてがなかったので、まずはそこから探しましたね。運よく、藤沢市役所の方とのつてが見つかり、その方から藤沢市の農家(果樹園)さんをご紹介いただきました。実はその市役所の方もプロジェクトに巻き込んで1年間一緒に活動していただいたので、よいご縁になりました。
害獣を監視する方法としては、畑に定点カメラを設置して、YouTubeで畑の様子をライブ配信します。害獣が来た時に、指定の電話番号にかけると、畑に設置したスピーカーから警告音が鳴るんです。少々アナログな方法ではありますが、「ねれないス」らしくゆるく活動しています。

鈴木:私も何度かライブ配信を見ていますが、まだ害獣に遭遇したことがないんですよね。比較的寝られるタイプなので、気づいたら寝てしまいます。
丸橋:それはいいですね!「ねれないス」は“寝るまでの時間を有意義にする”活動なので、監視をずっとしなくてもよくて、むしろ寝られればOKなんです(笑)。焚火を眺めるくらいの感覚でライブ配信を見てもらえたらいいですね。
──「ねれないス」と「ZAKONE」が出会ったきっかけは何だったのでしょうか?
丸橋:電通では睡眠プロジェクトとして年に1度社内イベントを行っていて、「ZAKONE」もそこに参加してくださっていたんです。「ねれないス」を運営していくうえで外部とのつながりが欲しいと思っていた時に、ちょうどイベントに参加されている「ZAKONE」のことを知り、お声がけしました。
鈴木:その後、私たちが開催している「ZAKONE Night」 にも来てくださいましたよね。月1回開催しているミートアップイベントで、「ZAKONE」参加企業の皆さまに取り組みの発表をしていただき、後半は懇親会をするというものです。「ゆるいつながり」を意識していて、ビジネスというよりはゆるく交流して仲良くなり、協業や顧客の紹介につなげてもらっています。最近はオンライン・オフライン含めて50~60人に参加していただいていますね。
丸橋:多様な方々とお話ができてとても面白いイベントですよね。私が参加した時は、企業の方だけでなく、大学の先生もいらっしゃいました。あとは不動産業の方とお話しして、よりよい睡眠のための部屋を作るプロジェクトのお話を聞いたりしましたね。睡眠はいろいろな切り口があるので、多様な業種の方とつながることができました。
鈴木:「ZAKONE」に参加されている企業数は現在270社(2025年12月時点)で、今とにかく増えているんですよ。多種多様な企業が睡眠業界に参入していることを実感しています。どの企業も「さまざまな企業とつながってスケールを大きくしていきたい」という思いを持って「ZAKONE」に集まってくださっています。
“寝られない時間”に社会貢献。「害獣監視員」プロジェクトが睡眠業界の新たな切り札に!?

──鈴木さんから見た「ねれないス」プロジェクトの印象を教えてください。
鈴木:実は私自身が「ねれないス」に初めてかかわったのは、藤沢市の農園に定点カメラを設置した時だったんです。「ZAKONE」のサイトで「ねれないス」の記事を担当させていただくことになり参加したのですが、予備知識をあまり持たずに行ったので、「農園で何をするんだろう……?」と、最初はわからなくて(笑)。
丸橋:わりと急に参加いただくことになりましたもんね(笑)。害獣監視用の定点カメラを初めて設置する時に来ていただいたので、私たちも手探り状態の中で手伝っていただきました。
鈴木:「ZAKONE」に参加する企業のほとんどが寝かせることを目的にしている中で、「寝られない時間をナイスにするという、異彩を放つ組織だな」というのが第一印象でした。
「ZAKONE」の企業一覧にも、企業名ではなく「ねれないス」として掲載しているので、電通のプロジェクトだということを知らなかったんです。藤沢市の農園で丸橋さんとお会いしてお話を聞いた時に、「さすが電通さん、発想力が豊かだな」と感銘を受けました。確かに寝られない人に対して無理やり寝かせようとするのはやぼな話だなと、私自身も気づき……。寝られない人たちに対して、その時間を少しでもよい時間にしようというのはとても有意義な取り組みだなと思っています。
丸橋:寝られない時って、「早く寝ないといけないのにどうしよう」と自分を追い込んでしまうんですよね。それよりも、寝られない時間をもっと気軽に考えて、世の中がちょっとよくなるための時間に使ったらいいんじゃないかと思うんですよ。たった数時間だとしても何かの役に立てることで、うれしい気持ちにつながるはずです。
鈴木:おっしゃる通り、寝られない時間は多くの人にとってどこか“自分を否定する時間”になっていますよね。「ねれないス」をきっかけにして、少しでも自分を肯定できる時間に変えられたら、睡眠業界にとってもよい効果が生まれるのではと思っています。
──「ねれないス」以外の「ZAKONE」の取り組みで興味深いものや、睡眠業界のトレンドのようなものがあれば教えていただけますか。
鈴木:先ほどもお話しした通り、今本当にさまざまな企業が「ZAKONE」にも睡眠業界にも参入されています。例えば、もともとサウナを運営している事業者が、睡眠によいサウナや、睡眠をいざなう香りといった新しい切り口を取り入れることで、新たな販路を獲得していく動きがトレンドとしてさらに伸びていくのではないかと。
「ZAKONE」の入会基準は、睡眠に関する取り組みをしている、または今後していこうとする組織。そんなふうに睡眠業界に入っていきたい企業や、他企業とつながってよりスケールアップしたい企業が、さらに集まってくるように思います。
また、取り組みとしては、2025年3月に多彩な参加企業と共同で、いびきに悩む人を集めた1泊2日の「いびきツアー」というものを実施しました。「ZAKONE」に参加する睡眠グッズの開発・提供企業、睡眠時無呼吸症候群の専門家、呼吸の先生などをお呼びして、呼吸法のセッションや、睡眠時無呼吸症候群に関する講話、睡眠グッズの試用やお土産としての配布を行いました。
参加者は、NTT東日本グループから約25人を募ったのですが、1週間ぐらいで、300人程度の応募がありました。そこから抽選で60名ぐらいに絞り、検査キットを送って“いびき度”のようなものを測ってもらい、いびきの“精鋭部隊”が集まって盛り上がりました。そうした複数の企業がタッグを組んで実現できる取り組みは「ZAKONE」ならではのものだと思います。
他企業とのタッグも視野に、さらなるプロジェクトの拡大を

──今後はどのような展開を考えていますか?
丸橋:「害獣監視員」プロジェクトは、2024年秋に開始してからこれまで、シーズンに1軒ずつ、計4軒の農家さんで実施してきました。28日間でのべ2万2000人くらいが見てくださることもありましたし、農家さんには好評で、もっと広めてもらえたらというお話もいただいています。
夏は特に害獣被害がひどいようで、シャインマスカットなどの高級な果物を育てる農家さんは、収穫が終わるまで畑に寝泊まりしているところもあるようです。そのため、今後は夏場に手厚く動けたらと思っています。あとは、害獣が来た時の警告音を鳴らすために電源が必要なのですが、実際のところ、電源を確保できない畑が多いんですよね。今は直売所を併設しているような電源が確保できる農家さんで実施しています。今後はソーラーパネルを使って電源を確保できればと思っているので、そうした環境面での問題をクリアにし、害獣監視ができる農家さんを増やしていけたらと思っています。
あとは、寝られない時間で監視員をしてくださる方もさらに増えるとうれしいです。害獣被害で困っている農家さんを皆で助けられるようにこのプロジェクトをどんどん広めていきたいと思っています。
「害獣監視員」プロジェクト以外ですと、各地にある小さな本屋さんに選書をお願いして、夜の眠れない時間に選書してもらった本をオンラインで読むという活動も企画しています。インターネットを通して眠れない人が選書してもらった本を購入することで、苦境にある本屋さんに貢献することもできると思うんです。そうしたテックを組み合わせた新たなアイデアをチーム内で出し合っています。
鈴木:「ZAKONE」は、これからも参加企業が増えていくと思うので、コミュニティを活用してつながりをどんどん作っていってほしいと思います。「ねれないス」が「ZAKONE Night」に登壇したのは1年前くらいですよね。その時は参加企業が150社程度だったと思うので、改めて登壇していただけたらまた違う出会いにつながるはずです。参加企業の中に、夜眠くなる本を選書している企業もいらっしゃるので、そうした企業とのコラボも考えられますね。あとは自治体も参加しているので、「害獣監視員」プロジェクトにつなげられるかもしれません。
丸橋:やはり出会いは大事なので「ZAKONE」を通して活動が広がるのはとてもうれしいですし、ぜひまた登壇したいです。きっかけをくださる「ZAKONE」さんをとても頼りにしています!
鈴木:「ねれないス」という異彩を放つグループのことを「ZAKONE」に参加するほかの企業も気になっているはずです。「ZAKONE」は寝かせるコミュニティなはずなのに、寝られないとは果たして何なんだろうということで、皆さん注目しているのではないかと思っています。今後も他の企業と組んでシナジーを生み出し、「害獣監視員」プロジェクトをはじめとする「ねれないス」の活動がもっと加速することを期待しています。
丸橋:ありがとうございます。夜の時間って、本来はもっと自由で、もっと楽しくていいと思っていて。リラックスして、自分らしく過ごした先に、きっと心地のいい眠りが待っている。「ねれないス」は、そんな夜の過ごし方を提案していけるプロジェクトでありたいと考えています。
害獣監視員には、気軽にYouTube LIVEをのぞきに来てほしいですし、「ちょっと参加してみたい!」という方も大歓迎です。Xでは、寝れない時間を自分のために使えるような“ユニーク検定”も発信していますので、ぜひチェックしてみてください。
また、私たちは、自分たちの睡眠プロジェクトを運営するだけでなく、企業の皆さんと一緒に、睡眠や夜の過ごし方に関する企画を共創する“クリエイティブ・コンサルタント”としても活動しています。「寝たくても寝れない時間を、価値に変える」――そんな発想に共感していただける方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にご相談ください!
【ねれないスに興味のある方はこちら】
◾️youtube ライブ
https://www.youtube.com/live/avV2CSU8xko
◾️ねれないスX公式サイト
https://x.com/nerenice0903
◾️お問い合わせ
nerenice0903@gmail.com
