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公開日: 2026/01/06

FUKAYOMI人増加中!「未来の消費者は何を欲望するのか」読書会レポート

こんにちは、電通デザイアデザイン(DDD) FUKAYOMIチームです。

私たちは、ヒットコンテンツによる消費者の影響をFUKAYOMI(深読み)し、未来の価値観変化と欲望を予測する専門集団です。今年7月、2020~2025年のFUKAYOMI分析をまとめた書籍「未来の消費者は何を欲望するのか―ヒット作品を読み解いて分かった6つの価値観変化―」(日経BP)を出版し、各所から多くの反響をいただいています。

そのような中、D2Cからお声がけをいただき、2025年11月にFUKAYOMIを実践する「読書会」を開催しました。本記事では、その模様と、プランニングの現場で発想力を強化するメソッドとしてのFUKAYOMIの可能性についてお伝えします。


はじめての「FUKAYOMI読書会」

読書会のきっかけはD2Cの執行役員山口浩健さんからのお声がけでした。「従業員自身がFUKAYOMIの考え方を理解し実践することで、日常のプランニング業務に役立ててもらいたい」という期待があったそうです。

D2Cは、NTTドコモが保有するデータを起点に、デジタル領域で広告マーケティングソリューションの企画・開発事業を幅広く展開する先端企業です。その中でも、山口さんが率いるマーケティング&クリエイティブ事業本部は、CX(顧客体験)における価値創造という重要な役割を担っています。そんな方々にFUKAYOMIがお力添えできるのであれば、こんな名誉なことはありません。

そこで今回は単なる「本の紹介」にとどまらず、FUKAYOMIの思考法を体験し、自分の思考にインストールしてもらうワークショップ型へと設計しました。はじめてFUKAYOMIに触れる人にどこまでできるのか……私たちなりのチャレンジでもありました。

「未来の消費者は何を欲望するのか」ってこんな本

読書会の話の前に、題材となる書籍と、FUKAYOMIの考え方についてお話しします。

https://www.dentsu.co.jp/news/release/2025/0724-010918.html

電通デザイアデザインは「欲望」を、「人間(ホモ・サピエンス)誰もが持つ不変の『根源的欲求』と、時代によって変化し世の中で広く共有される『価値観』の合成によって生じるもの」として捉えています。マーケティングで活用される「インサイト」が個人の心理を指すのに対し、「欲望」は人々の本質的な「欲しい・したい気持ち」の塊と捉えるのがDDD流です。

そんなDDDの中でFUKAYOMIチームは「未来の欲望」を予測することがミッション。消費者に広く支持されたヒットコンテンツを深読みし、ヒット要因と消費者の価値観への影響を予測し、一歩先の「欲望」を先読みします。

こうしたFUKAYOMIチームの「未来の欲望」の予測をまとめたのが本書です。2020~2025年に公開された30作以上のヒットコンテンツを「FUKAYOMI」し、今後の消費者に生じる「6つの価値観変化」を予測。そこから2030年に向けて生じるであろう3つの「未来の欲望」を考察しています。さらに、分析を踏まえた2030年の消費者像を具体的に描いた小説「未来“欲望”予想図」も書き下ろしました。本書は、これからの消費者の変化を捉え、マーケティングに活用するためのヒントが満載の内容となっています。

関連記事:“ヒット作の深読み”が、ビジネスの突破口をひらく!?
 

FUKAYOMIの考え方、何故ヒットコンテンツなのか?

では、FUKAYOMIはなぜヒットコンテンツに着目するのでしょうか。
アスキングや行動ログ分析といった定量調査や、インタビューなどの定性調査は、あくまで現在の消費者の意識や行動を調べる手法です。消費者自身がまだ明確に意識していない「価値観の変化」、そしてその価値観から生まれる「欲望」を見つけることは、現状では非常に難しいといえます。

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そこで私たちが着目したのが、ヒットコンテンツ、特に映画やドラマ・アニメといった「物語」を持つ映像コンテンツです。物語にはクリエイターや制作者自身の「個人的な欲望」が、自覚・無自覚を問わず宿っています。そして、私たちが物語を「面白い!」と感じるのは、登場人物のキャラクターや展開の面白さ以上に、その物語に含まれる「欲望」を発見し、共感し、カタルシスを得るからです。

この体験は、観客の心の片隅に“とげ”として残り、少しずつ価値観を変化させます。さらに、テレビドラマ・配信ドラマ・映画・アニメなどの映像コンテンツは、見る人の規模が桁違いに多く、世の中に与える影響も非常に大きいのです。作品がヒットするということは、その物語に含まれる「欲望」(テーマ)への支持率と、影響を受けた人の多さ・深さを示し、同時に価値観変化を促された人が多いことを意味します。

このことから、ある程度の規模感で近い将来、特定の欲望が行動や意識に現れると仮定し、未来の欲望を予測することが可能になるのです。

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初めての人がFUKAYOMIできるのか?

今回の読書会では、初めての方でも実践しやすいようにFUKAYOMIの考え方を整理したフレームワーク「4象限」を用いました。「4象限」は、FUKAYOMチームのメンバーが実際の分析で使用している発想プロセスで、手順に従って誰もが「未来の欲望」というゴールに到達できるよう工夫をしています。

「4象限」の分析ステップ
ステップ①:製作者の価値観・欲望
作品に込められた制作者の価値観や欲望を抽出し、それが視聴者心理にどう影響したかを分析します。ここでは、作品が持つ社会的・人間的テーマを見つけることが重要です。

ステップ②:作中での①の解消方法
制作者の問いが物語の中でどのように解消されたかを確認します。多くの場合、視聴者は物語のクライマックスを通じてその答えを疑似体験しますが、あえて解消しない手法も存在します。

ステップ③:更新or強化された価値観
物語のクライマックスを通じて心を揺さぶられた視聴者の価値観がどう変化したかを考察します。作品のメッセージを価値観として抽象化し、未来の社会でどんな新しい価値観として広がっていくのかを読み解くことが必要とされます。

ステップ④:未来に生まれるかもしれない欲望
新しい価値観から、未来の消費者にどんな欲望が生まれるのかを予測します。欲望が生み出す潜在ニーズや消費者の行動や文化的潮流の変化を具体的に考えるステップです。

もちろん、この4ステップを踏めば自動的に結果が出るわけではありません。特に③と④は推論力が問われます。そこで今回の読書会では、長年のFUKAYOM経験をまとめた初心者向けTIPSを解説し、さらにFUKAYOMIメンバーが各グループに入り、悩んだときのサポートや発想を広げる役割を担いました。

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以上、準備万端(?)、いよいよ読書会の当日です。

読書会当日、白熱する議論

19人が参加し、熱気に包まれる中スタートしました。

書籍の概要やポイントの説明、FUKAYOMI4象限と分析TIPSの説明のあと、いよいよFUKAYOMI実践の時間です。事前の作品セレクトで希望が多かった4つの作品を題材に、4グループに分かれて実践してもらいました。

ひとつご紹介すると、あるドラマを題材にしたチームでは、お金に関する大胆なディスカッションが生まれました。物語は、登場人物がそれぞれの立場で土地取引を通じてお金もうけしようとする展開ですが、お金を得た人が逆に不幸になっていくという逆説的な構造をどう読み解くかが鍵となりました。議論の中で、「金銭欲や所有欲を過度に追求すると、自分が本当に望んでいるものを見失う」という気づきがブレークスルーとなり、「お金の先に幸福は必ずしもない」という価値観の変化を予測しました。さらに、現在の若年世代に見られる「所有欲から所有したくない欲への変化」を踏まえ、未来では「みんなが欲しいものではなく、自分にだけ意味がある価値(モノ、コト、想い、経験)を所有したい」という欲望に変化していくと結論づけました。

この「所有欲の形が変わる」という洞察は、作品のメッセージを消費者の価値観の変化として抽象化し、そこから大胆にジャンプし欲望の変化を予測するというFUKAYOMIならではの発想プロセスをしっかりと体現しています。

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40分の短時間にもかかわらず、4グループすべてが未来の欲望仮説まで到達し、「初めての人でもFUKAYOMIできるのか?」という私たちの心配は、杞憂(きゆう)に終わりました。

「楽しい!」「業務に使える!」参加者の感想

読書会参加者の感想を一部、ご紹介します。

FUKAYOMIについて
「楽しかった!普段、人々の価値観がどう変わっていくのか考える場がなかったので、刺激的でした」
「4象限のステップ3において、作品が人々に与える影響を価値観として抽象化するところに価値を感じました」
「4象限のステップ4、未来の欲望を考えるところが難しかったです。ここは作品から離れてゼロから1を生み出すチャレンジ。でもそこが面白い」

プランニング業務に使えそうか
「4象限フォーマットが使いやすい。企画を考える際、アイデアがいっぱいでそう」
「事例を分析するときに使いやすそう」
「クライアントの直近の課題に応えるだけでなく、中長期の視点で価値創造的な企画が必要な時に役に立つと思いました」

D2C山口役員からも、「ルーティンの業務から離れて、自由な発想をする機会になりました。みんなのプランニングの引き出しが増えたのではと実感しました」とコメントをいただきました。

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事後アンケートでは満足度9割超という結果に。山口役員、D2Cマーケティング&クリエイティブ事業本部の皆さま、読書会にご参加いただき本当にありがとうございました!

FUKAYOMIのもう一つの可能性

FUKAYOMIはもともと、消費者の欲望を予測し、そこから得たナレッジをコミュニケーション戦略や商品サービス開発に活用するために開発したメソッドです。しかし、今回の読書会ではもう一つの可能性を感じることができました。

それは、「トレンドを読む力」「提案性のある企画を生み出す力」といったプランニングの基礎体力を高めるための有効なトレーニングレシピになりうる、ということです。

読書会では、FUKAYOMIの思考の枠組みによって、参加者の多くが深い洞察と発想の広がりを生みだす様が観察されました。印象的だったのは、皆さん口をそろえて第一声で「楽しかった」という言葉が出たことです。体力作りは時に苦しいものですが、FUKAYOMI式なら楽しくて長続きするプランニングの体力作りができるかもしれません。

この取り組みはまだ始まったばかりです。今後も試行を重ねながら、FUKAYOMIのさらなる可能性を追求していきたいと思います。

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著者

小椋 尚太

小椋 尚太

株式会社 電通

第4マーケティング局 未来シナリオコンサルティング部

部長(GM)

新聞担当を経て、通信事業者や外食チェーンのAEとして広告キャンペーンの立案に従事。その後、メディアプランナーを経て「電通メディアイノベーションラボ」に所属し、テレビからソーシャルメディアまで最新メディア利用インサイトの発掘と情報発信を手掛ける。2019年、未来予測による企業支援を行う専門部門を立ち上げ、知見を発展させて2021年7月に「未来事業創研」を設立。独自メソッドで企業の新規事業・新商品開発を支援。さらに2021年11月、消費者研究プロジェクト「DENTSU DESIRE DESIGN」を始動。消費行動の背景にある深層心理=「欲望」を活用したソリューション開発に取り組む。著書に『情報メディア白書2018』『情報メディア白書2019』『未来思考コンセプト』『未来の消費者は何を欲望するのか』。

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