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公開日: 2026/06/17

多数のメディアを束ねて、一つの「送客エンジン」に。BMWのクロスメディア戦略とは?

友住彩香

友住彩香

ビー・エム・ダブリュー株式会社

坂田 仁志

坂田 仁志

株式会社 電通

さまざまなメディアを有機的に連動させて広告キャンペーンの精度を上げ、来店効果も可視化する──。電通とBMWが挑んだ、最新のクロスメディア施策を紹介します。

2025年に実施された、BMWのエントリーモデルを対象としたキャンペーン「Discover BMW.」では、さまざまなメディアを組み合わせ、人流データも駆使しながら、一つの「送客エンジン」として機能させました。

このクロスメディアプランニングの背景や内容、効果について、BMW Japanの友住彩香氏と電通の坂田仁志氏に話を聞きました。本記事が、さまざまな商品・サービスのメディアプランニングの一助になれば幸いです。

プロジェクトに携わったBMW×電通のメディアプランニングチームの皆さん

各ファネルに適切なメディアを選び、一つの「送客エンジン」として機能させる

──はじめに自己紹介をお願いします。

友住:BMW Japanでブランド・コミュニケーション・マネージャーを務めています。主にペイドメディアやオウンドメディアを含めたマーケティング、コミュニケーション全体の統括を行っています。

坂田:電通の第1マーケティング局に所属し、メディアプランニングを担当しています。BMWの施策では、複数のメディアを効率よく掛け合わせる、クロスメディアの設計をしています。私たち電通は、BMWのメディア施策をメインで担当させていただいているリードエージェンシーとして、これまでもいろいろな施策を提案し、伴走してきました。

──電通報では昨年もBMWのメディア施策を紹介しました(記事はこちら)。今回初めて記事を読む方のために、昨年の施策内容を少し振り返っていただけますか?

坂田:昨年は、「BMW 5シリーズ ツーリング」のローンチに合わせて、テレビとデジタル広告、DOOH(デジタル屋外広告)を展開しました。

この施策のポイントは二つあります。一つは、テレビCM、デジタル広告、DOOHの効果を検証するために、unerry社(※1)の人流データと、電通のオンオフ統合マーケティング基盤「STADIA360(スタジア・サンロクマル)」(※2)を使って、「広告を見た人が実際にBMWのディーラーに来店したかどうか」を可視化しました。もう一つは、すでにBMWに興味を持っている層に広告を届けるほかに、「ディーラーに来店しそうな潜在層」を人流データから抽出し、その層に向けて、デジタル広告とDOOHを配信しました。

※1 unerry=人流ビッグデータをAI解析することで、人々のリアルな行動を捉え、マーケティングサービス提供やスマートシティ事業を展開している企業。データプライバシーに強みをもつ。

※2 STADIA360=ユーザーから事前にデータ利用の同意許諾を得たテレビ実視聴データと、さまざまなデータホルダーが保有するデータ群(アンケート・ウェブサイト・デジタル広告接触・アプリ計測・エンタメ・位置情報・購買・顧客のファーストパーティデータなど)を連携して、大規模IDデータ分析による多角的なコネクテッドTV上の広告の効果検証が可能。
 

──ありがとうございます。今回、メディアプランニングを行った、「Discover BMW.」はどのようなキャンペーンでしょうか?

友住:「Discover BMW.」は、BMWのエントリーモデルにフォーカスしたキャンペーンです。2025年10月27日~11月9日の2週間で実施しました。賞品が当たる試乗キャンペーンや購入サポートなど、全国のディーラーで統一して行いました。


──「Discover BMW.」のメディア施策を考えるにあたり、これまでのメディアプランニングで抱えていた課題がありましたら教えてください。

友住:本当に広告が来店につながっているのか、選定したメディアで良いかどうかを数字で可視化できていないことが課題でした。また、さまざまなメディアに広告を出すことの重要性を感じていたものの、どのような組み合わせがBMWの施策にとって効果的かを把握できていませんでした。そこで今回、多様な組み合わせで効果検証を行い、より来店に寄与できる広告配信を目指しました。

坂田:広告を見た人が来店したかどうかを可視化する試みは、前述の通り、昨年実施しました。一定の成果はあったものの、メディアプランニングとしてのまとまりが弱く、「人流データを活用する」という手法を提供するにとどまった感じでした。

そこで今回は、これまでのメディアプランニングを進化させたいと考えました。「Discover BMW.」は販促キャンペーンですので、販促にきちんと寄与できて、トップ(認知)→ミドル(興味関心)→ボトム(検索行動)、それぞれのファネルに適切なメディアを選び、一つの「送客エンジン」として機能することを目指しました。

BMW Japanの友住彩香氏


さまざまなメディアと人流データを駆使して来店効果を高める

──今回のメディアプランニングの目的について教えてください。

友住:今回はエントリーモデルにフォーカスしたキャンペーンなので、既存顧客層はもちろん、まだBMWを認知していない層や価格面で購入に至っていない層にもアプローチをすることが目的でした。合わせて、人流データを活用し、ディーラーに来店しそうな潜在層にアプローチして、来店を促すことにもトライしました。

坂田:車の販売では、試乗や体感してもらうことが最も重要です。私たちとしては、実際にディーラーに足を運んでもらうことが一番の目的でした。加えて、クロスメディアプランニングにおいて、メディアの組み合わせによる効果を可視化することも目的としていました。

──施策の内容について詳しく教えていただけますか?

坂田:トップ(ファネル)には、認知獲得のためにテレビとデジタル広告(動画サイト)を選びました。ミドルは、興味関心を高めつつ、車との親和性が高いと考えていたラジオを含む音声メディアを選択しました。ボトムは、来店や購買を考えている可能性が高い層をターゲットに、検索サイト、SNSやコミュニケーションアプリなどへのディスプレー広告を選びました。さらに、人流データを活用して、ディーラーを訪れそうな潜在層が集まる可能性が高い場所にDOOHを配信したり、その潜在層に向けて音声メディアとデジタルに広告を出しました。

 


──今回の施策の中で特にポイントとなる点は何でしょうか?

坂田:人流データを使い、潜在層に向けて音声メディアでターゲティング配信を行ったことです。また、テレビCMと音声メディアを掛け合わせた来店分析や、テレビCM、DOOH、音声、デジタル広告を掛け合わせた4つのクロスメディアの分析も初めての試みでした。

──なぜ音声メディアを選んだのですか?

坂田:音声メディアは近年注目されていますし、ドライブ中に聴くこともあり、車との親和性が高いと考えたからです。この親和性を、広告効果という形で、数値で可視化して、明らかにしたいと思い選定しました。また、テレビと音声メディアを掛け合わせた広告効果を可視化できるソリューションがあることも、今回のメディア選定の理由の一つです。

ちなみに、ミドルファネルには、上図には入っていないのですが、ゴルフカートビジョンも選びました。ゴルフという、輸入車を購買する層の趣味嗜好(しこう)に合ったシチュエーションを選び、BMWの広告に興味を持ってもらうのが狙いです。

電通 第1マーケティング局の坂田仁志氏


フルファネルで統合した広告施策が、最も来店に寄与することが実証できた

──今回の施策でどのような成果が得られましたか?

坂田:私たちは、来店効率、来店率、来店数という3つの指標を重視しました。来店効率は、人流データを活用した潜在層へのターゲティング配信が効果的でした。来店率はDOOH、来店数はテレビCMとDOOHが多いという結果になりました。

テレビCMは認知の獲得に寄与するメディアと言われますが、実際のところ、広告主は来店につながっているのかを知りたいという思いがあります。今回、データで可視化した結果、テレビCMの来店数が多いことが分かりました。BMWさんの場合、以前から、「ローカル地域は、テレビCMがより来店促進に効く」と言われていたのですが、そのことも可視化できました。

ほかにも音声メディアがとても効率が良いことも新たな発見でした。来店者のデモグラを見ると、ある音声メディアは50代女性の比率が高く、これは他のメディアにはない特徴です。最近は、ディーラーに夫婦で来店されるケースも少なくないので、そういったことが影響しているのかもしれません。音声は、今後も注目したいメディアの一つです。

──クロスメディア分析の結果についても教えてください。

坂田:テレビCMを軸に、DOOH、デジタル、音声を絡めた接触パターンが最も高い来店率を記録しました。つまり、フルファネルで統合した広告施策が、最も来店に寄与することが分かったのです。

 

友住:メディアの中でも、特にDOOHの効果は印象的でした。これまでのキャンペーンにおけるメディアプランニングでは、まずテレビ、新聞、デジタルが検討されていたため、DOOHにはあまり注目していませんでした。しかし今回、4つのメディアを組み合わせたクロスメディアプランニングを実施した結果、DOOHに接触しているときに来店率が高まることが分かりました。予算の関係でテレビはちょっと難しいとなった場合は、DOOHを組み合わせる。そういった選択肢が今回の結果を見て増えたと感じます。

坂田:おっしゃる通り、メディアプランニングをする際は、広告主からDOOHの話があまり出ないのですが、今回の分析でDOOHが大変重要なことが分かりました。

──BMWとして、他にどのような成果を感じられていますか?

友住:これまでは同じ条件での比較ができていなかったため、新しいプランニングを実施した際に、その効果が次回のキャンペーンでも再現できるのかといったことや、メディア同士を比較してどちらが有効かを判断することが難しい状況でした。その点において、今回は一つのキャンペーンで、すべて同じ目的、ターゲット、期間のもと、フルファネルでメディアプランニングを行って、横並びで効果を数値で可視化できたことが大きな成果でした。

──現場の反応はいかがでしたか?

友住:テレビCMを活用したことで、ディーラーの方から新規顧客が増えた実感を得たという声をもらいました。これはBMWとして一番聞きたかったところです。また、音声メディアを活用したことで、車利用者にも幅広く認知できて、手ごたえを感じました。

坂田:今回は、ディーラーの方から「音声メディアの広告を聞いた」という声が挙がっていたことは驚きましたね。きちんと届いていることが実感できましたし、「データからは見えない部分の可視化」もできたかなと思います。

──最後に、今後の展望をお聞かせください。

友住:BMWは、今年導入予定のニューBMW iX3を皮切りに、新たな時代の幕開けを迎えます。BMW iX3は、単なるモデルの進化ではなく、BMWブランドの未来を指し示す先駆者となります。ターゲティングだけでなく、ブランディングにおいても、電通さんと協力して進めていく予定ですので、ぜひご期待ください。

坂田:電通としても、今後もチャレンジ精神を忘れずにメディアプランニングに取り組んでいきたいと思っています。ただメディアを活用するのではなく、ちゃんと「送客されている」ことを可視化できているかを意識しながら、新たなソリューションの提案をしていきたい。BMWのような車という商材は、広告を見てすぐ購入するものでないので、ブランディングが大事です。戦略的な思考を持ちつつ、データを駆使して広告効果の数値化にも取り組み、これからもBMWさんに伴走していきたいと考えています。

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著者

友住彩香

友住彩香

ビー・エム・ダブリュー株式会社

ブランド・コミュニケーション・マネジャー

ラグジュアリーリテールでの経験を経て約4年前にBMW Japanへ。ラグジュアリーブランド時代は主にコミュニケーション、VIC Engagement、Clientelingを軸に顧客エンゲージメント設計と実運用をリード。BMWではペイド・オウンドを含むマーケティング全般を統括しながら、個別キャンペーンではプレイングマネージャーとして従事。高所得者層の理解とラグジュアリー商材のブランディングが強み。

坂田 仁志

坂田 仁志

株式会社 電通

第1マーケティング局 コネクションプランニング2部

マーケティング・コンサルタント

「広告は届いているか?」。その問いに真正面からぶつかり、データで証明している。現在は第1マーケティング局で、プランニングとバイイングの両視点から統合戦略の設計・実行・検証を推進。位置情報(人流データ)とフルファネル設計を掛け合わせ、広告接触とリアル行動の可視化を実践。CX起点で位置情報を新たなReachへと転換し、メディアをフルファネルの成長エンジンとして再定義することに挑んでいる。メディアバイイングから始まり、メディア戦略、統合ソリューション、スポーツビジネスなど、メディアとマーケティングの両領域を横断してキャリアを積んできた経験が、その設計力の土台にある。フィールドでも、マーケティングでも、勝ちにいく設計をする。社会人チームでの日本一4連覇の経験を生かし、現在は電通キャタピラーズの現役アメフトコーチとしても活動。balancing work and life — on and off the field を体現。

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