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近年の新聞広告は、「リーチが縮小している」「読者の高齢化が進んでいる」といったメディア環境の変化に加え、ウェブメディアなどと比較して「効果を数値で可視化しづらい」と捉えられることも少なくありません。そのため、新聞が持つ本来の価値を十分に伝えきれていない側面があるといえるでしょう。

メディアの多様化により生活者の情報取得行動が大きく変化する中、新聞メディアはどのような価値や役割を担っているのか――。電通では、その実態を探るため全国15〜69歳の男女8250人を対象に「新聞メディアの価値調査」(調査概要はこちら)を実施しました。

調査の結果、新聞閲読者は他メディア利用者と比べて情報感度が高く、新聞で得た知識や情報をもとにSNSなどで積極的に発信していることが明らかになりました。言い換えれば、新聞は単に情報を届けるだけのメディアだけでなく、読者の情報発信やコミュニケーションの発信を促すメディアとしても機能していることが伺えます。

本稿では、今回の調査結果をもとに、電通が提唱する新聞メディアの6つの価値軸「ANCHOR(アンカー)」と照らし合わせながら、新聞メディアが現在果たしている価値や役割について読みとくとともに、その特性が新聞広告にもたらす意義について考察します。


新聞は、ブランドと社会を「意味」でつなげる“錨(いかり)”のような存在

「ANCHOR(アンカー)」とは、電通が提唱する、新聞メディアの価値を捉えるためのフレームワークです。
その名称は、以下6つの価値軸の頭文字から構成されています。

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ちなみに、ANCHORとは英語で「錨(いかり)」を意味します。私たちは、新聞メディアが広告領域において「ブランドやサービスと生活者を『意味』で結びつけ、社会に定着させる存在」。いわば、ブランドと生活者をつなぐ、“錨”のような役割を果たし得るのではないか、と考えています。

今回の調査は、そうした新聞メディアの役割を検証するために設計したものです。その結果、ANCHORを構成する6つの価値軸のほぼすべてにおいて、新聞は他メディアと比較して高い評価を獲得しました。では、具体的にどのような価値が評価されたのでしょうか。次章から、調査結果(※1)をもとに詳しく見ていきます。

※1=本調査では、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌のマスメディア4媒体に加え、ポータルサイト、ニュースサイト、動画サービス、SNS、屋外広告などを含む計18メディアを閲読ないしは視聴している人たち(重複含む)を対象にしている(n=8250)。


広告領域において、新聞メディアがANCHOR項目の上位をほぼ独占

まず注目すべきは、「新聞(紙)」「新聞(電子版 紙面ビューアー)」「新聞社の有料ウェブ記事」「新聞社の無料ウェブ記事」の4つを新聞メディアとして見た際の調査結果です。

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調査では「次に挙げるメディアの広告で発信されるメッセージについて、どのように思うか」と質問し、その回答結果をANCHORの6つの価値軸ごとに整理・集計をしています。その結果、「新聞(紙)」「新聞(電子版 紙面ビューアー)」「新聞社の有料ウェブ記事」の3媒体に掲載される広告は、ANCHORを構成する6つの価値軸において、他のメディアと比較して高い評価を獲得しました。

中でも高い評価を得たのが、「Authority(信頼)」と「Honesty(誠実さ)」です。

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例えば、「Authority(信頼)」に該当する項目の中で、

「信頼できる情報源だと思う」
「内容が正確だと思う」
「内容が信頼できると思う」

の評価スコアを見ると、「新聞(紙)」が18メディア中で1位を獲得。さらに合計の評価スコアでも「新聞(電子版 紙面ビューアー)」が2位、「新聞社の有料ウェブ記事」が3位となり、新聞の3媒体が上位を独占する結果となっています。

また、「Honesty(誠実さ)」に該当する項目のうち、

「過度な誇張がない」
「根拠がきちんと示されている」
「社会や企業の正直な思いや本音が伝わってくる」
「誰が発信しているメッセージか分かりやすい」

では、「新聞社の有料ウェブ記事」が全18メディア中で最高評価を獲得。こちらも新聞の3媒体すべてが上位にランクインしており、新聞メディア全体の強みが表れる結果となっています。

新聞はこれまでも「信頼できるメディア」「誠実なメディア」として語られてきましたが、本調査では、そうしたイメージが業界内の認識にとどまらず、生活者の実感としても支持されていることを示す結果になったといえるでしょう。


新聞読者は本当に“情報感度が高い”のか?そのインサイトも明らかに

今回は、ANCHORに関する設問に加え、新聞メディアを閲読する読者層の行動様式や価値観をより詳しく把握するための調査も実施。調査に先立って、われわれは以下の6つの仮説を立てました。

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その結果、4つ目の「新聞はセレンディピティメディアである」という仮説こそ明確な支持には至らなかったものの、それ以外の仮説については、おおむねその妥当性を裏付ける結果となりました。

まず、「1. 新聞読者はリベラルアーツに対する意識が高い」「2. 新聞読者は、難しい時事ワードや政治・経済情勢についての理解度が高い」という結果については、多くの方が新聞読者に対して抱くイメージとも重なるのではないでしょうか。

“新聞読者は社会課題や時事問題への関心が高い”そうしたイメージが、今回の調査によってあらためて裏付けられた形です。


新聞広告はコンテンツの一部として読者に受け入れられやすい?

一方で、特にマーケティングの観点から注目していただきたいのは、「3. 新聞読者は、新聞広告を精読し、記事と同様のコンテンツとして受容している」「5. 新聞はモーメントメディア(※2)である」「6. 新聞はコミュニティメディアである」という3つの仮説です。

※2=季節の移ろいや社会の変化を実感し、それをきっかけに行動へとつなげる力を持つメディアのこと


まず、「3. 新聞読者は、新聞広告を精読し、記事と同様のコンテンツとして受容している」の仮説について見てみましょう。

「次に挙げるメディアの広告について、どう思うか」という質問に対し、「内容をしっかり見る(読む・聴く)」という項目で「新聞(紙)」が全メディア中トップの評価を獲得しました。

一般にデジタル広告は、スキップや閉じる操作を前提とした接触が少なくありません。一方で新聞広告は、記事と同じ紙面上に掲載されることもあり、読者が記事と同様に広告にも目を通し、その内容を理解しようとする傾向がうかがえます。実際、「広告を邪魔に感じる」「広告をストレスに感じる」といった項目では低い数値となっており、新聞広告が読者体験を阻害する存在ではなく、コンテンツの一部として受け入れられている様子が見て取れます。

さらに「新聞社の有料ウェブ記事」でも、「広告もコンテンツと同じくらい面白い」「広告が好き」といった項目で高い評価を獲得。紙・ウェブ問わず、新聞メディアの閲読者には、広告への関心や受容度が高い読者層が存在することがうかがえます。

次に「5. 新聞はモーメントメディアである」という仮説について見てみましょう。

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調査の結果、「季節・時節など世の中の状況にあった内容である」「世の中の動きを知る上で役立つ」の両項目において、「新聞(紙)」が全メディア中で最も高い評価を獲得しました。興味深いのは、この傾向が記事だけでなく、広告に対する評価でも同様に見られた点です。

つまり新聞広告は、単に商品やサービスの情報を届けるだけでなく、その時々の社会状況や季節感と結びつきながら受け止められているようです。広告主側の視点に立てば、新生活や防災、環境問題、地域活性化といった社会的なテーマを、生活者が季節の節目や社会の変化を意識するタイミングに合わせて新聞広告として発信することで、より深い共感や理解を得られることでしょう。

最後に「6. 新聞はコミュニティメディアである」という仮説について見てみましょう。

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調査の結果、コミュニティメディア性においては、「SNSなどネット上で発信することがある」といった、コミュニティ内での情報共有や会話の活性化につながる項目で「新聞社の有料ウェブ記事」が特に高い評価を獲得しました。

中でも、「仕事や学校で話題にして盛り上がることがある」という項目では、メディア・広告の双方で全メディア中1位となりました。特に広告に関する評価は際立っており、2位以下を大きく引き離す結果に。これは、「新聞社の有料ウェブ記事」に掲載された広告が、単に読まれるだけでなく、読者同士の会話や議論を生み出し、その先の口コミや情報共有につながっている可能性を示唆しています。


認知からロイヤルティ向上まで 新聞広告のファネル別効果

さらに、本調査では「新聞広告が消費行動にどのように貢献しているのか」についても分析を行いました。

具体的には「商品やサービスを購入・利用する際に、それぞれのメディアの広告は、どのような場面で役に立つ・頼りになる・影響があると思うか」と質問。その結果、「新聞(紙)」は「知るきっかけになる」という項目で「テレビ(放送)」に次ぐ高い評価を獲得しており、パーチェスファネル(※3)でいう「認知」フェーズにおいて強い訴求力を持つことが分かりました。

※3=人が商品を知ってから購入するまでのプロセスを段階的に示したもの。
 

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一方、「新聞社の有料ウェブ記事」は、「興味・関心」から「購入」に至るまでの各ファネルにおいて総じて高い評価を獲得しています。中でも注目すべきは、「繰り返し購入・利用の後押しになる」が全媒体中トップとなった点です。単発の購入を促すだけでなく、継続利用やロイヤルティ醸成の観点でも強い影響力を持っていることがうかがえます。

さらに「新聞(電子版 紙面ビューアー)」は、「購入・利用したものが、さらに良いものに感じる」という項目で全媒体中トップに。購入後の満足感や納得感を高め、商品やサービスに対する評価の向上にも寄与していることが分かります。

つまり広告領域において、一くくりに新聞メディアは「新聞広告」として捉えるのではなく、「紙」「有料ウェブ記事」「電子版」がそれぞれ異なる役割を担っているといえます。認知獲得から興味・関心の醸成、継続利用の促進、さらには購入後のロイヤルティ向上まで、購買ファネルの各段階に応じて活用できる点は、新聞メディアならではの特徴といえるでしょう。


新聞は「読むメディア」から「発信を支えるメディア」へ

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最後に、新聞の「購読者」の特徴についても触れておきたいと思います。まず、新聞購読者(n=3960)をセグメント化し、そのうち購読料を自ら負担している人(n=1861)においては、以下のような特徴が見られました。

・情報収集や自己成長といった目的で閲読している人が多い
・リベラルアーツ意識が高い
・デジタルメディア上で時事問題に関する発信者が多い
・発信時の情報収集源として新聞メディア全般に存在感

中でも本調査で興味深い結果となったのが「近年新聞の購読を始めた層」の行動です。

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まず、新聞閲読者(n=4100)のうち約15%の人が、政治・経済・社会などの時事問題について、SNSやブログ、動画配信サービスなどで自ら情報発信を行っていることが分かりました。この割合は、新聞を閲読していない層(n=2075)の2.8%を大きく上回っています。

さらに注目すべきは、購読開始からの期間が短いほど、その傾向が強まる点です。購読開始から5年未満の層では、その約4割がデジタルメディア上で自ら時事問題について発信しているようです。

また、発信時の情報収集源としても、新聞の存在感は大きいことも判明しました。「時事問題についてSNSやブログ、動画配信サービスなどで発信する際、どのメディアを情報源として活用しているか」と聞いたところ、新聞閲読者では「新聞(紙)」が41.8%でトップとなりました。

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加えて、購読者層では「新聞(紙)」だけでなく「新聞(電子版 紙面ビューアー)」や「新聞社の有料ウェブ記事」も高い利用率を示しており、購読期間を問わず、新聞メディア全般が情報発信時の重要な情報源として機能していることがうかがえます。

デジタルメディアが普及した現在において、新聞は単に情報を受け取るためだけのメディアではないようです。その先には、社会課題や時事問題に高い関心を持ち、自ら情報を発信しながら周囲へと広げていく人々が存在しています。そして新聞は、そうした人々にとっての信頼できる情報源として、生活者の発信行動を支える役割も果たしているといえるでしょう。


真摯(しんし)な企業姿勢を「意味」とともに届ける、新聞広告

われわれが本調査の結果を通じてお伝えしたいのは、新聞が「昔からある信頼メディア」を超えて、生活者とブランドを「意味」でつなぐメディアであるということです。それこそが、私たちが提唱する「ANCHOR」の本質でもあります。

ここでいう「意味」とは、「信頼性」という言葉だけでは語れないと考えています。広告が丁寧に読まれることを背景に、社会や季節の変化と結びつくモーメントメディア性を持ち、人々の会話や共感を生み出すコミュニティメディアとしても機能している、ということです。

コンプライアンスやコーポレートガバナンス・コードへの対応など、企業が自社の姿勢を生活者に対して明確に示すことの重要性は、昨今、一層高まっています。そんな場面で新聞は、単なるリーチ獲得のための媒体ではなく、生活者との深い理解や信頼を築くための有力な選択肢となり得る。本調査は、その可能性の一端を示す結果になったのではないでしょうか。

最後になりますが、新聞の価値をいかに定義し、活用し、マーケティング設計に組み込むか。本稿が、そのヒントになれば幸いです。


【調査概要】
・目的:新聞メディアの特性や価値の把握
・対象エリア:全国
・対象者条件:15〜69歳 ※中学生は対象外
・サンプル数:8250
・調査手法:インターネット調査
・調査期間:2026年1月16日(金)〜1月21日(水)
・調査委託先:株式会社ビデオリサーチ
・調査実施・分析:株式会社電通 新聞局

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著者

小安 雄一

小安 雄一

株式会社 電通

新聞局ソリューション戦略部

シニアプロデューサー

新聞媒体を活用した戦略的な広告企画やメディアプランニングを担当。新聞メディアの特性を深く理解し、クライアントの課題解決に向けた独創的なソリューションの構築を行う。特に新聞社のコンテンツやデータと連携した施策や、新たなビジネスモデルの開拓に注力。新聞広告の価値を再定義し、広告主と読者をつなぐ質の高いコミュニケーション設計で多くのプロジェクトを手掛けている。

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