
皆さんご存知ですか?少子高齢化と言われ続けて、ついに日本の人口のうち、2人に1人が50歳以上になりました。
長らく「若年層にリーチしたいから、まずデジタル施策を」と言われてきたデジタルメディアも、いまは中高年の視聴が飛躍的に伸びています。
特に注目すべきは45歳以上のミドルシニア層のYouTube視聴です。YouTubeは他のコンテンツ系プラットフォームの中でミドルシニアの視聴率が最も高いのです。
そこで、電通内のインフルエンサーに特化した専門チームであるインフルエンサーターミナルと、企業の動画活用を配信×分析で支援するエビリーが共同で、45歳以上のYouTube視聴傾向を分析しました(調査概要はこちら)。
調査にはエビリーが開発した国内最大級のYouTubeデータ分析ツール「kamui tracker(カムイトラッカー)」を活用。その結果、この世代は特に学習意欲が旺盛で、コメント投稿にも積極的な「デジタルミドルシニア」と呼べる存在であることがわかりました。
YouTubeは、彼らの人生の課題や欲求に直結する、極めて「アクティブで経済的価値の高い」メディアとして機能しており、新たな可能性を感じることができます。
本記事では、電通の山川綾とエビリーの佐野智子が、分析の結果から見えてきた、マーケティング活動に活用できる「デジタルミドルシニア攻略法」を解説します。

自己実現への欲求を捉える「5つのコンテンツ」
45歳以上のミドルシニア視聴者がYouTubeに求める価値は、単なるカテゴリーの枠を超え、心理的・感情的な欲求に応える以下の5つの「ピラー(柱)」に集約されることがわかりました。

01「スキルの向上と自己実現」DIYやテクノロジー解明など、自分の手で問題を解決し、確かな手応えを得る「デジタル工房」としての活用です。
02「セカンドライフと疑似体験」旅行やバンライフなど、人生後半のプランニングに向けたリサーチや、自由な時間への憧れを満たす疑似体験です。
03「共感でつながるデジタル居間」Vlogなどを通じ、同じ境遇の人々と悩みや喜びを分かち合う、相互扶助的なコミュニティがあります。
04「健康と資産」医師や投資家による専門的な解説を通じ、未来への不安を軽減する実践的な情報が重要です。
05「知的探究と文化交流」歴史や社会評論など、情報の密度と構造を重視した、生涯学習としての長尺コンテンツが好まれます。
これらのコンテンツに共通するのは、単なる情報ではなく、クリエイターの「経験に基づく生きた知恵」です。視聴者はクリエイターを「親しみやすい師匠」として、揺るぎない信頼を寄せていると言えます。また、YouTubeのチャンネルを共感できる居場所として捉えている傾向も見受けられました。
若者とミドルシニアは何が違うのか?
次に、若年層とミドルシニアの違いを紹介します。若年層とミドルシニアではYouTubeに対する「期待値」が大きく異なります。若年層がVTuberやゲーム実況など、デジタル空間でのエンターテインメントや、ファンコミュニティへの所属を重視するのに対し、ミドルシニアは「実生活での体験や学びに直結するか」を重視しています。
この違いをひと言で表すなら、若者は「誰が話しているか」を重視し、ミドルシニアは「何を話しているか」を重視する、ということです。
若年層はクリエイター自身への共感やファン心理によって視聴行動を形成しているため、さまざまな企画に挑戦しても視聴者がついてくる傾向があります。やってみた企画が若年層に人気なのはそういった理由もあるでしょう。一方、ミドルシニアはテーマへの関心から視聴を始めます。そのため、大規模なエンタメチャンネルよりも、専門性の高いニッチなチャンネルが強い支持を獲得するケースが少なくありません。

例えば、上記の表は、ミドルシニアと若年層、それぞれが好むチャンネルをジャンルごとに分け、それぞれいくつあるか集計したものです。若年層はいわゆるYouTubeならではのフォーマットを好む傾向があります。VTuberや、ゲーム実況などがそれにあたります。一方、ミドルシニアがよく見ているチャンネルは、趣味や学びが目立ちます。
広告・マーケティングの観点で見ると、この差は非常に重要です。繰り返しになりますが、若年層向け施策ではインフルエンサー本人の人気が成果を左右し、ミドルシニア向け施策では「どんなテーマを、どれだけ深く語るか」が成果を左右します。
さらに、面白いのが、エンゲージメント率です。

ミドルシニアで高いのは、スピリチュアル・オカルト(6.4%)、ペット・動物(4.5%)、社会・ニュース解説(3.9%)となり、学びの他にスピリチュアルへの関心、ペット動画の癒やしなどに気持ちが動いていると考えられます。一方、若年層はトップのVTuberが8.9%と突出しており、全体的にエンタメ要素が高いエンゲージメントを得ています。
ミドルシニアへ向けたタイアップ投稿などを考える際、若年層とは異なり、登録者数や流行のアカウントというだけでなく、テーマとの親和性をきめ細やかに見ていくことが重要です。
コメント欄に表れる深いエンゲージメント
興味深い違いは、視聴者の熱量を表出する「コメント欄」にも表れています。同一カテゴリー(アパレル)の動画で比較したところ、若年層のコメントは「かわいい」「参考になります」といった、一文程度の短い感想が中心。一方、ミドルシニアのコメントは驚くほど長く、具体的です。

動画を見て感じたことだけでなく、自分の体験や人生経験、過去の出来事まで語るケースも珍しくありません。
例えば、アクセサリーリフォームの動画であれば、「母から受け継いだ指輪がある」「自分も相談したくなった」「店舗に行く勇気が出ない」といった具体的な背景まで共有されます。これは単なる感想ではありません。動画を起点に、自分自身の人生を語っているのです。
つまりミドルシニアのコメント欄は、消費者インサイトの宝庫でもあります。何に共感したのか。どんな悩みを抱えているのか。どんな将来を考えているのか。それらが極めて高い解像度で可視化されています。
マーケティング担当者にとって、コメント欄はエンゲージメント指標ではなく、「生活者理解のリサーチデータ」として見るべき場所なのかもしれません。
この熱量こそが、購買行動にダイレクトにつながります。
「見て終わる」から「行動につながる」設計へ
ミドルシニアにとって、YouTubeはただエンタメとして楽しく視聴して終わるメディアではありません。能動的に学び、共感し、丁寧なコメントを書き、時には視聴者同士で交流をし、コンバージョンまで期待できる一歩踏み込んだメディアだと言えます。
今回の分析を通じてわかった、ミドルシニアに購買を促す3つの法則をまとめます。
法則1「クリエイターの選定」
専門知識が深く、なかなか自分では体験できないようなことを体現してくれるクリエイターがミドルシニアの心をつかんでいます。流行や登録者数だけでの選定ではなく、ミドルシニアから信頼を得られる専門性を持ったクリエイターをおすすめします。
法則2「コンテンツの選択」
ミドルシニアには、「健康」と「資産」という2大関心領域があります。これらを解決する内容はもちろん、趣味を楽しめる工夫、共感を誘うストーリーなど、「これからの人生を少し豊かにできる」という文脈がコンテンツ作りの鍵になります。
法則3「コメント欄の開放」
同じ悩みを持つ仲間のコメントが「背中を押してくれる」のがミドルシニアのコメント欄の特徴でした。他の購入者からの太鼓判が得られる、ネガティブな意見もリアルな声として参考にされるので、コメント欄の開放は、コンバージョンアップにつながると言えます。
まだ本気で開拓されていない市場、それはYouTubeを視聴するミドルシニアなのではないでしょうか?YouTubeにおけるミドルシニアの声は若年層よりも長く、丁寧で、購買につながりやすい要素を含んでいます。
ミドルシニアにとって信頼できるクリエイターを選び、人生に寄り添うコンテンツを届け、コミュニティに火をともす。この設計が「見て終わる」視聴を「行動につながる」体験に変えます。YouTubeは「若者のメディア」から「ミドルシニアの熱量も高いメディア」へ。ぜひ次のマーケティングの起点として検討してみてください。
【調査概要】
YouTube対象チャンネル:
①視聴者属性45歳以上が70%以上を占める
②登録者5万人以上
③エンゲージメント数(いいねとコメントの合計)500以上
④タイアップ件数1件以上
①〜④の条件を満たす309チャンネル
調査手法:kamui tracker
調査日:2025年7月
調査主体:エビリー
著者

山川 綾
株式会社電通
CXクリエイティブセンター エクスペリエンスニュートラルデザイン2部
コピーライター/プランナー
言葉でブランド、ビジネスの核を作り、最適解を提供してきて20年以上。課題起点でプロジェクトを設計し、ソリューションを提供することを得意とし、電通デジタルと電通の協業でインフルエンサー特化プロジェクトチーム「インフルエンサーターミナル」を発足。幅広いコミュニケーションプランニングを行っている。

佐野 智子
株式会社エビリー
コーポレート本部 人事総務部 広報グループ
旅行業界を皮切りに、高級チョコレート輸入、電子マネー、テレビ視聴データなど多彩な業界でキャリアを積む。スタートアップを中心にマーケティング・広報業務を主軸として活動し、現在はYouTubeマーケティングを手がける株式会社エビリーにて、PR戦略立案およびYouTubeデータを活用したマーケティング支援に携わる。業界を横断した多角的な視点で、コミュニケーション課題の解決を得意とする。
