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公開日: 2026/09/10

LGBTQ+2026年調査~当事者の声から見えた日常の壁とは?

電通では、6回目となる「LGBTQ+調査2026」(※)を実施。前回と同様に、LGBTQ+当事者層の意識や経験に加え、非当事者層の意識や知識、行動についても分析しました。本連載では、最新の調査結果をさまざまな切り口から読み解きます。

連載2回目は、調査結果と当事者のリアルな声をもとに制作したデジタルブック「わかったつもりとほんとのところ」の内容をもとに、制度だけでは見えにくい、当事者の日常にある困難や工夫、そして望む変化について考察します。

※ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン課題に対する研究やソリューション提供を行うdentsu DEI innovations協力のもと、電通グループのdentsu Japan内の組織であるdentsu Japan DEIオフィスが主体となり、調査を実施。
 

LGBTQ+


 


「わかったつもり」では見えない、日常に潜む負担

前回の記事で紹介したように、同性婚の法制化については全体の67.0%が賛成し、非当事者の82.6%は「同性婚が認められても自分の生活には影響しない」と回答しました。制度への理解や関心は着実に広がりつつあります。

 

一方で、「パートナーシップ制度があるのだから十分ではないか」「海外で結婚すればよいのではないか」といった声も少なくありません。しかし実際には、同性婚が法制化されていないことは、婚姻届を提出できないという一点にとどまらず、当事者の日常や将来設計にもさまざまな影響を及ぼしています。

将来について話し合うこと。
一緒に暮らすこと。
病気や事故のときにそばにいること。
人生の終盤を安心して迎えること。

本来、大切な人や愛する者同士であれば誰もが当たり前に考え、喜びを感じられるはずの日常の出来事にも、少しずつ影響が及んでいます。デジタルブック「わかったつもりとほんとのところ」では、そのような制度だけでは見えにくい日常の負担を、当事者の声とともに紹介しています。
 

結婚できないことそのものよりも、「将来を話せないこと」による大きな負担

「恋愛・結婚」のテーマでは、非当事者層の46.4%が「結婚できなくても、パートナーシップ制度があるから十分だと思う」と回答しました。結婚という形にこだわらず、互いに支え合えればよい。その考え方自体は、多様な生き方を認めようとするものにも見えます。

一方、当事者からは、結婚を絶対に必要なものと考えているわけではなくても、法律婚と同じように扱われないことで、将来の生活や関係性に不安を抱えるという声が寄せられました。中には、結婚が制度上認められていないために、自分が結婚を望んでいることをパートナーにさえ言葉にしにくく、将来について話し合う前から選択肢を閉ざされているように感じる、という声もあります。

結婚できないことだけでなく、その前段階にある、将来を一緒に考える楽しさを感じうる時間、気持ちを確かめ合い信頼を築いていく時間にまで、影響が及んでしまうことが、当事者の声から見えてきました。人生をともに歩む未来を思い描くことさえ、誰にとっても同じように当たり前ではない。その現実が、今回の調査から浮かび上がっています。

LGBTQ+
デジタルブック「わかったつもりとほんとのところ」の、「恋愛・結婚のわかったつもり」より

 

「一緒に暮らしたい」が、すぐにはかなわない理由

恋愛が進むと、「一緒に暮らそう」「いつかこんな家に住みたいね」と将来を思い描く会話が自然に生まれることがあります。しかし当事者の中には、そういった言葉を口にすること自体にためらいを感じるという声もあります。

「結婚という選択肢がない中で、一緒に住みたいと言うのは相手に重く受け止められてしまうのではないか」
「一緒に暮らすとなると、相手の友人や家族など周囲の人への説明で負担を感じさせてしまうかもしれない」
「将来の暮らしを話したくても、その先にある制度や手続きへの不安が頭をよぎってしまう」

そんな思いから、将来の話を切り出せなくなってしまう人もいます。

実際に住まい探しが始まると、内見のたびに関係性を聞かれる、男性2人で住むことを理由に大家から難色を示される、共同名義やペアローンを利用するために公正証書などの追加書類が必要になるなど、住まい探しの過程で経験する負担も寄せられました。

もちろん、当事者向けのサービスの提供も進み、すべての当事者が必ずしも住まい探しで大きな困難を経験しているわけではありません。それでも、異性カップルや法律婚の夫婦であればスムーズに進むことでも説明し、証明し、相手の理解を確かめながら進める。その小さな負担の積み重ねが、「一緒に住めばいい」という言葉からは見えにくいのではないでしょうか。

LGBTQ+
デジタルブック「わかったつもりとほんとのところ」の、「住まいのわかったつもり」より

 

病気や事故の際に問われる、2人の関係性

「医療・防災」のテーマでは、非当事者層の45.8%が「同性カップルでもパートナーの医療同意ができると思う」と回答しました。パートナーであることを伝えれば、面会や病状の説明、医療に関する確認なども問題なくできると考える人は少なくありません。

一方、当事者からは、緊急入院時に家族として扱われるか、病状の説明を受けられるか、治療に関する意思確認に関われるかが、医療機関の理解や運用によって異なることへの不安が寄せられました。パートナーシップ証明書などを用意していても、その扱いが一律ではない場合があります。

病気や事故は、準備する時間を与えてくれるとは限りません。だからこそ、当事者の中には、緊急時にパートナーと面会できない、病状の説明を受けられない、医療に関する意思確認に関われない可能性を不安に感じている人がいることを、まず知ることが大切です。医療現場での理解を広げ、対応や判断のばらつきを減らしていくことに加え、同性カップルにも法律上の婚姻という選択肢が開かれることが、いざというときの安心につながるという声もあります。

LGBTQ+
デジタルブック「わかったつもりとほんとのところ」の、「医療・防災のわかったつもり」より

 

老後や死後まで続く、見えづらい不安

本調査では、当事者が困難やもやもやを感じた経験として寄せたコメント数の第3位に、「人生の終盤・将来への不安(終活)」が入りました。

「老後」のテーマでは、非当事者層の42.9%が、「葬儀の場では、LGBTQ+当事者やその家族・友人であっても、特別な配慮が必要になる場面はないと思う」と回答しています。しかし、当事者からは、パートナーが亡くなったときに喪主になれるのか、葬儀に立ち会えるのか、財産や住まいを引き継げるのか、自分たちの関係が親族や周囲に尊重されるのか、といった不安が寄せられました。

LGBTQ+
デジタルブック「わかったつもりとほんとのところ」の、「老後のわかったつもり」より

 

「わかったつもり」のその先へ

恋愛の始まりから、住まい、医療、老後、そして人生の最期まで。異なる場面で起こりうる困難には、「大切な人との関係が法律上の家族として認められていない」という課題背景が見えてきました 。その影響は、婚姻届を出せないという一点にとどまらず、日常の至るところにつながっているのです。

恋愛を楽しむこと。
将来について話し合うこと。
一緒に暮らすこと。
病気や事故のときに支え合うこと。
人生の最期まで安心して過ごすこと。

こうした、本来であれば喜びを感じられるような人生の出来事が、人によっては不安や迷いと隣り合わせになっている。その現実を、当事者の声から知ることができました。だからこそ、「知っている」「理解している」という“わかったつもり”で終わらせず、その先にある日常へ目を向けることが大切なのではないでしょうか。

同性婚を含めた制度について考えることをはじめ、制度の前後にある暮らしや、人との関係、日々の何気ない出来事にまで目を向けること。そうした一つ一つの理解が、誰もが安心して自分らしい人生を選び、暮らしていける社会につながっていくのではないでしょうか。

デジタルブック「わかったつもりとほんとのところ」では、今回紹介した内容のほかにも、「働き方」「子ども・教育」など、さまざまなテーマを掲載しています。ぜひ、多くの当事者の声に触れ、「わかったつもり」のその先にある日常へ目を向けるきっかけとして、ご覧いただければ幸いです。

デジタルブックはこちら:「わかったつもりとほんとのところ

【調査概要】
〈スクリーニング調査〉
・対象エリア:全国
・対象者条件:20~59歳
・サンプル数:4万6658人
・調 査 手 法:インターネット調査
・調 査 期 間:2026年1月19日~1月27日

〈本調査〉
・対象エリア:全国
・対象者条件:20~59歳
・サンプル数:6240人(LGBTQ+層該当者600人/非LGBTQ+層該当者5640人)
・調 査 手 法:インターネット調査
・調 査 期 間:2026年1月19日~1月27日

注:LGBTQ+当事者層割合、人口構成比に併せて、都道府県、性別、年代(20〜30代/40〜50代区切り)でウェイトバックをかけています。
注:本調査における構成比(%)は小数点第2位以下を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。

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著者

大島 佳果

大島 佳果

株式会社 電通

第3マーケティング局 マーケティングコンサルティング1部

ソリューションプランナー

電通ワカモン所属。学生とのコネクションやラボ活動を通して得たZ世代&DEI知見の掛け合わせを武器に、これからの社会を担っていくα~Z世代の新しい価値観に立脚した戦略立案、プランニング、勉強会などを行っている。「LGBTQ+調査」「若者まるわかりナレッジ」プロジェクト担当。愛読書は6歳から読んでいる「ONE PIECE」。
海東 彩加

海東 彩加

株式会社 電通

第3CRプランニング局

コミュニケーションプランナー

コミュニケーションプランナーとして、ブランド戦略、広告企画・制作、企業コンサルティング、商品開発、研修開発などに従事。dentsu DEI innovationsに所属し、DEIをテーマにした記事執筆やソリューション開発を行っている。他にも、LGBTQ+調査の企画・実施、企業向け研修アンバス・ダイアログの開発、発達障害をテーマにしたGAP MIKKEの開発などを担当。趣味は愛犬と遊ぶことと、犬SNS研究。

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