既婚世帯の7割が共働きとなった現代、仕事と家庭の両立に悩み、多様な価値観の中で子育てに向き合う令和ママたちは、何を思い、どう子どもと接しているのでしょうか。
子育て中の母親たちが集まって発足した、電通のワークタンク「電通ママラボ」(以降ママラボ)では、2009年の発足以来、ママと家族を取り巻く状況やインサイトを定点的に観測。「ママが笑えば、日本も笑う。ママが笑えば、世界も笑う。」をモットーに、ママと子どもの本心と真摯に向き合い、課題解決策を提案してきました。
今回は、6歳と1歳の二児を育てているタレントの菊地亜美さんをゲストにお迎えして、座談会&ママラボが開発したカード型の発想ツール「ミライクパレット」(リリースはこちら)を一緒に体験。令和ママのインサイトや子育てあるあるについて語り合いました。
本記事では、ママラボメンバーの松原絵里花氏、中島弘乃氏、齋藤理恵氏が参加した前半の座談会パートと、ほか7人のメンバーが参加し、菊地さんと「ミライクパレット」を体験した後半パートを併せてお伝えします。
菊地亜美さん(前列・中央)とママラボメンバー完璧じゃなくてもいい。「こうあるべき」から解放される現代のママたち
松原:前半では電通ママラボの調査で見えてきた、最近のママたちを取り巻く潮流を基に、菊地さんと令和ママたちのインサイトについて、ざっくばらんにお話ししていきたいと思います。まずは現代のママたちが置かれた状況についてです。

菊地さんが生まれた1990年頃は、まだ専業主婦世帯が多数派でしたが、その後、共働き世帯がじわじわと増加し、2000年頃に割合が逆転。今では約7割を超えています。そのうちの多くは自分の母親が専業主婦だったため、参考にできるロールモデルが身近におらず、仕事と家庭の両立を手探りで模索している状況です。
一方で、子どもの数は減少していますが、1人当たりにかける教育費は右肩上がりです。両家の祖父母を含めた「6ポケット」という言葉もあるように、子ども市場はむしろ拡大しています。

齋藤:そんな中、ママたちの価値観も大きく変化しています。少し前までは「ママはこうあるべき」といった概念やプレッシャーが強くあり、飲み会に行くだけで批判されるような風潮も見られました。
しかし最近では、そうした画一的な「べき」論から解放されつつあります。「昔からあるもの、しきたりや常識などを大切にする方だ」と考える人は2014年から2025年の11年間で10.7ポイントダウンしました。

松原:家事についても、最新家電や家事代行サービスを積極的に利用すべき、という考え方が浸透してきました。ママたちが完璧を目指すのではなく、自分自身の判断軸で、合理的で前向きな選択をするようになってきているのが、最近の傾向だと見ています。
菊地:確かに、これまでの「こうあるべき」といった風潮は私も感じるところがありましたし、最近の傾向についても全て共感できますね。
2人の子どもを育児中の菊地亜美さん
親の「やっておけばよかった」が、子どもへの期待に変わる
松原:ここからは、最近の親子関係の変化について、次の2つのトピックから掘り下げていきたいと思います。

1つ目の「親自身の成功と後悔が子どもへの期待に」というインサイトについては、私たちが実施した調査で、「自分ができなかったことを子どもには実現してほしい」「自分が失敗したことは繰り返してほしくない」といった意識が高く出ていることから見いだしました。

この傾向は、世の中のトレンドにも反映されています。例えば、グローバル化やデジタルの進化を肌で感じているママたちが、自身の経験から「やっておけばよかった」と感じ、子どもの英語教育やプログラミング教育を早期から始めるケースが増えています。また、かつてはタブー視されがちだったお金の話も、資産形成の重要性が認識されるなかで、子どもへのマネー教育として注目されるようになりました。
中島:もう一つ、「リベンジ消費」と名付けた動きもあります。自分が子どもの頃に欲しくても手に入れられなかったシール帳を、今になって子どもと一緒に楽しんだり、親世代も夢中になったポケモンを親子で一緒に楽しんだり。幼少期の思い出を、子どもと追体験するような消費が生まれています。
菊地さんは、今になって「子どもの頃これをやっておけばよかったな」と思うことはありますか?
ママラボメンバーの中島弘乃氏
菊地:まさに英語ですね。実は今、私自身も英語を勉強しているのですが、大人になってからだと、中学英語の文法が頭に残ってしまっていて、なかなかスムーズに“会話に生かせる英語”が身に付きません。でも、子どもは英語と触れ合う環境にさえ入れてあげれば、耳もいいし吸収が本当に早い。そこに気づき、子どもには勉強として捉える前に英語になじんでほしいと、プレスクールに通わせ始めました。今、海外旅行に行くと、私は何を言われたか分からない話でも、子どもの方が「こう言っていたよ」と教えてくれます。
子どもに「やりなよ」と言うからには、自分も勉強しないと、と思って私も始めたのですが、結果的にすごく楽しくて。もともと自分がしたかったことを子どもに押し付けたいわけではなく、子どもが自ら「したい」と思えることをさせようと思っていたはずなのに、成長するにつれて「やっぱり英語はできた方がいい」なんて言っている自分がいますね。
中島:ご自身が子どもの頃にやっておけば良かったと思う英語を、お子さんきっかけとはいえ、ママになってから学び直すのはなかなか大変だと思います。きっとママと一緒に学べることは、お子さんにとっても大事な経験になりますね。菊地さんご自身が経験してきたことで、逆にお子さんに「これは経験してほしい」と思うことはありますか?
菊地:私は北海道の自然の中で育ったのですが、当時は東京にすごく憧れていて、早く上京したいとずっと思っていました。でも、大人になってから、北海道の良さがすごく分かったんです。学生時代の課外授業で牛の乳しぼりを体験したときは「何回やるの?」なんて思っていましたが(笑)、今となっては、そうした自然との触れ合いは、優しい気持ちを育み、多様な考え方ができるようになるための貴重な経験だったと感じます。
最近、娘に「牛の乳しぼりをやりたい」と言われました。今だと千葉の牧場などに足を運ぶことになると思いますが、やっぱり体験させてあげたいと思っています。当時の私は当たり前のことすぎて分からなかったけれど、子どもの時に経験することで、自分自身は30代半ばになってようやく気づいた食材の大切さなどを、もっと早く感じられる子になってくれるかもしれないと思いますね。

子どもは、親に“気づき”をくれる頼もしい存在
松原:2つ目のトピックは、「子どもの新しい価値観が暮らしに刺激と発見をくれる」というものです。小学生以上の子どもを持つ親御さんへの調査で、「子どもはどのような存在ですか?」と尋ねたところ、「叱ってくれたり、率直な意見をくれる」「新しいことを教えてくれたり、日々刺激を与えてくれる」といった回答が目立ちました。親が子どもに一方的に教えるのではなく、子どもからも多くを学び、世界を広げてもらっている。これが最近の親子関係の特徴です。

例えば、お子さんが好きなアイドルをきっかけに親も「推し活」にハマることもありますし、私自身の経験で言うと、息子がハマっているアンティークコインの趣味に付き合ううちに、親の世界も広がっていきました。
教育に関しても、「親ができる限りお手本にならなければ」という意識よりも、「親も未熟だから、子どもと一緒に成長していきたい」というスコアの方が高くなっています。性教育や多様性、AIなど、親世代が学んでこなかった新しいテーマについては、学校で学んできた子どもの方が詳しかったりする。そうした中で、親も一緒に学んでいく「伴走型の教育」が、一つのキーワードになっていると感じます。
ママラボ所長・松原絵里花氏
齋藤:菊地さんは、お子さんが生まれて、子育てを通じて世界が広がったり、新しい価値観に触れたりしたと感じることはありますか?
菊地:それは本当にたくさんありますね。特に、娘の言語能力の高さにはいつも驚かされています。
幼稚園に入って、自分でお友達ができた3歳の頃、娘から「○○ちゃんと△△ちゃんは、ママからできたお友達でしょう?幼稚園でできたお友達は“私からの友達”だから、休みの日は私の友達とも遊びたい」と言われたことがありました。確かに、それまでは私の友達の子どもと遊ぶことが多かったのですが、そんなふうにちゃんと言語化できるんだ!と。どちらの友達の方がいい、という話ではなくて、ただただその表現力に「親バカかもしれないけど、すごいよね」と、夫と2人で感動してしまいました。
あとは、私が夫とキッチン周りのことで少し言い合いをしていたときのことですね。私の中ではけんかというほどではなかったのですが、すぐに普通の話に戻ったら、娘が走ってきて「あ、今みたいなことね」って言ったんです。これは以前、「どうしてパパとママはごめんねって言わないのに、私にはすぐ『ごめんねって言いなよ』って言うの?」と聞かれていたのですが、その答えが分かった、ということだったみたいで。子どもって本当によく聞いているし、見ているんだなとハッとさせられました。
齋藤:娘さん、よく見ていますね!まさに、データで出ていた「子どもが率直な意見をくれる」という姿ですね。そうした日常の何気ないやりとりの中でも、私たち親の価値観が広がる場面はいろいろありますよね。
ママラボ副所長・齋藤理恵氏
中島:お子さんをきっかけに始めたことや、初めて行った場所などはありますか?
菊地:長女は工作が大好きなんです。私は手先が不器用で何かを作ることがすごく苦手だったのですが、牛乳パックやトイレットペーパーの芯を「捨てないで!工作に使うから」と言われるので集め始めています。段ボールでパソコンを作ったり、折り紙でボタンを作ったりしているのですが、その発想力に驚かされて、私も子どもの趣味に付き合うようになりました。もともと自分が知らない分野なので、どうやってその才能を伸ばしてあげたらいいか手探りですが、100円ショップに行くと工作の材料を買ってあげたりしていますね。
松原:もともと自分が得意ではない分野でも、子どもと一緒に挑戦したり、世界を広げていったりするのはすてきなことですね。「一緒に楽しもう」という姿勢こそが、今の時代のすてきな親子のあり方なのだと感じます。現代の子育ての様子がリアルに見えてくるエピソードをお聞かせいただき、ありがとうございました!
「分かる!」の連発。ママラボ約30人が生みだした「ミライクパレット」を体験
続いて、ママラボのメンバー7人が合流し、菊地さんと8人でミライクパレットを体験しながら、「子育ての悩み」や「あるある」について話し合うことに。
ミライクパレットは、ママラボメンバー約30人が「リアルな生活実感」と、独自の「未来予測眼」をもって、子育てに向き合う家族の悩みや課題を、50音のカルタ形式で表現したツールです。絵札を取ると、各カードの背景となる定量・定性データやインサイトが記載された解説シートがもらえ、体感としての「あるある」だけではなく、その状況をとりまく情報について知ることができます。
ミライクパレット
スタート時からゲームは白熱。8人は和気あいあいと話をしながらも、札が読まれるたびに素早く絵札に手を伸ばします。みんながなかなか見つけられなかった絵札を、体を乗り出して取るメンバーがいた場面では、自然と拍手が巻き起こりました。
合間には、読み手のメンバーによる解説が入ることも。その内容に、「面白い!本当に全部共感します」「分かる!」「これは悩みどころ」といった共感の声が上がり、互いにうなずき合うシーンも見られました。また、自分が考案した札を手に「これはどうしても入れたかった!」とメンバーが話す場面もあり、悩みながらも日々子育てに向き合うからこそ見える、リアルなインサイトに菊地さんも納得の表情を浮かべていました。
和気あいあいと盛り上がった「ミライクパレット」体験。優勝は9枚を獲得した菊地さん。
幼稚園からの電話にドキッ!子育てあるある連発の座談会
ゲーム終了後は、カードの中で気になったトピックスについての意見交換が行われました。菊地さんが選んだカードは、「呼び出しだ…!バイブで震える携帯と私」と「みんなで一緒に総倒れ 感染は子ども発」の2枚です。
1枚目のカードを選んだ理由として、仕事中に幼稚園から着信があると、状況を聞く前から「大丈夫ですか!?」と深刻な声が出てしまうくらい、ドキドキするという心境を吐露。「状況を聞いてもどうにもできない」「仕事の関係者に伝えるのも気が引ける」など、幼児期の子どもを育てるママならではの複雑な思いを伝えると、ママラボメンバーも「(幼稚園・保育園からの着信は)本当にドキッとしますよね」とそれぞれが振り返りました。
さらに、菊地さんは幼稚園からの電話にすぐ気づくよう、あるヒット曲に設定していたところ、自家用車の中で同じ曲がかかった際に、“電話モード”が発動して「ハッ」となったというチャーミングなエピソードを披露し、場を和ませました。
ママラボメンバーはそれぞれ、「これがつわりか 経験したことない体調不良」「有給もパパの育休も当たり前の時代 はよ来い」「タイパ子育てで心に余裕 笑顔の夫婦で子も笑顔」などのカードをセレクト。
つわりが重くて2~3カ月会社を休み、毎日点滴をしていたものの、つわりがどういうものかを分かってもらえない人に説明するのが難しかったエピソードや、電通では約1年間育休を取る男性もいるけれど、自営業の夫などは社会が変わらないとやはり休むのが難しいといった各自の実体験が明かされました。
「ルーツは一緒でも時代が違う 価値観のアプデ頼みます」のカードに対しては、第一子が20歳、第二子が4歳というメンバーから貴重な話が。第一子の子育て中と今は環境が大きく変化しており、「していいこと、いけないこと」の認識の変化や、便利なツールの登場、社会の見る目が異なることを実感しているといった、リアルな思いが語られました。
変わる子育て事情も、リアルなママたちの声が“次の一手”につながる
トーク後、ママラボメンバーからは、「呼び出しだ…!バイブで震える携帯と私」の解説シートに記載された「呼び出しが多い時期は2歳がピーク」という情報についての説明が。「こうした情報を補足することで、まだママになっていない人や、子どもの事情に精通していない人も心配しすぎないでもらえるように考えた」という制作サイドの意図が語られました。
最後に菊地さんからママラボメンバーへ「下の子が生まれた時、あえて長女との時間をつくっていたが、こうした時間は大きくなっても継続した方がいいのか?」という、自身の悩みにまつわる質問がありました。
年長と小学6年生の息子を持つメンバーは、「現在それぞれが中学校/小学校の受験期ということもあり、両方に対してほぼ1対1で接している」と回答。上の子はある程度大きくなったため、下の子にかかりきりになっていたら、上の子が不安定な状態に。そこで自分が上の子を担当し、下の子の相手を夫に任せたら落ち着いてきた、という実感のこもった話が伝えられました。
また、小学4年生と1年生の娘がいるメンバーは、娘たちから「ママとの時間がほしい」と言われ、寝る前に5分間それぞれと2人きりで話す時間を大事にしているという、多忙な中での対応を語りました。
菊地さんは「リアルな話を聞けて、すごくためになりました。上の子が大きくなっても一人一人との時間ってやっぱり大事ですよね。自分でも取り入れます」と笑顔を見せ、現代の子育てを実際に体感しながら、令和ママの悩みやインサイトを探る座談会は終了しました。
ママラボでは引き続き、現代のママインサイトや子育て中の人々を取り巻く状況について、調査と深掘りを進めていきます。