ママと、家族はここまで変わった!~経年比較データから見るママの現在地~No.2
働くことが「ワタシの自信」につながる!
「子育てとキャリアの両立」に向けて模索を続けるママたち
2024/07/22
電通ママラボチームが2014年と2022年におけるママの意識や価値観をさまざまなカテゴリで抽出し、比較分析を行うことで「イマドキママ(0~2歳の乳児を育てるママ)」の実態を紹介する本連載(調査概要はこちら)。
第1回は、「“イマドキママのリアル”を知る3つのキーワード」と題して自己意識と家族観について紹介しましたが、第2回はキャリア意識について考察します。
<目次>
▼就業率75%以上!「働きながら子育て」が当たり前の時代
▼仕事で得られる収入や経験が「ワタシの自信」に
▼ママが直面する「横×縦」のキャリア視点
▼変化も取り入れて「家族全体で」子育てと仕事の両立やキャリア形成に向き合う
▼「イマドキママ」のキャリア意識:3つのポイント
就業率75%以上!「働きながら子育て」が当たり前の時代
本記事の前提として把握しておきたいのが「ママの就業率の推移」です。厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、児童のいる世帯における母親の就業率は2022年で75.7%と、ママの4分の3以上が何らかの仕事に従事していることが分かります。2013年の63.1%と比較すると12.6ptも上昇しており、この10年で就業率が大きく変化したといえるでしょう。また、内訳としては正規雇用が増加しています。
電通の大規模データベースを活用した今回の調査でも、ママの職業観は大きく変化しています。2014年と2022年を比較すると「女性は自分の職業を持った方がよい(74.8%→89.8%)」「結婚しても女性は仕事を続けるべきだ(62.7%→83.3%)」がそれぞれ15~20pt大きく上昇しています。一方で「子どもが小さいうちは多少我慢しても子育てに専念すべき(68.3%→50.5%)」は17.8pt大幅に減少しており、結婚や出産を経ても仕事を続けることが当たり前、という意識が定着傾向にあることが分かります。
背景として、スキマ時間に働ける仕事の増加や在宅での仕事スタイルの拡大などの「働き方の多様化」が近年になって急激に進んだ影響が挙げられます。子育てをしていると、まとまった時間を確保することが難しい場合や、突発的なアクシデントに対応しなければならないことも多くあります。そんな中でも柔軟に働ける選択肢が増えたことが追い風になっているのです。
仕事で得られる収入や経験が「ワタシの自信」に
「働きながら子育て」の定着は、ママたちの精神面にも影響を及ぼしています。自分のよりどころについての質問では、「家族」を筆頭とするトップ3項目に大きな変動はありませんが、4位以下では仕事に関する項目の比率が高まっています。特に「仕事による収入(11.7%→25.1%)」「仕事で得られた能力、技術力(11.3%→18.9%)」は、順位も大きく上がりました。
「家族を一番に考える」というママとしてのコア意識を維持しながらも、仕事を通じた収入やネットワーク、経験が個人としての自信につながっている点が大きな特徴といえるでしょう。この傾向は前回触れた「自分らしさの尊重」に通じるものでもあります。
ママが直面する「横×縦」のキャリア視点
ママにとって、仕事を通じた収入や経験が「自分らしさ」につながる重要なファクターであることが分かってきましたが、中長期的なキャリアについてはどのような意識を持っているのでしょうか。電通ママラボではこれまでも共働き世帯に着目しており、2018~19年の連載記事(参考記事はこちら)では「女性が直面する2つのキャリア視点」に焦点をあてました。
2つのキャリア視点とは、まずは①「働き続ける」という横の視点と、その上で②「キャリアアップ」を目指すという縦の視点です。働きながら子育てをする比率が高まる昨今では、両方の視点はママにとってますます現実的なものになっています。
まず①「働き続ける」横の視点ですが、前述したように「結婚しても女性は仕事を続けるべきだ」と考える比率が8割を超えています。さらに、「いつでも転職できるよう備えておくべきだ(11.2%→21.4%)」「転職は自分のライフワークと出合うための手段の一つだ(9.0%→16.3%)」といった項目も大きく増加し、中長期で働き続けることに前向きな姿勢がうかがえます。「子育てと仕事の両方を大切にしながら、キャリア形成を視野に入れて人生を中長期的にとらえるママ」が増加しているのです。(転職や昇格意識は両立が軌道に乗ってからの方が実感を伴いやすいため、幼児ママを対象に分析しています)
一方で②「キャリアアップ」を目指す縦の視点では「上級管理職や役員を目指したい(2.2%→5.1%)」という意識はいまだ数%にとどまっているものの、全体の半数以上が「女性の上司や経営者の下で働くことに抵抗感はない(40.4%→49.0%)」と回答しています。経営層や管理職における女性比率の向上に伴い、今後はロールモデルとなる存在と交流をしたり、自身のキャリアアップについてイメージする機会も増えると予想されます。このように「横×縦」の2つの視点からひもとくと、ママの中長期的なキャリア意識は、少しずつではありますが着実に育まれています。
変化も取り入れて「家族全体で」子育てと仕事の両立やキャリア形成に向き合う
一方で、関心のある環境・社会問題についての質問では「待機児童対策・子育て支援」が68.7%で1位、「働き方改革」が50.5%で5位となりました。いずれも働くママが常に直面する課題です。
このうち、「働き方改革」については「ワークライフバランスを重視したい(52.4%→61.2%)」「在宅勤務やテレワークをしたい(37.8%→54.6%)」といった項目が特に大きく増加しており、家庭生活を大事にしながら仕事もスマートに続けたいという意識がうかがえます。(2014年時点では聴取項目に含まれていなかったため、聴取を開始した2019年と2022年を比較しています)
働くママは、非常に慌ただしい毎日を過ごすことが多いですが、さまざまな環境の変化を取り入れながら、両立に向けた模索を続けていることが分かります。
さらに忘れてはならないのが、チームとしての家族の存在です。ママラボでは2018~19年の連載記事(参考記事はこちら)で、夫婦2人のキャリアを中長期視点でとらえ、お互いの仕事のベストなバランスを探す「ファミリーキャリア」という意識に着目しました。
本連載第1回の家族観の説明で触れた「家族のチーム化」に伴い、今後この「ファミリーキャリア」はますます重要度が高まっていきます。ママラボでは、子育てと仕事の両立や中長期的なキャリアアップに関して、ママが一人で思い悩むのではなく、家族全体で向き合う傾向が強くなると予測しています。
「イマドキママ」のキャリア意識:3つのポイント
第2回で考察した「イマドキママ」のキャリア意識は、「ママになっても働き続けるのが当たり前」「家族が最優先だがキャリアも“ワタシの自信”に」「変化を取り入れながら“家族全体で”両立を模索」という3つのポイントにまとめられます。また、その根底に「働き続ける」×「キャリアアップ」という、女性が直面する2つのキャリア視点が存在していることも重要です。
このような状況を受けて、働きながら子育てをするママや家族全体を支援する商品・サービスやコミュニケーションへの支持が高まっています。子育てと仕事の両立を模索する「イマドキママ」の笑顔が増えることを願って、電通ママラボは今後も活動を続けていきます。
次回は、「イマドキママ」の食・健康意識についてお伝えします。