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ママと、家族はここまで変わった!~経年比較データから見るママの現在地~No.3

ワタシらしく人生を切り開く!
「イマドキママ」の食意識とこれからのウェルビーイング

2024/09/05

ママラボロゴ

電通ママラボチームが2014年と2022年におけるママの意識や価値観をさまざまなカテゴリで抽出し、比較分析を行うことで「イマドキママ(0~2歳の乳児を育てるママ)」の実態を紹介する本連載(調査概要はこちら)。

第1回は、「自己意識と家族観」、第2回は、「キャリア意識」について紹介してきました。第3回では、イマドキママたちを中心とした「食・健康意識」について考察します。

<目次>
「手作り神話」からの解放。「家族との時間共有」重視へ

ソーシャルグッドは家族や自分にとっても良いこと

脱お疲れママ、「自分らしく」健美な姿を目指したい

モヤモヤ不調はコントロールしながら生きていく

ママたちのウェルビーイングのこれから

「イマドキママ」の食・健康意識:3つのポイント

「手作り神話」からの解放。「家族との時間共有」重視へ

これまでの連載でも触れてきたように、今やママの就業率は75%以上。「働きながら子育て」するのが当たり前という意識が定着傾向にある時代となりました。これまでの「べき」の呪縛から解放され、「自分らしさ」を重視する意識・価値観の変化は、食生活意識においても顕著にみられます。

電通の大規模データベースを活用した今回の調査で、2014年と2022年の食意識の変化を比較すると、「調理済み冷凍食品は手間がかからず便利だと思う(87.7%→97.5%)」「家族と一緒に食事をとることが多い(77.3%→85.0%)」と、一から手作りする手間を減らして家族一緒の時間を確保するというスコアが増加。一方で、「かならず子どもには朝食を食べさせている(79.7%→72.9%)」は減少傾向にあり、食事に対する「こうあるべき」といった固定観念は薄れる傾向にあることが分かります。

「手作り神話」からの解放。「家族との時間共有」重視へ
これらの意識の変化は、コロナ禍において、家事負担感が増えたことによる反動や、ニーズに応えるように家事負担を軽減するサービス提供が加速したことにも起因すると考えられます。実際に、冷凍食品市場・食品宅配市場も伸長傾向にありますが、冷食・宅配以外にも、ネットを中心に「夕飯にコンビニ食の活用はあり!」「市販の離乳食も勉強として活用!」など、「食事に関しての“省手間”は、むしろ自分なりの賢い工夫で価値あり」とポジティブに捉える声も目立ちました。

コミュニケーションにおいても、家事負担の軽減を肯定すること、その分、家族のハッピーな時間を創出してくれることを訴求する企業からのメッセージは、イマドキママの心を捉えているように思います。

ソーシャルグッドは家族や自分にとっても良いこと

昨今、「記録的値上げ」「値上げラッシュ」と騒がれるように物価高騰が続き、節約意識が高まっているといわれています。その中で、食卓まわりでの新たなトレンドとして、新しい食材を買わずに自宅にある食材を自分なりに工夫して使い切ろうという「アルモンデ(=あるもんで)」が注目されました。

大手レシピ検索サイトの検索傾向では、「メニュー名」よりも「食材名」の検索が伸長傾向にあるそうです。今回の調査においても、2022年時点のデータで「食品ロス(廃棄)を出さないように気をつけている(46.5%)」という結果となり、育児・家事に忙しいママたちにおいても、工夫して食材を使い切りながら食卓を回している様子もみられました。

また、2020年7月1日から「レジ袋の有料化」が義務付けられたことを踏まえて、「買い物はエコバッグを持参するようにしている(78.8%)」と8割近いママたちがエコバッグ利用者であることが分かりました。

これらの結果からもみえるように、環境やエコ意識は、社会が取り組むべき問題から、家庭として当たり前にアクションするもの、かつ、自分や家庭にとってもメリットがあるもの、といった意識が芽生えつつあるのではないかと考えられます。

環境問題への関心を子どもの年齢ごとに見てみると、下図の通り、年齢が上がるほど高まる傾向にあり、子どもが小・中学生の時期にピークになることが分かります。

要因としては、学校教育の他に、長期休みのイベントや親子のお出かけ先など、子どもと一緒に参加できる場で、SDGsをとりあげる企画が積極的に行われていることも大きいでしょう。例えば、親子で遊べる施設で「『昆虫食』を食べてみよう!」といった企画が行われており、このような親子での体験を持つことも、ママたちが環境問題をより身近に感じる一助になっていると考えています。

環境問題への関心


脱お疲れママ、「自分らしく」健美な姿を目指したい

次に、ママたちの健康意識をみていきましょう。

2014年と2022年比較で、健康に関連する意識を比較すると、「保険適用外の治療(歯、目、美容など)にお金をかけてもかまわない(10.0%→23.1%)」「ストレスを発散するための自分なりの方法がある(24.2%→32.9%)」「健康に役立つなら多少の支出は苦にならない(13.2%→17.7%)」「健康のために毎日取ることを習慣にしている食べ物や飲み物がある(18.4%→28.5%)」といった項目のスコアが増加しています。

こうした意識変化の背景には、ママたちの就業率の高さや経済的に独立していることが前提にあるでしょう。こうした「自分らしく」健美でありたいといった意識の高まりからは、「家事・育児を中心にして自分のことは後回しにすべき」といった母親像ではなく、「母になっても社会とのつながりを意識して自分と向き合う」イマドキママらしい姿がうかがえます。

脱お疲れママ

モヤモヤ不調はコントロールしながら生きていく

同じく、2014年から大きくスコアを伸ばした項目として、「悩まされている症状(月経前症候群〔PMS〕19.4%→29.4%)」があげられます。この悩みのスコアが10ポイントも高まったのは、ママたちが、家庭内と社会における役割の増加でより負担を感じている表れなのかもしれません。

しかし、重要な点として着目したいのは、モヤモヤ不調を、これまで自覚症状があっても諦めたり、見て見ぬふりをしたりしていたママたちが、自ら受け入れて、できる範囲で対応していこう、上手に向き合っていこうという兆しがみられることです。

昨今、女性の体におきる変化をテクノロジーで解決しようとするフェムテック市場や、更年期を迎える女性の体におきる不調をサポートするメノテック市場が伸長傾向にあります。このことからも女性たちが、少しずつ前向きに自分の体の状況と向き合う方法や選択肢が増えたといえるでしょう。

ママたちのウェルビーイングのこれから

将来的に子どもを持つことを考えている女性にとって、妊娠・出産を迎えることは、大きなライフステージの分岐点であることはいうまでもありません。女性の社会進出が進む一方で、キャリアと出産(妊活)の選択に迫られる女性たちの悩みも表出しつつあります。そんな女性たちのキャリアと出産を両立する人生の選択肢の一つとして注目されるのが「卵子凍結」です。

身体的な影響が大きく、出産かキャリア(現役続行か)の選択を切実に迫られる女性五輪アスリートが、自らの体験談として「卵子凍結」について語ったことも注目されました。また、特別な職業や特定の状況にある人だけでなく、東京都が、2023年度から健康な女性の「卵子凍結」にも費用援助を拡大すると公表しました。これからママになる可能性を考えている女性たちの、自分らしいライフプランを描く一つの選択肢として、賛否含めて、議論されていくテーマになるでしょう。

体の変化への対応だけではなく、ママたちの心のウェルビーイングも重要な課題です。これまで出産・産褥(さんじょく)期といった出産に関わる負担のケアは、身体的な産後の体を休めることに焦点があてられてきたように思います。最近は、加えて「ママの一人時間」の創出をサポートするような動きも出てきました。「一人時間の提案」をテーマとした雑誌の特集が組まれたり、旅行業では、「ウェルネス(ヘルス)ツーリズム」でママのための一人旅プランが推奨されたりしています。

「ウェルネス(ヘルス)ツーリズム」は、観光庁によって「自然豊かな地域を訪れ、そこにある自然、温泉や身体に優しい料理を味わい、心身ともに癒やされ、健康を回復、増進、保持する新しい観光形態」と定義され、市場規模は約96兆円(22年時点)といわれています。このような市場においてもママ向けのサービスが登場していることは、今の時代ならではの動きだと考えています。

このように、ママのウェルビーイングの心理的側面にも着目したサポートも広がりをみせています。自分軸(自分でコントロールできる状況)と他人軸(自分ひとりではコントロールしにくい状況)のバランスが保ちにくい出産・子育て期に、自分軸で過ごせる時間や選択肢が広がりつつあることは、ママたちが自分らしく人生を進んでいくためにも重要な要素であると考えます。

「イマドキママ」の食・健康意識:3つのポイント

第3回で考察した「イマドキママ」の食・健康意識は、「(手をかけるのではなく)時間の共有重視へ」「エコは(社会が取り組むものから)自分も社会もうれしい家庭でのアクションへ」「体も心も『自分らしく』コントロール」という3つのポイントにまとめられます。

まとめ

今回の調査では、食・健康意識の中でも、イマドキママが自分の気持ちも大切にしながら人生を歩んでいこうという姿がみえました。「ママが笑えば、日本も笑う。ママが笑えば、世界も笑う。」をコンセプトに活動しているママラボとしても、「イマドキママ」たちの動向を注視していきたいと思います。

第4回は、「買い物意識」をテーマにお届けします。

【調査概要】
データソース:電通d-campX 2014年/2022年実施調査
調査地域:関東圏
サンプル数:乳児ママn=310(2014年)/n=273(2022年)
     ※複数回に分割して聴取のため、n数は若干の変動あり
 
概要表
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