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セカイメガネNo.28

名前はどうあれ、プーティン

2014/10/22

この40年ほどでフランス系カナダ文化は完璧に変貌を遂げた。もはや以前どんな姿だったのか想像できないほどだ。自己主張と世代交代の2、30年を経て、ケベックはすっかり新しい社会に生まれ変わった。

けれども、私たちは自分が生まれる前の食文化にとらわれている。ヨーロッパ、アジア、地中海地域が数世紀にわたって磨き上げてきた食を誇る一方、私たちは依然として過去の食文化に生きている。フランス語圏のケベック市民は今や違いの分かる美食家として目新しい料理を楽しみ、世界レベルの何百ものレストランを持つ街に暮らしているというのに。

ケベックの伝統料理を語るとき、私たちはどうしても声を潜めてしまう。子ども時代、食卓にどんな料理が並べられていたか、フランス系カナダ人に聞いてみるとよい。決まりきった答えが返ってくるだろう。シェパードパイ。煮豆。ポークソーセージ。ブレッドプディング。豆スープ。

結婚式、記念行事、葬式には、ごちそうと称して耳を切り落とした栄養価のまるでない白パンのハムサンドイッチが振る舞われる。甘ったるいからしがパンの間に塗ってある。それから祖先が煙草臭い居酒屋で出していた固ゆで卵、ウインナー。その店にたむろする酔っ払い客たちのように、すっかり時間がたった酢漬けの代物だ。

一言で言えば、私たちの日々の食事は味気なく、まるで面白みのないものだ。ひとつだけいいことがあるとすれば、少しもかまずに胃袋に放り込めることくらいだ。

だから、フランス系カナダ料理の中でも最も味気ない「プーティン」が、私たちの国以外で賞味されていると聞いて仰天した。「プーティン」はフライドポテトに、味のない粒チーズ、グレービーソースをかけた料理だ。その勢力範囲はカナダ国境を越え、北アメリカ、ヨーロッパを侵略し、日本に及んだ。「プーティン」のおかげで食文化の多様性が広がると擁護してもむなしい。私たちの過去の醜態を取り繕うだけだ。食材の原型を失った、自己嫌悪と身体不適合の固まりが動脈を容赦なく痛めつける。間違いなく保証できるのは、食後30日間消化不良の日々を味わえることだ。

けれども心ひそかにだが、つむじ曲がりの私は、フランス系カナダ料理史上最悪の一品がグローバリゼーションの波に乗っている現象を喜んでいる。世界の人々が私たちの過去をそれほど愛してくださるというのなら、私は大歓迎する。

(監修: 電通イージス・ネットワーク事業局)