データで見るハロウィーン。
~モバイル空間統計で盛り上がりを可視化~
2014/12/10
はじめまして、吉川隼太です。
ビッグデータ活用が叫ばれて久しいですが、その中でも今後盛り上がるであろうものの一つに「位置情報」があります。われわれは数年前から位置情報を活用したマーケティング支援に取り組んでおり、本記事ではドコモ・インサイトマーケティングが提供するモバイル空間統計(※1)を用いて、今年のハロウィーンブームをデータで見るとどうだったのか、六本木のハロウィーンイベントROPPONGI HALLOWEENの結果を中心に紹介します(※2)。
ちなみに、ROPPONGI HALLOWEENとは、2014年10月26日(日)11:00~18:00に六本木商店街振興組合の主催で行われた、六本木初の街全体を巻き込んだハロウィーンイベントです。フードコート、スポンサーブース、物販などを行うマーケットストリートや、六本木通りから外苑東通り、星条旗通りまでを練り歩くダンスパレードなどを実施していました。
もともとのこのイベントは、六本木という街を、会社帰りのサラリーマンだけでなく、休日には家族連れにも来てもらえる街にしたい、という六本木商店街振興組合さんの思いから実施されたものです。
そこで、そもそも六本木とはどういう街なのか、そして、このイベントにどのくらいの人が集まったのか、データで見てみました。さらに、1100億円という過去最高の経済効果が見込まれていた今年のハロウィーンにおいて、東京というエリアで人を呼びこめた街はどこなのか、逆に呼びこめなかった街はどこなのかを分析し、東京ハロウィーン勢力図を作成しました。
休日の昼間の集客に苦戦する、六本木。
まずは、普段の六本木の街力を調べるために、ハロウィーン前月の2014年9月に、都心で比較的大きな街である渋谷、原宿、お台場、新宿を対象に比較・分析をしました。まずは、グラフ①をご覧ください。
こちらは、各街の14時時点の人口になります。14時というのは、これまでさまざまな街を分析した中で発見した、街が人口ピークを迎える時間帯です。
渋谷、新宿は、特に人口の多いビッグシティーであることが分かります。それらに比べて、六本木は、人口という面ではちょっと少ないです。
ここで注目すべきは、休日の人口です。平日に比べた休日の人口(休日/平日)を見てみると、六本木の値が極端に少ないことが分かります。平日はオフィスワーカーが多いので街としてにぎわっていますが、休日の昼間に六本木に遊びに出る人は、他の街に比べて少ないようです。
休日を、さらに土曜日と日曜日に分けて分析したのが、グラフ②になります。
このグラフを見ると、全ての街で土曜日より日曜日の集客力が弱いことが分かります。翌日の仕事に備え、「遊び控え」が起こっていると推測されます。そして六本木は、この5つの街の中では日曜/土曜の値がワーストで、日曜の集客に苦戦していることが分かります。
では、ちょっと角度を変えて見てみましょう。グラフ③を、ご覧ください。
こちらは、9月全日の~23時の1時間刻みの平均人口推移を出したグラフです。
ここで注目すべきは、休日のピークの上がり方です。渋谷は、午前から午後にかけて、人口が一気に増えるのに対して、六本木の人口勾配は緩やかです。ちなみに、原宿、お台場、新宿と比べても、六本木の人口勾配は緩やかでした。このように見ることで、休日の集客が弱いことが把握できます。
そんな休日の集客、特に日曜日の集客が弱い六本木ですが、10月26日(日)のROPPONGI HALLOWEENで、果たして本当に人を呼び込むことができたのでしょうか。
六本木が、家族があふれる昼の街、に。
先ほどの1時間刻みの人口推移を、9月の日曜日平均の人口とROPPONGI HALLOWEEN当日の人口で比較してみましょう。グラフ④をご覧ください。
こちらを見ていただくと、9月の日曜日に比べ、10/26(日)は全ての時間で人口が多く、14時時点で約12%増を記録しています。ROPPONGI HALLOWEENで、人口が増えたことが分かります。私の試算では、このイベントを実施していた11~18時の推定来場者数は、「約8万2000人」に上ると思われます(※3)。
また、10/26(日)の0~4時の人口の上がり方もかなり高く、夜中ずっと盛り上がっていたことも分かります。
さらに、モバイル空間統計を利用すると、携帯電話の契約者情報から性別・年代も分かるため、9月の日曜日と10/26(日)で、14時時点の六本木の来街者の属性を調べてみました。イベントの目的の一つに家族連れを増やすということがありましたので、特に子連れの主婦が多く含まれると想定される30代女性の人口を見てみます。比較対象として、20代女性も見てみました。グラフ⑤をご覧ください。
9月の日曜日に比べハロウィーンイベント当日は、30代女性が多くなり、お子さまと一緒に六本木を訪れる人が増えたと考えられ、家族連れをうまく巻き込めたと想定できます。
以上により、ROPPONGI HALLOWEENは、六本木という街に家族連れを呼び込むためのイベントとして成功だったといえます。
では、ちょっと視点を広くし、東京全体でのハロウィーンの集客パワーを見てみましょう。
ハロウィーン勝ち組は、ディズニーランドと池袋。
各エリアのハロウィーンでの集客力を見るために、東京圏を500mメッシュに切り、ハロウィーン時期(10/25、26、31)の14時時点の平均人口と、9月の休日の14時時点の平均人口の差分を計算しマップにしました。下記、マップ①をご覧ください。人口の差分によって色分けしています。
こちらを見ると、ハロウィーンというイベントをうまく活用し集客できている街、集客ができていない街が一目瞭然で分かります。
六本木はピンク色で染まっており、ハロウィーンをうまく活用できた街の1つに加わっています。特にハロウィーン時期に人口が増えているのは、TDL、東京家政大学周辺、池袋の3つのエリアです。東京家政大は、たまたまこの時期に学園祭をやっており、純粋にハロウィーンの効果ではないことを踏まえると、毎年ハロウィーンイベントをやっているTDLと、街をあげてハロウィーン仮装イベントをやっていた池袋が、ハロウィーン2強といえるのではないでしょうか。
さらに、ハロウィーン時期に人口が増えたエリアと減ったエリアの上位を出してみると図表のようになりました。
こちらを見てみると、お台場や渋谷などもハロウィーンをうまく活用しているエリアであることも分かります。一方、東京ドーム周辺、水道橋周辺、両国は、ハロウィーン時期に集客パワーが弱くなることが分かります。水道橋に関しては、プロ野球の影響などもありますが、今後これらのエリアのハロウィーン活用は、課題になってくるかもしれません。
以上、いかがでしたでしょうか。モバイル空間統計を使うと、今までは決して見えなかった事実が、数字で見えてきます。
位置情報は、意思決定支援システムになる。
基地局データやGPSなどの位置情報系ツールの進化によって、今まで位置情報は自分の位置が自分で分かる「一人称視点による個人的活用」が主だったのに対し、みんなの動きがみんなに分かる「三人称視点による社会的活用」までできるようになりました。
今回の事例は、イベントや街という視点で分析しましたが、イベントに限らず、防災、流通、都市開発などさまざまな分野に位置情報は使えると思っています。人々の位置がリアルに見えるようになることで、重要な経営判断から、気軽なお出かけ先の決定、震災時に人の命を救うことにまで影響を与える「意思決定支援システム」になると思います。
今後も、「モバイル空間統計」を活用した情報を定期的に発信していきたいと思います。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
※1モバイル空間統計とは、NTT ドコモの携帯電話ネットワークのしくみを使用して作成される人口の統計情報です。
※2調査対象エリアは、それぞれの駅を中心として半径500mに設定。
※3 このイベントの平均滞在時間を3時間とし、来場者のうち半数が1人の子どもと一緒に来場したという条件で計算。8万1740人。電通オリジナル調査「d-camp2014」も活用。
お問い合せ先:電通 人の流れラボ contact@hitononagarelab.jp