独占インタビュー!
カンヌライオンズ、テリー・サベージ会長が語るスパイクスアジア
2013/10/20
今やアジアを代表する広告祭となったスパイクスアジア(以下、スパイクス)。ヘイマーケットメディアグループ(雑誌「キャンペーン」や「マーケティング」などグローバルにメディアを発行)と共にスパイクスを運営する、カンヌライオンズのテリー・サベージ会長に開催の狙いや今後の展望などを聞いた。(聞き手=電通報編集部)
■アジアにカンヌを!
──スパイクスは「アジア広告賞」として1987年にスタートし、今年で27回目を迎える歴史ある広告祭ですね。カンヌライオンズは2009年に、ヘイマーケット社との共同運営という形で関わるようになったわけですが、その狙いは何ですか?
ヘイマーケット社が発行する「キャンペーン誌アジア太平洋版」は、アジアをリードする広告業界誌です。私たちは共に、スパイクスを「ワールドクラスのイベントにしたい」というビジョンを持っていました。アジアに強い有力誌「キャンペーン」と、世界の広告祭をリードする「カンヌ」が連携することで、アジアのワールドクラスのイベントとして強力に発信することができると考えたのです。実際、短期間でそうした地位を確立できたと思っています。
──スパイクスをどう定義しますか?
ずばり「アジアに焦点を当てた“アジアのカンヌ”」です。アジアとその固有の文化に焦点を当てながら、ワールドクラスの広告賞や広告分野の学習プログラムを広く提供すること。それが、私たちの使命だと考えています。
アジアから見れば、カンヌは遠くて費用も掛かります。コスト面での制約によってカンヌまで足を運べない人たちにも、カンヌと同様のプログラムを体験してほしい。広告についてたくさん学び、刺激を受け、人脈を広げてもらいたいと思っています。
──アジアには他にも広告祭がありますが、スパイクスのユニークなポイントを教えてください。
大規模な学習の場があることですね。将来を見据え、若い人材の成長や育成を主眼としています。今年は、世界の広告界リーダーによる32のセミナーや、重要トピックスを扱ったフォーラム、また、若い人たちが業界リーダーから刺激を受ける場となる「マスタークラス」、テクノロジーに特化しカンヌでも好評だった「テックトーク」などを開催しました。参加者がクリエーターにとどまらない、ということも大きな特徴です。今年は、マーケターが参加者全体の12%を占めましたし、メディア関係者も多く参加しました。
──今後もシンガポールで開催していくのですか?
そのつもりです。シンガポールはアジア太平洋地域の中心ですし、空の便、現地のホテルや交通機関を含めたインフラ面で優れています。カジノやF1グランプリなどもあり、とても魅力的な立地ですね。
■アジアのレベルが飛躍
──今年の授賞結果をどう見ましたか?
カンヌでも実力を発揮したオーストラリア、ニュージーランドに非常に力強いものがありましたね。この2カ国に限らず、域内各地から優れた作品が集まり、スパイクスの重要性が証明されたと思います。うれしかったのは、スリランカがヤングスパイクスのインテグレーテッド部門でゴールド、メディア部門でシルバーを獲得したこと。また、ミャンマーからは、初めて参加者を迎えることができました。単なる優秀作品のショーケースではなく、新興国の支援にもつながっている。そこに、この地におけるスパイクスの存在意義があるのだと、自負しています。
アジアのレベルは全体的に向上しています。カンヌでの受賞作も確実に増えていますね。日本、オーストラリア、ニュージーランドはもちろん非常に強力ですが、その他の国・地域の存在感も増しています。中でも、中国とインドがクリエーティブ大国として台頭しつつあり、期待しています。
──日本のクリエーティビティーをどう評価していますか?
日本のクリエーティビティーは、カンヌやスパイクスなど、私たちが主催する広告祭で成功を収めてきた長い歴史があり、世界のトップクラスと言っても過言ではありません。特にデジタル、モバイル、デザインの分野で卓越しています。
大胆なアイデアと美しいクラフトが強みで、自国文化に根差したイノベーティブでインスパイアリングな作品が充実しています。
また、日本の作品や日本企業が開催するセミナーは、参加者に大変好評です。
■若手の育成をミッションに
──今後の展望を聞かせてください。
私たちのミッションは、業界全体の優れた作品を評価し、たたえること。加えて、誰でも参加できるワールドクラスの学習プログラムを用意して、レベルアップを支えることです。業界全体の急速な変化で、この点はかつてないほど重要になっています。
エージェンシーやクライアントにとって、この先最も大切なのは若い世代の力。私たちは、明日の勝者である彼らを魅了し、刺激し、成長させるために全力を尽くしていきます。スパイクスなどの広告祭を、その機会として提供していきます。