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WMS2015 特別インタビューNo.3

デジタル時代のイノベーション
―実現の鍵を探る

2015/12/03

イノベーションと組織
―マーケティング第一人者が見た、デジタル時代を勝ち抜く法

総括:広瀬哲治 「デジタル時代のイノベーション―実現の鍵を探る」


日本最大規模のマーケティング国際会議「ワールド・マーケティング・サミット(WMS)・ジャパン2015」。スピーカーとして来日した、米ノースウエスタン大ケロッグ経営大学院のロバート・ウォルコット教授と、同アンディー・ゾルツナーズ名誉教授へのインタビューを、2度にわたって掲載した。インタビュアーを務めた、電通のマーケティングソリューション局局長兼電通コンサルティング社長の広瀬哲治氏が、両者から受け取ったメッセージを振り返る。


「全ての企業は未完成。イノベーションの土壌が未来を決める」

昨年に引き続き東京で開催されたワールド・マーケティング・サミット(WMS)は、デジタル時代のマーケティングやイノベーションにフォーカスを当て、現代マーケティングの父フィリップ・コトラー教授を中心とした世界のビジネスリーダーによる熱い討議が展開された。スピーカーとして来日したウォルコット教授とゾルツナーズ教授は、コトラー教授と同じノースウエスタン大ケロッグ経営大学院で教壇に立つ傍ら、コンサルティング会社を創設するなど、企業が抱える現実的な課題に向き合ってきた。

ウォルコット教授は、ケロッグ・イノベーション・ネットワーク(KIN)を創設し、さまざまな立場の人間が触発し合う場を提供して、イノベーションの誘発を図っている。私たちは自前主義に固執したり、直接の競争相手にばかり目がいったりしてしまうことが多いが、「競合ばかりをベンチマークとして分析していても模倣にすぎず、イノベーションは生まれない。異業種のノウハウを、自分たちのビジネスにどう生かすかといった幅広い視点も大事だ」と語り、外部と刺激し合うことの重要性を強調していた。

ゾルツナーズ教授は長年、営業を科学することに取り組んできた。今日では、マーケティングオートメーションなどのテクノロジーの導入やデジタルトランスフォーメーションの進展により、営業に求められる機能や価値も大きく変わりつつある。組織構造、手法、報酬、人材の採用・育成など、営業組織が抱える多様な課題について、「その全てを完璧に行っている企業などない。逆にいえば、どの組織も改善の余地があり、売り上げを向上できる可能性がある」という前向きな言葉が印象的だった。

ウォルコット教授も「Can Do(やればできる)精神」や、若手の意見を取り入れられる風通しの良さ、女性をはじめ多様な人材が活躍できる土壌などの重要性を指摘していた。デジタル化が進展しイノベーションが求められる今だからこそ、企業風土や企業文化のあり方が問われる時代になっているのだといえそうだ。