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デジタル活用で成果を出すにはNo.7

SEO対策における基本的な考え方とポイント

2015/12/07

ウェブマーケティングの中では歴史が古いSEO対策。現在、SEO対策からコンバージョンにつなげるには、よりコンサルティング的視点が求められています。SEO対策の今とこれからについて、ネクステッジ電通の勝谷友秀さんと矢野英一さんに教えてもらいました。
※株式会社ネクステッジ電通は、2016年7月1日付で「株式会社電通デジタル」となりました。
(左から)ネクステッジ電通の矢野さんと勝谷さん

ユーザーに分かりやすいものは、Googleにも分かりやすい

 

──SEO対策について簡単に教えてください。

矢野:分かりやすくお話しすると、タイトルにはキーワードを入れる、見出しタグを入れる、Googleのクローラーが読み込みやすく理解しやすい構造にする、ということです。

勝谷:ユーザーに対して、情報を整理して見せることの重要性は、今も昔も変わらないです。例えば、タイトル一つにしても、そのページを端的に表す方が受け入れられる。ユーザーに分かりやすいものは、Googleにも分かりやすいという発想ですね。

──SEO対策で変化した部分はありますか。

矢野:一例ですが、昔はディレクトリの階層を深くし過ぎるとGoogleが情報を理解しづらく、コンテンツが正しく評価されづらいということがありました。そこで、極力階層を浅くすることを心がけることもありましたが、最近はGoogleのクロール技術が向上しているので、導線に工夫は必要ですが、ある程度ディレクトリの階層が深くても、しっかりと情報を吸い上げてコンテンツを評価してくれます。

勝谷:以前のSEO対策との変化で大きいのは、Googleを欺くような施策を行わなくなったことです。例えば、外部サイトからの意図的なリンクを膨大に設置したり、コンテンツのボリュームを多く見せる為に、中身のないコンテンツを増やしたりする、Googleをごまかすようなやり方は通用しなくなり、「不自然なサイト」としてGoogleからペナルティーが与えられるケースもあります。

検索上位に来るサイトというのは、イコールGoogleに評価されているサイトなのですが、最近はサイトのSSL化やスマートフォン対応など、ユーザービリティーやユーザー体験を追求しているサイトを評価する偏重がみられます。

──では、ユーザビリティーの高いサイトを作ることが、SEO対策につながるということですか。

矢野:本来はそうなのですが、必ずしもユーザビリティーが高いサイトが評価されているとも言えません。実は技術的に難しい部分もあります。Googleの解析技術が向上しているとはいえ、現状ではまだ画像や動画の内容を正確に理解できておらず、テキスト情報に頼っている部分が大きいです。しかしユーザーからすると、画像だけで見栄えよく表現した方が分かりやすかったり見やすかったりする場合もありますよね。

勝谷:そういった意味では、ユーザビリティーの高さとGoogleの評価は、必ずしも同義ではないかもしれませんが、今後は技術進化によって近付いていくと考えられます。そういう意味では、結局コンテンツの中身が差別化のポイントになりますね。

ユーザーのクエスチョンに対して、適切なアンサーで返してあげるのが「いいコンテンツ」

 

──「いいコンテンツを作る」という言葉は、非常に使いやすい言葉ですが、具体性に欠ける部分もあります。「いいコンテンツ」とは、どのようなコンテンツなのでしょうか。

勝谷:強いていえば、ユーザーのクエスチョンに対して、適切なアンサーで返してあげるのが「いいコンテンツ」だと考えています。具体的には、特定のトピックを検索したときに、ユーザーのクエスチョンに対してアンサーが情報として網羅されていないコンテンツや、誰でも知っているような情報しかないコンテンツは「いいコンテンツ」とは見なされないでしょう。弊社では、ユーザーの問いに対し、情報が網羅されているか、整理されているか、独自性があるか、トピックとの関連性があるかなどを重視してコンテンツを制作しています。

ネクステッジ電通の勝谷さん
ユーザーの問いに対し、情報が網羅されているか、整理されているか、独自性があるか、トピックとの関連性があるかなどを重視してコンテンツを制作しています
 

──この電通報は「いいコンテンツ」でしょうか。

矢野:記事一つ一つは深掘りされているし、専門的なことが書いてあります。コンテンツとしては、見る人にとっては、しっかりとクエスチョンにアンサーが成り立っている「いいコンテンツ」だと思います。

勝谷:確かに、実際に電通でノウハウとして磨かれてきたものをコンテンツに落としているので、いろいろな人に学びや気付きを与えることができる、有益な記事だと思います。ウェブ上から集めた情報をそのまま記事にしたものと比べたら、生の意見や見解、事例などが入っているので、情報としてはバリューが高いですよね。

──ありがとうございます。

勝谷:ただ、いかに「いいコンテンツ」であっても、それをどういった設計でユーザー、そして検索エンジンに対して見せてあげるかは、SEO対策がしっかりできているかどうか。そこはまた別の話です。

矢野:現在の電通報のサイト構築は、Googleが情報収集しづらい作りになってしまっています。あくまで例えですが、1000ある記事の中で、Googleが理解したのは5割だけだったみたいな。ちょっともったいないですね。再設計、最適化することで、情報を求めているユーザーとの接点を増やす余地は大きくあるように思います。

勝谷:検索エンジンという一つのフィルターを通して、ユーザーとコンテンツをマッチングさせるには、検索エンジンとユーザー両方に分かりやすいサイトをつくる必要があります。その工夫がSEO対策。いいコンテンツを作るだけではダメで、そのコンテンツを、タイトルのタグ付けや内部リンクの設計によって、Googleが理解しやすいように整えてあげなくてはいけないです。

──そうしたことは、どの企業も取り組んでいるように感じますが…。

矢野:残念ながら、できてない企業は多いですよ。

「KIDS」を「子供服」に変更するだけで、キーワード検索からのサイト流入が20倍に

 

──単刀直入に伺いますが、なぜできていないのでしょうか。

矢野:意外と多いのは、デザイン重視でサイトを作って、SEO対策を全く意識していないパターンです。あとは、検索エンジンのクローラーが辿れない技術を使っているサイト。管理しやすいからなど、理由はいろいろあると思うのですが、これではユーザーとサイトのマッチングはできません。

──そうすると、ネクステッジ電通に依頼すると、どのような施策を行ってくれるのでしょうか。

矢野:最初はサイトの現状分析を行い、並行してどんなユーザーがどのような検索キーワードを使っているのかを調べます。例えば「離乳食」というキーワードがあったとします。それに対して、クライアントのサイトには離乳食のレシピが掲載されています。しかし、検索で上位に表示されない。なぜなら、世の中には、レシピ以外でも離乳食について知りたいことがたくさんあるからです。Q&Aサイトなどを見ると、離乳食を作るときに気を付けることや月齢による味付けの違い、離乳食を与える回数など、さまざまなインサイトがあります。

しかし、クライアントは、どちらかといえば自分たちが与えたい情報を載せてしまっていることが多いように感じます。そこで、世の中にはさまざまなインサイト、つまりキーワードがあることをお伝えします。先ほど、サイトさえあればSEO対策になっていると言いましたが、このキーワードの洗い出しやサイトの分析は、専門知識がないと難しい。ここが、私たちの強みのひとつです。

ネクステッジ電通の矢野さん

──ユーザーの検索行動とサイト構築がズレているということですね。実際の事例などはありますか。

矢野:大手ファッション通販サイトで良い例があります。そこは、子供服のカテゴリーを「KIDS」としていたんですね。ただ、世の中のお母さんは、「KIDS、服」と検索するよりも、「子供服」と検索しているようです。このサイトでは、「KIDS」のほうがサイトの見栄えが良いからと、あまり考えずに採用したのかもしれませんが、企業が発信している内容と、世の中の人が知りたい情報がうまくマッチングしていなかった。現に、「KIDS」を「子供服」に変更したら、キーワード検索からのサイト流入が20倍に跳ね上がりました。

勝谷:サイト流入はもちろん大事ですが、そこだけがゴールではありません。ユーザーがキーワード検索からサイトに訪れた場合、本来であれば、サイトにそのユーザーを取り込めるはず。取り込んだ結果、コンバージョンにつなげることがゴールとなります。しかし、知りたい情報がサイトに存在しなければ、ユーザーを取り込むことができず、機会損失が発生します。そこで、クライアントが出したい情報と、市場のニーズをすり合わせるアクションが必要になる。市場のニーズを正確に把握することは難しいので、初期段階で市場のニーズを調査、分析し、戦略的に盛り込むことが多いですね。

知りたい情報がサイトに存在しなければ、ユーザーを取り込むことができず、機会損失が発生します。そこで、クライアントが出したい情報と、市場のニーズをすり合わせるアクションが必要になる
 

矢野:たとえば、二世帯住宅を販売しているハウスメーカーさんのケースで考えてみましょう。彼らは、「二世帯住宅」というキーワードでの検索順位を上げて、ユーザーをサイトに呼び込みたい。サイトには、二世帯住宅の素晴らしさが丁寧にうたわれています。しかし、ユーザーが知りたいのはメリットだけでなくデメリットだったり、工期や予算、体験談だったりするんです。

実は、ユーザーの多くは、「二世帯住宅、デメリット」といったキーワード検索をしています。だったら、しっかりとデメリットを伝えるコンテンツを作った上で、クライアントが見せたいすてきな二世帯住宅のコンテンツへと誘導する仕組みを築かなくてはいけません。それを気付かせるのがわれわれの仕事です。

──制作するコンテンツの内容までコンサルティングする必要があるということですね。

勝谷:そうです。キーワードとコンテンツは対で、検索されるキーワードは、ユーザーの気持ちそのもの。その気持ちを受け切るコンテンツを作る必要があると考えています。

検索キーワードを入力するユーザーの心情まで気を使って読み解く

 

──そのためには、ユーザーの気持ちを的確に理解する必要があります。どのような方法を取っているのですか。

勝谷:特定のワードを入力すると、特定のワードと共に語られているキーワードを分析できるツールがあり、それをベースとして使っています。ここからが独自のアプローチなのですが、私たちはその検索キーワードを入力するユーザーの心情まで気を使っています。例えば、「自動車保険」が検索キーワードならば、「Yahoo!知恵袋」や「2ちゃんねる」といった生の声が集まるサイトやFacebookやTwitterといったソーシャルメディアで、「自動車保険」がどのような文脈で、どのようなワードと一緒に語られていて、そして、何が気になっているのかなども分析しています。

矢野:DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)の活用も行っています。DMPにはさまざまなデータベースが入っていますが、われわれがやっているデータの切り出し方の一つを紹介しましょう。例えば「脱毛」でキーワード検索をした人のサンプルを1000人分集めて、過去にどのようなキーワード検索をしたのかを分析します。すると「海外旅行」というキーワードが浮上してきました。これは、「何かしらのイベントの前に脱毛をしておこう」という人が多いことの表れです。こういった裏付けを念入りに行って、根拠のあるモノだけをクライアントにキーワードとして提案しています。

価値観の多様化、スマホデバイスの台頭などにより、この数年でユーザーの検索クエリのバリエーションも大幅に拡大しています。すなわち、特定のツールだけでは多様化するユーザーインサイトを捉えきることは困難です。あらゆる最新のツールを駆使し、時に大規模なアンケートデータといったアナログ要素を活用する必要もあります。とにかく、対策するキーワードや制作するコンテンツを決定する為の根拠の分析にはこだわっています。

後編へ続く