デジタル活用で成果を出すにはNo.8
パフォーマンスを追求するこれからのSEO
2015/12/08
※株式会社ネクステッジ電通は、2016年7月1日付で「株式会社電通デジタル」となりました。
コンテンツの中身を考えて、PDCAサイクルを回していくこともある
──企業からは、検索キーワードの提案を求められることが多いのでしょうか。
勝谷:基本的に検索キーワードを重要視して提案しています。専属部隊を持ってインハウスでSEO対策を実施していたクライアントがあったのですが、彼らが何に困っていたかといえば、一つは、対策キーワードの広げ方です。基本的なキーワードは対策できていたものの、更にキーワードを拡張していきたい考えがあるなかで、どのようなインサイトを押さえてキーワードを拡張していったらよいかわからないという悩みがありました。
別の相談は、コンテンツをどう評価していいか分からないという悩みでした。コンテンツのPDCAが回っていないので、そこにフォーカスして提案してほしいといった相談でした。
キーワードの拡張はクライアントのサイトデータだけでなく、競合サイトやSNS、ネット上における検索キーワードの語られ方から調査したり、DMPのデータ、電通が持つ独自データを活用しつつ、ヌケ・モレのあるキーワードを探しました。その上でユーザーファネルにプロットして、対策優先度も提案しました。
コンテンツのPDCAに関しては、コンテンツ毎にKPIを設定します。例えば、認知を広めたかったり、SNSでシェアしてほしかったりするコンテンツは、編集プロダクションと組んで、著名なライターに執筆してもらうなどの施策を取りました。作り込んだ後は、実際にSNS上での評判や評価を見たり、設定したコンバージョンにどう貢献したかなどを検証しています。また、ツールを使ってコンテンツをセンテンスごとに分解し、Googleにどのように評価、認識されているのかを分析しました。これらの施策をブラッシュアップしながら、PDCAを回しています。
クライアントの広告戦略全体に関わっている電通の強みとは
──SEO対策というのは、タグ付けやキーワードの設定などが主な仕事だと思っていましたが、コンテンツの内容やコンバージョンの設定、効果検証まで考える必要があるのですね。
矢野:今のSEO対策は、キーワードによって検索ランキングを上げるだけの仕事ではありません。コンバージョンを売り上げとするなら、売り上げにつながる動線をさまざまな人と協力して設計する仕事になってきています。そういった意味で、ネクステッジ電通はSEO対策に特化した会社ではなく、分析の専門家やアルゴリズムを追究する担当者に、いいコンテンツを仕上げるためのクリエーティブもそろっている。このメンバーが一緒になり提案できるのが大きな強みです。
勝谷:もう一つの強みは、電通の場合、ウェブマーケティングの上段である広告戦略全体からクライアントと関わることが多いことでしょう。いちベンダーとしてクライアントと向き合う場合に比べ、さまざまな部署や立場の方々と接点を持たせていただいています。そういう意味では、クライアント社内の多くの方々にSEO戦略を共有することができて、プロジェクトが進めやすいという部分はありますね。
SEO対策とリスティング広告には、それぞれ得意分野がある
──お話を伺っていると、SEO対策をしっかりとしておけば、リスティング広告のようなペイド集客は必要ないのではないかとも感じてしまいます。
矢野:ポートフォリオの改善はできると思いますが、リスティング広告をゼロにして、全てSEO対策に振り替えるのは難しいでしょう。それぞれの特性を生かしながら、どれだけバランス良く組み立てるかが重要だと思います。
──それぞれの特性を教えてください。
勝谷:広告は出稿した分が全てですよね。例えば、今月は5000万円コストを投下しました。来月はそれをやめます。すると、やめた途端にリスティング広告からの流入はゼロになってしまいます。逆に言えば、新商品が出たタイミングや売り上げ目標の達成に期限があるときなど、ピンポイントで流入が必要なときなどは非常に有効な施策だと考えます。
一方、SEO対策は中長期で考える必要がある。リスティング広告のように、すぐに表示されるわけではないので、少しずつ細かいチューニングを重ねて、時間をかけて徐々に対策をしていくものなんです。ただし、広告と違ってやめるという概念はないので、一度構築してメンテナンスを続けていけば、それは資産になります。この両方をうまく掛け合わせることが重要ですね。
矢野:クライアントによっては、リスティングとSEOでは部署が違い、担当者が異なるケースがあります。例えば、SEO対策が功を奏して、あるキーワードで1位を取れたとしましょう。この場合、リスティングの運用をどこまで抑制することが可能か?といった議論があってしかるべきです。さらには、ディスプレイ広告やフェイスブック広告のレスポンスから、コンテンツ案の気付きを得たり、SEOの効果を各種デジタル集客のクリエーティブにフィードバックしたりと、多くの気付きが存在しているんです。
しかし、担当者が分断されているがために、それができないことも多い。しかし、ネクステッジ電通の場合は、SEO対策だけをやっているわけではなく、リスティング広告や各種運用型広告、分析の専門部隊も持っています。クライアントの担当者同士で連携を取ることが難しい場合も、こちら側で連携して情報を共有し、クライアントに最適なポートフォリオを提案できる強みも持っています。
ネクステッジ電通は広告会社でありながら専門家を抱える希少な存在
──他に、SEO対策に関して、ネクステッジ電通が持つ強みがあれば教えてください。
勝谷:われわれの場合は、専門領域が理解できるスペシャリストを抱えているので、市場に存在するエッジの立ったソリューションや最先端の分析アプローチを持つパートナーをしっかりと把握し、ソリューションの精度を上げたり、ブラッシュアップしたりすることが可能です。もちろんネクステッジ電通固有の強みも構築しているのですが、変化の激しい業界ですので、その時々でクライアントにベストなソリューションを提供するには、外部のパートナーとの連携も必須だと考えています。
場合によっては、データを取るために必要なシステムを共同開発したり、ゼロベースでソリューション開発のディスカッションをすることもあります。良い意味で、内製のみにこだわっていないところは強みの一つです。
矢野:外部の専業ベンダーさんとの連携も強みですが、電通グループ内での連携も我々の強みです。電通にしかないデータを使ってキーワードの提案をできるといったメリットもあるのですが、個人的には面白いコンテンツを作れるクリエーティブの力が大きいと考えています。面白い企画やぶっ飛んだアイデアは、アルゴリズム視点だけでは捉えづらいのですが、電通のクリエーティブにはそういった発想がゴロゴロしている。
これを電通独自のデータと組み合わせてクライアントに提案することは、ネクステッジ電通だからこそできるSEO対策だと思うんです。
スマホの普及で検索キーワード自体が変わりつつある
──これからのSEO対策はどのような方向性に進んでいくのか、見解を聞かせてください。
矢野:企業がユーザーに接する窓口がコンテンツである限り、「いいコンテンツ」を作ることはブレないですね。そこをブラッシュアップするのは、SEO対策のためだけでなく、ユーザーの利便性のために企業がなすべきことです。Googleもユーザーの利便性が高いサイトを評価するためにアルゴリズムを進化させているので、この文脈は絶対ですね。
勝谷:未来というか、今すでに起こっている動きでは、コンテンツへのアクセスがより簡単になっていることですね。それは、スマートフォンの普及とも関係があります。例えば、パソコンでは検索キーワードをキーボードで打ち込んでいましたが、スマートフォンでは音声検索という独自の検索体験がある。事実、クライアントサイトのデータを分析していると、口語体での検索ワードが増えてきています。
矢野:最後に一ついいでしょうか。SEO対策はウェブサイト全体に関わってくることなので、企業のトップや上層部の理解がないとなかなか進まないケースもあります。その上の方々にご理解いただけるような提案は、データやロジック、根拠、そして、納得がいくコンバージョンが必要です。今までみたいに一つのキーワードで表示される順位が上がった、下がったと一喜一憂するのではなく、もっと広義な視点が求められるようになっていきます。そこを理解してSEO対策の体制作りを進める姿勢が重要になってくると思います。
勝谷:面白いけど読まれない、読まれるけど面白くないのでクライアントのビジネスに直結しないというケースを無くしていきたいと考えています。
これには、十分なユーザー分析によるコンテンツの精度向上と、広告集客含めた適切な集客ポートフォリオの設計、戦略ときちんと紐づいたPDCAの設計が必要不可欠だと考えています。