デジタル活用で成果を出すにはNo.5
ユーザーを狙い撃ちできるリスティング広告が持つ本当の実力
2015/11/16
※株式会社ネクステッジ電通は、2016年7月1日付で「株式会社電通デジタル」となりました。
商品の認知度が高いほど、リスティング広告との親和性が高い
――最初に、リスティング広告がどういうものか教えてください。
豊泉:簡単にいえば、Yahoo! やGoogleの検索などでユーザーが検索したキーワードに応じて、検索結果画面に表示される広告のことです。マーケティング上の位置付けでは、ユーザーが情報を探している瞬間を狙ってアプローチする広告手法。広告主には、「ウェブ上の行動は検索が全ての起点になっています。その起点を狙った広告がリスティング広告です」と説明しています。デジタルマーケティングを行う際には必須といえる手法ですね。
――リスティング広告の料金は、どのようなメニューになっているのでしょうか。
渡辺:該当キーワードの検索結果に表示される広告1クリック当たりにかける金額を入札する、いわゆるクリック課金型の広告メニューです。
豊泉:具体的には、1クリック数千円というキーワードもあるので、単価自体は安くありません。それでも、費用対効果が高いといわれるのは、ネット広告の中でもアクションにつながりやすいから。しかし、数百万人の新規ユーザーにリーチができるディスプレイ広告と、検索した人にしか出せないけれど、出せば高い確率でアクションにつながるリスティング広告に、投資対効果だけで単純に優劣を付けることはできないと思います。
――リスティング広告と親和性の高い業種や商品を教えてください。
豊泉:業種は特にありません。商品の認知度が高いほど、親和性が高いですね。当たり前ですが、メジャーであればあるほど検索する人は多くなります。
逆に、親和性が低いのは、新規ブランドや世の中に今までなかった商品カテゴリー。知られていないから、そもそも検索する人がいないんです。この場合は、新たな商品に対して、「この商品に興味を持ってくれる人は他にどんなものに興味があるのか」などと考え、実際に検索されているキーワードを選ぶ必要があります。
――Facebook広告やディスプレイ広告など、ネット広告は多様化していますが、そのなかでリスティング広告はどのような位置付けなのでしょうか。
渡辺:デジタルマーケティング上での最初の接触であり、最も購入などの成果に近い広告という位置付けです。ただ、ネクステッジ電通では、リスティング広告だけを提案することはなく、キーワードの特性やマーケティング戦略により、さまざまな商品と合わせて提案しています。
豊泉:私がネット広告に関わり始めた7年前は、リスティング広告が、もっとも緻密に効果を計測できる広告メニューでした。「どのようなキーワードに興味を持って検索しているのか」「どの競合サイトと比較したのか」などが分かるので、エンドユーザーの行動を可視化できて、マーケティングデータとしても重要な位置付けでしたね。
最近は、他のネット広告でもターゲットについてのデータが取得できるようになってきているので、そういったデータ分析的な位置付けは薄まったのではないでしょうか。逆に、今はリスティング広告を分析に使うというよりも、ユーザー属性ごとにアプローチを行うなど、直接的なつながりのきっかけにするクライアントが増えている気がします。
数字の裏側にあるユーザーモチベーションを読み取る
――クライアントはリスティング広告にどのようなコンバージョンを求めているのですか。
渡辺:例えばマス広告は、商品への欲求がない状態のユーザーに訴える広告であるのに対して、リスティング広告は検索という能動的な行動を起こしたユーザーに訴求する広告。マーケティング全体のシナリオでは、アンカーに近い層に接触しているので、購入や問い合わせなどをコンバージョンとして設定するクライアントが多いですね。
豊泉:もちろん、メーンの目標は購入や問い合わせなのですが、最近はさまざまな目的が増えています。例えば、検索結果の画面にテキストだけでなく画像も表示することで、コンテンツやブランドの認知を狙ったり、クライアントのサイトではなくアプリストアへ誘導することで、アプリのダウンロードを促進したりすることもあります。また、キャンペーンの告知なども多いですね。
――リスティング広告も進化しているんですね。
豊泉:検索エンジンは、「いつ」「どこで」「誰が」「どのデバイスで」「どんなキーワードで」検索しているかによって検索結果を最適化しています。リスティング広告も同じで、キーワードだけでなくさまざまな条件でメッセージや掲載位置を調整し、最適化できるようになってきました。
渡辺:リスティング広告は、日々リアルタイムで更新される実績をただの数字として捉えるのではなく、数字の裏側にあるユーザーモチベーションを読み取る力があるか否かで結果が大きく変わる広告になったと実感しています。
電通がもつ独自のデータを使って、クリックされやすいキーワードを選び出す
豊泉:スマホの普及で、これまで以上に「いつ」「どこで」検索しているのかを考える必要がでてきたことや、それまでインターネットビジネス中心に利用されてきたものが、エステサロンや居酒屋など実際にお店に足を運ぶビジネスにも積極的に利用されはじめたという変化があります。
例えば同じキーワードでも、家のパソコンで検索される場合にはネット通販で買いたいと思っているのに対し、外でスマホで検索される場合には、その商品を扱うお店を探している場合があるといったように、ユーザーの求めているものが違ってきます。アプリのダウンロードやスマホゲームとかのプロモーションなどは、当然、スマートフォンを中心に出稿します。意外な業種でスマートフォンへの出稿が効果的なのは、実際にお店に足を運ぶようなビジネス。例えば、エステサロンや居酒屋などです。
渡辺:期待するコンバージョンによっても、パソコンとスマートフォンのどちらに出稿するかは変わってきます。ネットショッピングのように、クレジットカードを出して入力する必要がある場合、移動中にスマートフォンではやらない。だったらパソコンに出稿するか、スマートフォンに出稿する場合でも、出勤や退社の移動時間帯はなるべく避けて、在宅中にゆっくりできる時間帯を中心にプランニングをしています。
豊泉:時間帯は非常に分かりやすい指標です。パソコンとスマートフォンでは傾向が全く違っていて、パソコンはお昼休みの1時間だけ検索が増えて、スマートフォンは深夜の利用が増えるなど、時間別の傾向は顕著ですね。
――では、クリックされるキーワードは、どのように考えるのでしょうか。
渡辺:まずは、ユーザーの立場で「この商品が欲しいときに、どのような検索をするか」と考えることから始まります。リスティング広告は、検索を行ったユーザーに対して、複数のクライアントが広告を掲載します。競合よりも多くの顧客や売り上げを獲得するためには、キーワードを網羅し、さらに競合がまだ見つけていないキーワードをより多く見つけることが必要になります。
そのためには、実際にユーザーがどのように検索しているのか、競合サイトも含めどのようなキーワードで訪問しているのかなど、データに基づいてキーワードを探すことが大切。データソースは、Yahoo!やGoogleの運用ツール上でも提供されていますが、差別化するために、独自で有用なデータソースを持っていたり、活用ノウハウがあったりすることが重要になります。
豊泉:ネクステッジ電通の場合、テレビや生活者に関する情報といった電通にしかないデータを使えるのが大きな強みです。また、活用ノウハウにおいても、重複をはじいたり、ノイズを除去したりと無駄なデータを処理するテクノロジーを持っていることが特徴です。
渡辺:キーワードを見つけて登録しても終わりではなく、常に更新が必要です。例えば、商品の入れ替わりが多く、商品ジャンルも多岐にわたる通販サイトなどでは、売り上げにつながるキーワードの85%が3カ月以内に入れ替わったという事例もあります。
ユーザーの検索ワードは、そのときどきの情報や流行、季節などにも影響を受けるので、常に新たなキーワードが生まれます。一方で、あるときには売り上げにつながったキーワードでも、時期が過ぎれば全く効果につながらず、マーケティングコストだけを消化することもあります。どのように効果が高い新しいキーワードを見つけて、効果が悪いキーワードを見極めていくのか、その頻度をどのように設定するのかが運用のポイントになります。
――例えば、どのように運用しているのでしょうか。
豊泉:大手通販サイトでは、検索データから、サイトで扱っている商品に関連するものを毎日数万レベルで抽出して登録を行ったり、毎日変動する商品在庫データからキーワードを生成して毎日登録、削除したりしています。トータル数百万のキーワードを、毎日数万単位で入れ替えることも珍しくありません。
(後編へ続きます)