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デジタル活用で成果を出すにはNo.1

ユーザー属性ごとに最適な配信を。「ディスプレイ広告」の可能性

2015/09/07

ウェブマーケティングの主流になりつつある「ディスプレイ広告」。さまざまな表現方法で、ユーザーの属性に合わせて展開できる利点がある一方で、配信方法とのマッチングも重要になっています。そこで今回は、ディスプレイ広告の基本と、効果を高める配信方法などについて、ネクステッジ電通の松野泰大さん、田村浩之さんに教えてもらいました。
※株式会社ネクステッジ電通は、2016年7月1日付で「株式会社電通デジタル」となりました。

■「ディスプレイ広告」とは?

──まず、松野さんと田村さんとの業務内容から教えていただけますか。

松野:ディスプレイ広告を中心とした運用マネジメントと配信戦略策定を行っています。クライアントと相対しながら、その週の成果確認やそれを踏まえての提案などを行っています。また、課題解決のための新しい手法などの提案も積極的に行っています。

田村:私はストラテジストという立場でクライアントと直接向き合っています。特に経験の長いディスプレイ広告においては、自ら運用したりと幅広くデジタル広告の運用に携わっています。

──お二人とも携わっているディスプレイ広告ですが、具体的にはどのようなものですか。

松野:ウェブサイト内に存在する広告枠にイメージ画像を掲載する広告形態のことです。表現方法は多岐にわたりますが、静止画を使ったイメージ広告や、モーション等の動きが加えられたFlash・Gifアニメを使った広告などが一般的です。

他にも、ECサイトや旅行サイトを見たあと、別のサイトの広告で同じ商品だったり似たような商品の広告が表示されるといった、インターネット上での行動履歴に応じて動的にバナーが生成される「ダイナミッククリエイティブ」、動画を配信する「オンライン動画広告」などがあります。

──ディスプレイ広告はさまざまなウェブサイトに配信されるとのことですが、どのような事業者が配信をしているのでしょうか。

田村:主にウェブ上での顧客獲得成果を追求する広告目的においては、Google、Yahoo!、Criteoが3強で、SNSではFacebookが強いですね。

Googleはネットユーザーの9割がリーチする配信面の広さ、独自で保有するビッグデータや検索エンジンデータを活用した多様なターゲティング手法が強みです。リーチ、誘導、獲得など広告配信における目標に合わせた配信最適化機能も充実しています。

Yahoo!は国内最大級の検索ポータルで、充実したYahoo!コンテンツ内の配信面に広告を掲載できる媒体です。また、配信面だけでなくコンテンツの持つ閲覧データや、Yahoo!IDユーザーのデータを活用した広告配信技術の精度が高いですね。

Criteoは、ダイナミックリターゲティングの代表格です。ダイナミックリターゲティングは、ウェブサイト上でユーザーが直近に見ていた商品などを直接的にバナー訴求するので、クリック率/獲得率は高い傾向です。またFacebookは、原則実名登録なのでデータ精度も高く、精緻なコミュニケーションができる媒体の一つです。同じターゲットユーザーに対して、PC、スマホ、タブレットなどクロスデバイスでアプローチできるので成果も出やすいですね。

■「リスティング広告」と「ディスプレイ広告」の違いとは?

──よく耳にする「リスティング広告」と「ディスプレイ広告」。それぞれの特徴を教えてください。

松野:広義の意味では、リスティング広告はGoogle AdwordsとYahoo!プロモーション広告の2大プラットフォーム上で管理する運用型広告全般(ディスプレイ広告を含めて)を指します。狭義には、検索連動型広告(SEM)と言われる、検索結果の画面に配信される広告です。ユーザーが検索したキーワードにマッチした広告が表示されるので、ニーズを確実に捉えることができます。ただし、表現方法はテキスト中心でフォーマットも限られています。

一方、ディスプレイ広告は、セールスファネルの段階に合わせて、ユーザーニーズを捉えた配信もできますし、より多くの人の目に触れるようなブロードリーチ的な配信も可能です。

セールスファネル上流のユーザーに対しては、購入やクリックだけを目的にせずに、企業のブランド価値向上など、CSR的な目的でも使用できます。つまりディスプレイ広告は、多様なターゲットに合わせて的確な表現方法で配信することが可能なのです。

ポイント:ディスプレイ広告は、多様なターゲットに合わせて的確な表現方法で配信することが可能

──ディスプレイ広告のターゲティングについて教えてください。

松野:ディスプレイ広告を届けるためには、ターゲティングの精度が重要になってきます。ターゲティングは、大きく「人ベース」と「面ベース」に分けられます。「人ベース」のターゲティングは、ユーザーの属性に合わせた狙い撃ちと考えてよいでしょう。

──どのような形で狙い撃ちをするのでしょうか。

松野:大別すると4つの手法があります。まずは定番の「リターゲティング」。サイトを訪問したユーザーが離脱したら、そのユーザーを追いかける形で、各種サイトにディスプレイ広告を表示します。

一度はそのクライアントのサイトを訪問しているので、少なからず興味があることは分かります。ディスプレイ広告を見ることで、もう一度サイトに戻ってきてくれる可能性が高いです。この場合、再誘導や購入促進といった効果が見込めます。ダイレクトな成果を求めるクライアントには、数年前から主流になってきている手法です。

──他にはどのようなターゲティング方法があるのでしょうか。

松野:最近使われることが多くなっているのは、「サーチターゲティング」で、Yahoo!やGoogleで検索したキーワードを元にディスプレイ広告を表示します。例えば、A社が広告を出すときは、競合であるB社に興味を持っている人を引き寄せたいと考えますよね。そのときに、競合B社の名前を検索したことがある人を狙って、A社の広告を出すことができるという手法です。

新しいものでは「拡張ターゲティング」があります。サイトを訪れていなくても、そのサイトを訪れた人と似た属性を持つ人を探し出してディスプレイ広告を表示する手法です。

ほかには、広告を配信するユーザーが過去に訪れたサイトから興味関心を推定して、その興味に近いディスプレイ広告を配信する「行動ターゲティング」がありますね。

■業界ごとに向いているターゲティング手法がある!

──では、それぞれのターゲティング手法に向いている業種などはありますか。

田村:人材系のクライアントの場合「サーチターゲティング」との相性が良いと思います。転職を考えている人のサイト行動遷移や興味関心には共通性が少なく、転職を考えているかどうか推測するのが難しいため「拡張ターゲティング」や「行動ターゲティング」はマッチしにくいです。だったら「転職」というキーワードで検索をした人に、転職に関するディスプレイ広告を配信する「サーチターゲティング」の方が使いやすいのです。

一方、旅行系やEコマース系は趣味性が高く、ユーザーの動きに共通点が多いので、「拡張ターゲティング」や「行動ターゲティング」との相性がいいですね。この二つは続けることで個人属性を特定する精度が高くなり、長期間続けると、その分成果が伸びていきます。

──「人ベース」のターゲティング手法のなかで、コンバージョンレートが高いのはどれですか。

松野:「リターゲティング」は、クリックやコンバージョンに近いユーザーを呼びもどすための広告なので、他のディスプレイ広告に比べてコンバージョンレートが数倍高くなります。いったんクリックしてもらえば買う率が高いので、鉄板の配信手法といってもいいでしょう。

──それでは、もう一つのターゲティングである「面ベース」について教えてください。

田村:端的に言えば、どの配信面に出すのかということです。選択方法は二つあって、一つは、女性がターゲットの場合は、女性がよく訪れるサイトに広告を出すという当たり前の話ですね。

もう一つは、キーワードが含まれる面にターゲティングする方法。「コンテンツマッチ」というのですが、例えば「AKB」というキーワードで指定すると、AKBについて書いているページに広告が表示されます。ただし、AKBに対してネガティブな記事でも表示されるリスクもあるので、運用で回避する必要があります。

──ターゲティングを行う際に、気を付けるポイントは?

田村:ターゲティングで重要なのは、クライアントの目的を理解してKPIをしっかりと設定すること。ユーザーを獲得したいのか、それともリーチ数を増やしたいのかなど、目的を明確にすることが必要です。これらの目的を明確にすることで、配信媒体や相性の良いターゲティング方法が決まってきます。

ポイント:ユーザーを獲得したいのか、それともリーチ数を増やしたいのかなど、目的を明確にすることが必要

松野:あとは、Yahoo!やGoogleといった、各プラットフォームでできることを理解しておくことも重要です。先ほど「リターゲティング」や「行動ターゲティング」の話をしましたが、媒体によっては、「デモグラフィックデータ×興味関心」といった掛け合わせができるので、より効率的なターゲティングが可能になります。

もう一つ、難しく考えすぎて最初から属性のセグメントを絞り込み過ぎない、ということがあります。特に運用型のディスプレイ広告は、成果がリアルタイムに分かるのが大きな特徴ですので、もし「効果が良くないな」というセグメントがあれば、即時にそのセグメントへの配信を止めることもできます。ですので、最初から絞り込みすぎるというよりも、配信初期は候補となるセグメントを多く設定しておいて、リアルタイムにセグメント毎の効果を見て、配信の取捨選択をしながらターゲティングの精度を高めていく方が効率的です。

ただ、ターゲティングが固まるだけでは不十分で、ターゲットに合わせた配信媒体の決定やクリエーティブの質を高めることも重要です。

■一瞬の出合いを確実につかむのがいいクリエーティブ

──クリエーティブについては、どういった部分が重要になってくるか教えてください。

松野:ユーザーがウェブサイトを回遊している以上、どんなディスプレイ広告でも出合いは一瞬です。なので、まずは目に飛び込んでくるクリエーティブが第一です。見てもらったり、クリックしてもらったりするメッセージや仕掛けを随所に盛り込んでいくのが、クリエーティブで注意するポイントですね。

田村:ユーザーが訪れたページの深度、いわゆるセールスファネルの階層に対して、どういった内容のディスプレイ広告を出すのか、というところまで突き詰めて作ることが重要です。

例えば、ファッションのEコマースサイトだとしたら、メンズかレディース、どちらのページに配信するのかでも内容が異なる。メンズなら、パンツのページを見ているのか、ジャケットのページを見ているのかでも興味関心は違うはず。そこに合わせるディスプレイ広告のクリエーティブはどんな内容がいいのかと、細分化して分析します。ただ、細かくやればやるほどお金もかかるので、費用対効果の考慮も必要です。

──セールスファネルの階層によって、クリエーティブにはどのような違いが発生するのでしょうか。

松野:まだそのサイトに来てもらったことがないユーザーを呼びたい時には、とにかく商品を目立たせるとか、「あなたのお悩みはなんですか」って問いかけてみるとか。リターゲティングのユーザーに向けては、すでに1回はサイトに来ており、購入が見込めるセールスファネルなので、キャンペーンや値引きなどを目立たせます。

田村:今の技術なら、Eコマースサイトでシャンプーを買ったら、なくなるころに「そろそろシャンプー買い替え時です」みたいなディスプレイ広告を表示することも可能です。でも、つっこみ過ぎてしまうと気持ち悪くなり、クレームになる可能性もある。これからのクリエーティブには、そのあたりの線引きも重要になってくるのではないでしょうか。

#2へ続きます)