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まずはデジタルで、ブランドを育てよう―TargetとBrandのセッション

デジタルと人間のセッション:CMOのためのデジタルマーケティングNo.3

2018/12/10

まずはデジタルで、ブランドを育てよう―TargetとBrandのセッション

<目次>
Ⅰ スモールスタートでブランドを育てる
Ⅱ ターゲットを最初から決めつけない
Ⅲ 潜在ターゲットのボリュームを検証する
 

Ⅰ スモールスタートでブランドを育てる

CMO(最高マーケティング責任者)、マーケティング担当部長、ブランド担当者(以下、「CMO等」と表記)は、ブランドを持続的に育てていく必要があります。

最近、以下のようなご相談を受けることが多くなりました。

「デジタルを使ってスモールスタートでブランドを立ち上げ、その後、アジャイル(※)形式でブランドを育てていきたい」

※アジャイル=期間を短く区切り、一定の予算内で準備とテストを繰り返して開発していくこと


最初からテレビCMなどのマス広告でキャンペーンを実施してしまうと、認知拡大や売り上げ増のリターンも大きいですが、万が一失敗した時のリスクも大きいと考えるCMO等が増えてきたのです。

その点、デジタルなら詳細なターゲットセグメントが設定でき、セグメントごとの広告メッセージを訴求できますし、ターゲットのさまざまな反応データ(広告のクリック、ランディングページ/サイト来訪、購買データなど)も入手できるため、効果検証もしやすいです。

つまり、デジタル広告はマス広告と比べて少額の予算で始められ、費用対効果も計算しやすいということです。ブランドの立ち上げや育成に最適な手段といえるでしょう。

今回はデジタルならではの「スモールスタート」「アジャイル」「サステナブル」なブランドの育て方を見ていきます。

Ⅱ ターゲットを最初から決めつけない

ブランドを育てることを目的としたデジタル広告は、どんな点に注意して実施すればよいのでしょうか。第1回で例に挙げた自動お掃除ロボットで考えてみます。

発売当初、自動お掃除ロボットの主なターゲットは「DINKs」でした。そこに新たなターゲット候補として、自分の仕事や趣味も大事だけど、家事も手を抜かずにしっかりやりたい「アクティブママ」や、定年退職し「ペットを飼い始めたシニア夫婦」を設定するとします。

まず重要なのは、デジタルを活用したスモールスタートでは、新たなターゲット候補を最初から決め過ぎないことです。本当にこのターゲットが正しかったのか、実際にデジタル上でトライアルして、仮説検証をします。そしてターゲットとブランドとの相性を見て、相性の良かったターゲットへの施策を継続的に増やしていきます。

もう一つ注意したい点は、ターゲットのプロファイルに合わせて、最適な商品の特徴を伝えるだけでは広告効果が弱いということです。単なる商品特徴の訴求は競合他社でも可能で、差別化しにくくなります。

第2回でもお話ししましたが、ターゲットのプロファイル把握だけではなく、「ターゲットとそのブランドとの関係をどうつくっていくか」が大切です。ターゲットインサイトとそのブランドとの独自の関係を考えたアプローチが、競合他社との強力な差別化になります。

目指すべきは、競合他社がまねできない、ターゲットとブランドの関係構築も加味したクリエーティブ開発です。

例えば「ペットを飼っているシニア層」というターゲットのインサイトは「ペットのことも、家族の一員だと思っている」というものだと仮定します。そこに対しては、単に「ペットの毛がキレイに取れる自動お掃除ロボット」として訴求するのではなく「ペットも含めた家族の時間を大切に考えている自動お掃除ロボットのブランド」であることを伝えます。まずはターゲットに「そう考えているブランドの商品だったら検討してもいい」と思ってもらうことが重要です。

このようなインサイトをベースにまずブランドそのものを好きになってもらうアプローチは、マス広告を中心に担当していたプランナーやクリエーターが得意とする領域なので、彼らの知見をできるだけデジタルの世界でも活用しましょう。

ターゲットの属性データや、意識・価値観データをまとめたプロファイリングは、メディアプランニングには役立ちます。しかし、コミュニケーション戦略を検討する際にはそれだけでは足りません。ターゲットインサイトの検討やそのインサイトに刺さるブランド独自のメッセージ開発などの検討が必要です。

インサイトとブランドの関係
【インサイトとブランドの関係】

Ⅲ 潜在ターゲットのボリュームを検証する

ターゲットのインサイトを把握し、ブランドとの関係性やメッセージを検討したら、いよいよデジタル動画広告やディスプレー広告(バナー広告)を活用したテスト配信を実施して、新たな潜在ターゲットのボリュームが十分にあるかどうかを検証します。

これまでのターゲットである「DINKs」に加え、「アクティブママ」や「ペットを飼っているシニア夫婦」向けの広告を配信し、クリック率やコンバージョン率を測定するのです。

このとき注意したいのが、デジタル広告の「自動最適化」機能です。

最近のデジタル広告の運用は、クリック率が高く反応がいいセグメントへの配信を増やしたり、反応のいいクリエーティブ表現を多く配信するなど、自動最適化を図るメニューが多く提供されています。

すると、上記の例でいうとすでに顕在化したターゲットであるDINKsを含むセグメントや、そのターゲットに効くクリエーティブ表現の評価ばかりが高くなってしまうのです。

そこで、今回のように新たな潜在ターゲットのボリュームを探索するテスト配信の場合は、「各ターゲットに向けたクリエーティブ表現案を、手動で均等に配信するプラン」を、デジタル広告運用チームの協力を得ながら進めていく必要があります。どれか一つに配信ボリュームが偏らないように調整しましょう。

また、ターゲットのプロファイルはデジタル広告のセグメント配信を考える際には参考として役に立ちますが、実際に配信できるセグメントは、こちらが想定しているターゲットセグメントにぴったり当てはまらないこともあります。

つまり、本当は「アクティブママ」「ペットを飼っているシニア夫婦」に配信したくても、実際には「20~30代女性、ビジネスパーソン」、「60代以上、ペットコンテンツに興味あり(飼っているとは限らない)」などのセグメント配信になることもあるのです。

そこで、テスト配信後は、DMPタグを活用したり、DMPのID対象者にアンケート調査を実施するなどして、広告(動画広告、ディスプレー広告など)をクリックした人たちが「本当にシニア世代でペットを飼っている人」だったのか、より精緻に効果検証をしましょう。

以上のトライアルを経て「アクティブママ」や「ペットを飼っているシニア夫婦」が、ターゲット拡張の候補として、十分かどうかを検証します。

その結果として、DINKsだけでなく、さまざまな家族の時間を大切にするブランドとして育てていけることに確信が持てたら、リアルイベントやアウトドア広告、ペット業界とのコラボレーション、コンテンツ開発、PRなどを展開し、最終的にテレビCMなどのマス広告への展開を考えていきます。

テストと検証を繰り返し、新たなターゲットとそのインサイトを発見するとともに、ブランド価値やメッセージを丁寧に開発し、ブランドを成長させていくのです。

ブランドの成長イメージ
【ブランドの成長イメージ】

CMO等には、データを見ながらターゲットを拡大し、ブランドとのセッションでブランドを継続的に大きく育てていくことが期待されています。