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成功の決め手はCMOの統合的マネジメント―CampaignとAlways Onのセッション

デジタルと人間のセッション:CMOのためのデジタルマーケティング №2

  • 谷澤 正文

2018/09/26

成功の決め手はCMOの統合的マネジメント―CampaignとAlways Onのセッション

<目次>
▼Ⅰ 何を統合するのか?CMOがマネジメントする四つの領域
▼Ⅱ CampaignとAlways Onの相乗効果で訴求力を高める
 

Ⅰ 何を統合するのか?CMOがマネジメントする四つの領域

第1回で、デジタルマーケティングにおけるCMO(最高マーケティング責任者)、マーケティング担当部長、ブランド担当者(以下、「CMO等」と表記)の役割は、「全体最適化」と「イノベーションの環境づくり」であり、それを推進していく上で検討すべき視点は、以下の四つであることを紹介しました。

・People…データの充実で、ますます理解が深まる一般生活者、顧客、ブランドファンなど

・Brand…デジタル導入で、常に品質向上し続ける商品/サービス

・Integration…デジタルやリアルを融合したシームレスな顧客接点・体験

・KPI…デジタル化で計測できるものが増えてきた重要業績評価指標

CMO等は、これら四つの視点で「全体最適化」と「イノベーションの環境づくり」を推進するために、マーケティングの関連部署を統合的にマネジメントする必要があります。

現在CMO等が、統合的にマネジメントする領域はとても広範囲ですが、①統合メディアプランニング、②統合キャンペーン、③統合マーケティング、④統合ビジネスの四つに分類することができます。

四つの統合マネジメント領域
【四つの統合マネジメント領域】CMO等は四つの領域で統合的にマネジメントを実施し、全体最適化とイノベーション推進を行う。

①統合メディアプランニング

一つ目は、マス広告×デジタル広告のメディアの最適化をする「統合メディアプランニング」です。デジタル広告の役割が大きくなっている今、マス広告とデジタル広告の連携や最適化が課題になっています。

ここでは、メディアの全体予算を全体最適化視点で配分します。優先目標が「ブランド認知拡大」なのか、短期的な「売り上げ獲得」なのか、あるいはその中間の「商品/サービスへの興味関心を高めること」なのかなどで、マス広告とデジタル広告の予算配分比率が変わります。

統合メディアプランニング

ブランド認知拡大優先であれば、テレビCMがまだ効率がよく、短期的なコンバージョン獲得を重視するならデジタル広告が効果的です。

マーケティングのSTP(セグメント、ターゲティング、ポジショニング)の状況、例えば、狙うターゲットセグメントの認知レベル(ST)、現状の商品/サービスや、ブランド力の状況、競合との競争環境など(P)によって、マス広告か、デジタル広告かの優先度は変わります。そのため、何を優先するかという判断をし、メディア活用の目的・目標を決定することがCMO等の担う仕事といえるでしょう。

②統合キャンペーン(Campaign)

二つ目は「統合キャンペーン」で、一定期間のキャンペーンを統合的に企画・実行する領域です。ブランディングやクリエーティブなど、メディアに載せる中身を考え、実施します。

マスターゲット向けのテレビCMの訴求内容を検討し、テレビCM認知後、セグメントターゲットごとに、デジタル施策でどのようにアプローチして何を訴求するのかを検討。マス広告とデジタル広告を活用して全体最適化視点で、キャンペーンの成功を目指します。

この統合キャンペーンでは、新規顧客獲得、そのターゲットインサイト、ブランドの競合差別化、商品/サービスやブランドのメッセージ開発など、テレビCMやデジタル広告というメディアに載せる中身の設計が大事な要素です。

統合キャンペーン

③統合マーケティング(Always On)

三つ目は、「統合マーケティング」です。これはキャンペーンと異なり、一般生活者から潜在顧客、既存顧客、継続顧客など、新規獲得からCRMまでを含む、マーケティング領域全体の統合を指します。MA(マーケティングオートメーション)ツール、DMP(データマネジメントプラットフォーム)の導入など、マーケティングシステムの投資も絡んでくる領域です。

統合マーケティングは、キャンペーン時の一時的なタイミングだけでなく、顧客と常時継続的にリレーションを取ることが重視されるため、「Always On」といわれています。既存顧客維持、顧客データ活用、システム構築、自社サイト・SNSなどにアップする継続的なコンテンツ開発などが重要な要素です。

統合マーケティング

④統合ビジネス

四つ目が「統合ビジネス」領域です。マーケティングの新サービス開発や、デジタルオーバーラッピング(既存のサービス体験をデジタルで根本から変えること)の検討、新ビジネス開発などが該当します。例えば、AIを活用した新サービスの開発などです。最近では大手企業でもベンチャー企業と協業し、オープンイノベーションでデジタルを活用したビジネス開発を検討しています。

統合ビジネス

CMO等の二つの役割である「全体最適化」と「イノベーションの環境づくり」でいうと、「統合メディアプランニング」「統合キャンペーン」「統合マーケティング」領域で、全体最適化視点で効果の最大化や効率化を図りつつ、「統合マーケティング」「統合ビジネス」領域でデジタルシステムの導入など、イノベーション投資を検討します。

Ⅱ CampaignとAlways On の相乗効果で訴求力を高める

統合的マネジメントの課題解決は、マネジメント範囲が広いので、全体をうまくまとめるというよりも、個別課題の優先順位を明確にし、課題を随時解決していくプロセスとなります。

CMO等が今、特に注力しなければならないのが、「統合キャンペーン」(Campaign)と「統合マーケティング」(Always On)の相乗効果を引き出し、マーケティングの最適化を図ることです。

「統合マーケティング」では、MA、CRM、DMPなどさまざまなマーケティングシステムを導入し、ONE to ONEのマーケティングを目指します。そのため、ターゲットの細分化、メッセージの細分化により、そのブランド特有の商品/サービスの差別化ポイントが伝わらない、という個別最適のジレンマが起きる可能性があります。

個別最適により成功確率を上げていくことができるので、「大きくは失敗しないマーケティング」が可能ですが、逆に、「大成功するマーケティング」が難しい領域でもあります。

また、自社サイト来訪者に、何度も同じデジタル広告を繰り返すリターゲティングや、MAによるメールなど、企業サイド都合の配慮に欠けるアプローチをしないことが重要です。

例えば、ハイスペックの一眼レフカメラを検索している人へのデジタル広告は、そのスペックのみを何度も訴求するのではなく、統合キャンペーンで企画を考えるように、そのターゲットのインサイトを刺激する内容にするのです。

使用目的は「子どもの運動会で、思い出をきれいに残したい」ですが、購入者である父親には隠れたインサイトがあります。例えばそれは、「どの父親よりも、高級感ある一眼レフカメラで撮っている自分を周囲に見せたい」という心理ではないでしょうか。

そう仮定すると「パパ、きれいに撮ってくれてありがとう!」という子どもメッセージ訴求や、その一眼レフを使ってかっこよく撮るお父さんタレントを起用し、自己投影できる訴求をデジタルのリターゲティング広告やMAのメールなどで実施することが効果的です。

カメライメージ

 

マーケティングシステムの活用やデジタル広告でも、まずはブランドの存在意義「Why」を考える必要があります。ターゲットセグメントごとのプロファイリングだけではなく、データだけでは決して分からない隠れた気持ちを発見し、そのインサイトを刺激すること。ブランドや商品/サービスへの興味・関心を喚起し、好きになってもらうことが大切です。

一方で、「統合キャンペーン」にも課題があります。膨大な予算で実施するテレビCM中心のキャンペーンでは、効率よくブランド、商品/サービスの認知拡大をすることができますが、デジタル広告と違い、キャンペーン期間中に修正が難しいため、失敗した時のリスクが高くなります。綿密な戦略と、十分にアイデアを検討した上で実施しなければなりません。

CMO等の役割は、Always On志向で、システムに頼りがちな「統合マーケティング」と、Campaign志向で、インサイト、クリエーティブに頼りがちな「統合キャンペーン」をうまく有機的に活用することです。

「統合マーケティング」に、人の心を動かす「統合キャンペーン」のインサイトアプローチを検討する。または、テレビCM中心の「統合キャンペーン」に、さまざまなターゲットに精緻にアプローチできる「統合マーケティング」のシステムの利用を検討してみるなど、「システムアプローチ×インサイトアプローチ」の融合で、今後はブランドや商品/サービスの競争優位が決まってきます。

CMO等には今、CampaignとAlways Onのセッションを実現することへの期待が高まっています。