デジタル活用で成果を出すにはNo.6
リスティング広告で、知名度のない商品をコンバージョンさせるには?
2015/11/17
※株式会社ネクステッジ電通は、2016年7月1日付で「株式会社電通デジタル」となりました。
広告文に具体的な言葉を盛り込むことで、ユーザーを引きつける
――前回、クリックされるキーワードについての考え方を伺いました。それでは、検索後に表示される広告文についてお尋ねします。広告文はどのように制作されるのですか。
豊泉:例えば、Googleでは文字数が15~38文字といった制限があり、その制限を守りながら制作していきます。電通にはコピーライターがたくさんいるので、必要があれば彼らの協力が得られるのが強みですね。
渡辺:確かに、コピーライターの作る広告文は、クリック率が高いケースも多いです。新商品など、一つの商品に注力するときは効果的でしょう。一方で、業種によっては、何百万、何千万とある商品があるわけで、その一つ一つにコピーライターが関わるのは不可能です。
そのような場合は、とにかくスピード感を重視します。例えば商品点数が多い通販会社の場合、多少日本語の使い方が厳密ではなくても、キーワードの自動挿入機能などを活用して広告文を作成するほうが、結果として全体のCTRが高い場合もあります。
――検索結果画面には、リスティング広告がおよそ10枠~15枠、その他にも自然検索結果にも関連する情報が表示されます。その中で、広告文を読ませるテクニックのようなものはあるのでしょうか。
豊泉:「検索した目的に合っている、合っていそう」と思わせるためのテクニックはあります。重要なのは、商品やサービスについて、ユーザーが興味を抱く具体的なメリット、たとえば価格、商品の点数、実績などを訴求することです。
多くのクライアントが競合との差別化のために、「最安値」「最大級」など商品の価格や品ぞろえをうたっているなかで、より具体的に「3000円~、400商品以上の品ぞろえ」と表示すれば、具体的な商品を探しているユーザーをより引き付けることができます。
渡辺:広告文はクリック率によって優劣が決まると誤認されがちですが、獲得率が重要視されることもあります。リスティング広告はクリックされたタイミングで課金が発生するので、広い意味を持つ検索キーワードの場合、プロモーションしている商品と相性のいいユーザーだけに絞ってクリックさせないと効率が悪くなる。その場合、より具体的で独自性の高い内容に絞って書かれている広告文が重要になります。
SEOによる自然検索とリスティング広告を組み合わせてシェアを取る
――リスティング広告には「広告」と表記されていますが、その時点でそもそもクリックしないというユーザーもいるのでは。
渡辺:確かに、自然検索しか見ないというユーザーもいますが、上から順に見ていくユーザーも多く存在します。
豊泉:何かをすぐ買いたいときは、あえて広告枠をクリックする人もいます。とはいえ、ご指摘の通り、自然検索で上位の方がクリック率も高いというデータもあります。そこで、クライアントにリスティング広告を提案するときには、SEO対策も同時に行い、広告プラス自然検索でシェアを取りにいっています。必要があれば、ランディングページの制作を提案する場合もあります。
渡辺:ランディングページでは、いかに検索ユーザーの求めるものにマッチした情報を提示できるかが重要になります。そこで、ターゲットの年齢や性別ごとに、表示するコピー、商品の情報、ボタンの色や大きさ、位置などを最適化していきます。ランディングページを制作する場合、リスティング広告で使用するテキストコピーよりも制作に時間や費用などがかかるため、より分析力、仮説構築力が必要です。ネクステッジ電通では、ランディングページ最適化の専門コンサルタントが分析やテスト設計などをサポートすることもありますね。
――では、実際にリスティング広告を含めたSEMでコンバージョンを得られた成功例を教えてください。
渡辺:先ほど、通販サイトではパソコンとスマートフォンでコンバージョンレートが微妙に異なるというお話をしました。例えば、8時台や17時台にスマートフォンからアクセスするユーザーは、移動時間中なのか、コンバージョンレートが低い。また、12時~14時くらいにパソコンでアクセスするユーザーは休憩時間中なのか、コンバージョンレートが高い。
リスティング広告は入札制です。より売り上げにつながりやすい時間帯に、高いクリック単価で入札し、より掲載結果の上位に広告を多く掲載することで、売り上げを最大化できます。本来、1時間単位の変化に合わせて、デバイス別に入札を行っていくのが最適なのですが、これまでは、そのシステムが存在しませんでした。そこで、ネクステッジ電通では、毎時間デバイス別の入札価格を調整するツールをオリジナルで開発。深夜も休日も、毎時間入札単価の調整をしたところ、全体のコンバージョンが3割増加し、モバイルからのコンバージョンは施策前の4倍になりました。
さまざまな条件で入札価格やクリエーティブを最適化していくと、ルールは無限に複雑化して、手動オペレーションでは制限が出てきてしまいます。だからこそ、テクノロジーを活用することでその制限を乗り越え、広告効果を抜本的に改善することができる。それが証明されたモデルケースになりました。
ランディングページを工夫して、知名度のない商品をコンバージョンさせる
豊泉:まだ知名度のない商品ジャンルやブランドの場合、キーワードの選び方を工夫する必要があるのですが、この課題を解決した成功例をお話しします。
某パソコンメーカーで新商品のプロモーションを行ったのですが、商品ジャンル自体がまだ確立されていなかった。実際、商品ジャンルを代表するキーワードは、先行するメーカーが出している競合商品の名前でした。分かりやすくいえば、スマートフォンが出始めのころの、スマホ=iPhoneというような状況です。
このような場合、いくら自社の商品名や商品ジャンルから想像されるキーワードを登録しても、検索が見込めません。一方、競合商品名ならば検索されやすいのですが、そのキーワードでリスティニング広告を掲載したとしても、リンク先であるクライアントのサイトにはユーザーが求めている情報はありません。結局、クライアントの商品を購入してもらうのは難しいと思われました。
そこで、競合商品と自社商品を比較するような第三者サイトを立ち上げて、競合商品名のキーワードからその比較サイトへ誘導することで、自社商品についても理解してもらう工夫をしてみました。いわゆる、ランディングページの制作と思われるかもしれませんが、それよりも一歩踏み込んだ施策といえます。
渡辺:比較サイトの制作で得られる大きなインパクトは、ユーザーの行動を捉えられることです。もしかしたら、直接のコンバージョンにはつながりづらく、リスティング広告として得られる成果自体は小さいかもしれない。しかし、そこから得られたデータをマーケティングデータとして使用すると、販売戦略全体を見直すきっかけになる可能性もあります。
現在のリスティング広告ではクリックや獲得だけでなく様々なデータが取得できるため、我々も単に獲得や効率を最適化するだけでなく、事業全体を理解し、新たな一手を打つために活用する能力が求められていると感じています。
テクノロジー技術を活用して、膨大なデータをキーワード化
――これまでの事例は、BtoCがメーンでした。リスティング広告はBtoBでも効果が見込めますか。
豊泉:もちろんです。これは、リスティング広告で事業の成長に貢献できた事例。ネジを扱っている会社の話です。ただ、対応としては王道で、とにかく商品の型番や溝の幅などをキーワードとして追加していきました。検索する側もプロなので、ピンポイントで必要なネジを探しており、型番や溝の幅など細かい情報で検索をするんですよ。
渡辺:登録するだけといえば簡単に聞こえるかもしれません。問題は、クライアントが持っていた商品データの数字が、5京だったこと。兆のひとつ上の位です。そこで、データ処理の専門部隊が実力を発揮してくれました。 具体的には、商品名や諸元などのデータを集計して分析、検索キーワードとして使えるデータに作り替え、結局丸1年かかりました。場合によっては「これはちょっと無理だね」となってしまう案件でしたが、ネクステッジ電通の専門部隊がデータ処理したことで、リスティング広告を有効に活用することができるようになり、その結果、クライアント事業の成長エンジンとなりました。
――最後に、リスティング広告を上手に活用するノウハウを教えてください。
渡辺:今は、リスティング広告しかやらないというクライアントは少なくなっています。もちろん、「リスティング広告のCPAを改善したい」という要望はありますが、リスティング広告だけで改善するケースはまれです。基本的には、広告予算の中で、どの程度をリスティニング広告に割くか、また、他の広告や複数のデバイスとどう連携させるか、取得したデータをいかにマーケティングに生かすか、といった複合的な考え方で取り組むといいと思います。
豊泉:理想は検索キーワードを創造してしまうこと。例えば、クライアントの商品が「オーガニック化粧品」だった場合、マス広告やネットの口コミなどを利用して「無添加化粧品」を別の何かで言い換えてしまう。そうすれば、そのキーワードには競争相手はいないので、ほぼ独占状態。そこまでやれればすごいですね。
お問い合わせ先:ネクステッジ電通 info@nxtg.dentsu.co.jp