「第一歩」を踏み出すことこそがイノベーション
2016/01/07
ポーランドの広告市場は、イギリス、ドイツ、フランスといった大きな市場の陰に隠れている感がありますが、しかし広告業界の気風は実に先進的なものがあります。もともとポーランド人はイノベーションを積極的に受け入れ、日常生活にどんどん取り入れる。そんな気質が、広告業界の風土にも影響を与えているのかもしれません。
例えば、スマートフォンなどによる非接触型決済の普及で東ヨーロッパをリードするポーランドでは、近距離無線通信やIoTの開発集積地「ビーコン・バレー」が発展しています。それは、ポーランドが、電通イージスネットワーク(DAN)のこの地域におけるテクノロジーのハブに選ばれた大きな理由になっています。
脳波を利用する画期的なデバイスとして電通の開発チームが研究・商品化してきた「neurowear(ニューロウェア)」がポーランドで注目されるようになったのも、我々の努力があったからこそと自負しています。我々が初めて手掛けたEEG(electroencephalogram:脳波)プロジェクトのクライアントは国立ポーランドラジオでしたが、売り込む際には、様々な放送チャンネルからどんな気分の時も必ず気に入る番組が見つかるという点をアピールし、そのプレゼンテーションが功を奏しました。EEGプロジェクトのスタートは大成功を収め、以来、我々のマルチメディア部門は次々と新たなニューロ(神経)制御タイプの製品に取り組むようになりました。
例えば、BrainBot(プレインボット:ヘッドセットで脳波により制御するブロック玩具製のロボット車)やMindRace(マインドレース:ヘッドセットで脳波によって駆動するスロットカー・レースコース)は、我々が参加する会議や展示会などでも重要な役割を果たしました。ポーランドDANの目玉製品として注目され、ひいては、ポーランドDANがこの地域における最も革新的なメディアグループであることを業界関係者に強く印象づけたのです。
お楽しみはまだこれからです。現在、開発してきた製品をさらに進化させるだけでなく、顔認証システム「Face_in」を導入した「Petrol Station of the Future」(未来のガソリンスタンド)という新たな構想プロジェクトにも挑戦しています。また、私自身、初めて知った時からぜひ扱いたいと思っていた「neurocam(ニューロカム)」(脳波などの生体情報でそのときの気持ちを記録できるカメラ)の実現可能な商業用途の探査も積極的に行っています。
このようなポーランドDANの先進的な取り組みは、全ては、より良い明日のための第一歩がイノベーションであるという信念に基づいています。日本発の技術が遠いポーランドで花開く。2つの国はイノベーションという絆で結ばれているのです。